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ヤクルトレディの意外な活動
先日、久しぶりに妹と会って、ゆっくりと話をする時間がありました。
彼女は、千葉でヤクルトレディとして10年以上活動しています。
毎日スクーターに乗り、高齢者のお宅、企業、学校、商店街など、地域のあらゆる場所へヤクルトを届けています。

驚くことに、彼女は地域トップクラスの販売実績を誇り、ヤクルトの世界大会でも表彰された実績があります。
でも、私が本当に誇らしく感じたのは、彼女の“売上”ではなく、日々の“ふれあい”の姿勢でした。
「愛の一声」が命をつなぐこともある
妹は、ヤクルトを届ける際、必ず一言、声をかけるようにしています。
「今日も元気そうで良かった」
「お顔を見られて安心しました」
「何かあったらすぐに連絡してね」
こうした何気ない言葉が、訪問先の方にとって、どれほど温かいものか。
そして、妹にとっても“ただの商品配達”ではなく、心と心を結ぶ大切な時間になっているのです。
話を聞いていて胸が詰まることもありました。
倒れているお客様を発見して救急車を呼んだこと。
亡くなった方のお宅に、最初に気づいたのが彼女だったことも一度ではないそうです。
「最初は驚くことも多かったけど、今は“仕事として”向き合ってる。
やっぱり、ひと声かけることが命を守ることにつながると想うの。」
その言葉を聞いて、私は妹の仕事がただの“配達”ではなく、“見守り”であり“命を守る仕事”であることに気づかされました。
配達がない日でも、誰かを思い出す
妹のすごさは、ヤクルトの配達だけにとどまりません。
配達のない日でも、気になるお客様や近隣の方の顔がふと浮かぶと、大根やネギなどの野菜を届けに行くこともあるそうです。
「一人暮らしで、スーパーに行くのも大変なお年寄りが多くてね。
自分にできることをやるだけだよ。」
と笑って話していましたが、彼女はただ“届けている”のではなく、“気にかけている”のです。
農家さんとも繋がっていて、「形が悪くて市場に出せないけれど、食べられる野菜」が捨てられている現実を知り、
「もったいないよね。必要としてる人がたくさんいるのに」と、譲ってもらった野菜を自分の手で切り分けて、袋に詰めて届けています。
時には、単車に大根を30本積んで切って配る日もあるとか。
その話を聞いたとき、私は思わず笑ってしまいましたが、その行動力に心から感動しました。
これはもう“仕事”ではなく“地域を守る活動”
「それってボランティアみたいだな」と私が言うと、
「そうだね。もう本気のボランティアだよ。私の趣味かな」と、妹は笑いました。
けれど、彼女の行動は、明らかに「地域を守る」という使命感に満ちています。
訪問する家々のことをよく知り、顔を見て、体調や気分の変化を感じ取っている。
その気配りや“察する力”は、AIやシステムには絶対に真似できない“人の力”だと感じました。
「今日、大根持ってきたよ」「この人参、甘くて美味しいからね」
そんなふうに、野菜と一緒に“気持ち”を届けている妹。
それはもう、ヤクルトレディという肩書を超えた、地域の“ふれあいの使者”のような存在です。
かつての商店街のように、ふれあいがあった暮らし
私が子どもの頃、商店街にはふれあいが溢れていました。
八百屋さんでは「今日は安くしとくよ」と声をかけてもらい、
お肉屋さんでは「いつものコロッケ、揚がってるよ」と笑い合う。
そこには、人と人とのあたたかい交流がありました。
しかし今、私たちの暮らしはどんどん便利になっています。無人レジやネット注文、自動化が進み、誰とも言葉を交わさずに一日が終わってしまう——そんな生活も珍しくなくなりました。
あるとき、私の友人がこう言いました。「最近、一日でどれだけ人と話しているかを意識してみたんだよ。」その日の彼の“会話”はたった一言。
「コンビニで『ペイペイ使えますか?』って言っただけだったんだよね。」
私はその言葉に、ハッとさせられました。便利さの裏側で、人との“ふれあい”は確実に失われつつある。それは、静かに、でも確実に、私たちの心を乾かしているようにも思えるのです。
だからこそ、妹のような活動は、これからの時代にこそ必要なのだと強く感じました。“人が人を想う”ことでしか生まれない、やさしい循環がある。それが、地域を支え、誰かの心を救っているのだと思います。
ふれあいを次の世代へつなぐ、事業承継のあり方
現在、私は息子とともに「還暦社長」という動画シリーズを通じて、事業承継に取り組んでいます。
親子で仕事を語り合い、価値観を交わし、ふれあう時間が増えました。
こうして一緒に歩む中で感じるのは、「ふれあい」があるからこそ、親子の関係も、社員との関係も、より深くなるということです。
事業承継は、会社の“業務”を引き継ぐだけではありません。
私が人生を歩んできた体験や想い、人との関わり方や生き方そのものを継承していく行為なのだと実感しています。
妹のように、人を想い、手を差し伸べる。
そんなふれあいの精神を、私も会社や家族、地域に伝えていきたい。
それが、これからの時代に本当に必要とされる“経営”なのではないかと考えています。
最後に伝えたいこと
ふれあいは、人を豊かにし、社会をやさしくします。
助け合う気持ちがあるからこそ、私たちは一人じゃないと感じられるのです。
「ふれあいこそが、人をつなぎ、人生を豊かにする力である。」
妹の行動から教えてもらった“ふれあいの価値”を、私自身の人生や経営にも活かしていきたいと思っています。そしてこの想いを、次の世代へしっかりと受け渡していきたい。

投稿者プロフィール

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1962年 大阪生まれ。1位づくり戦略コンサルタント。
立志立命式代表世話人。
中小企業に従事した自らの体験を踏まえ、コンサルタントとしてこれまで1300社以上の指導実績を持つ。
また豊富な現場経験から生み出された1位づくり戦略をはじめ多彩なテーマで年間100回以上のセミナーを行い、実践的かつ即効性がある好評を博している。
自ら主催する経営塾「あきない道場」には、全国からたくさんの経営者が参加。その理論を実践し短期間に多くの成功事例を生み出している。
著書には、『小さな会社★採用のルール』をはじめ、『「あなたのところから買いたい」とお客に言われる小さな会社』、『小さな会社☆No.1のルール』、『小さな会社☆集客のルール』、『スゴい仕掛け』など、いずれもAmazonカテゴリーで1位を獲得している。