今回は、「継続購入のお客さまを分析する具体的な方法とは。」というテーマで考えていきます。
目次
ポイントカードの目的は何なのか?
経営で最もむずかしい仕事、それはお客さまを見つけ出し、実際に店舗に来てもらう仕事です。
なぜむずかしいのかというと、商品をどこのお店から買うかどうかの決定権は100%お客さまにあり、売る側の決定権は0%だからです。
新しいお客さまをつくるのが上手くできてないから経営が苦しくなるのです。
一方で今、目の前にいるお客さまが継続的に商品を買ってくれて、さらにお知り合いを紹介してくださるようになれば、新しいお客さまをつくる費用がほとんどかかりませんから、経営はぐーんと楽になっていくのです。
先日、こんな体験をしました。
お客さまのところへ向かう途中、お土産にと思い、近所の洋菓子店でクッキーの詰め合せを買いました。その洋菓子店は地域でも最も人通りの多い場所にあり、関西でも数店舗のお店を出しています。
クッキーの詰め合せを選び、レジで5千円を支払いました。
若い店員さんに「当店のポイントカードはお持ちですか?」と尋ねられました。
「いいえ、ありません」と答えましたが、私の会社のスタッフがこの洋菓子店で買い物しているかもしれないと思い「会社に戻ればポイントカードがあるかもしれません」というと「恐れ入りますがカードの共用はできません。また複数枚のカードを合わせて、ポイントを合算することもできません。ご了承ください」と言われました。
私は「いいですよ。ポイントカードは結構です」と言って紙袋に入ったクッキーを手にして店を出ました。
ポイントカードの目的は何なのか?考える機会をいただきました。
フラワー・ルーシュさんの事例
大阪・堺市堺区の花屋フラワー・ルーシュさんへ取材へ伺った時のことです。
私は「お客さまの中で定期的に継続してお花を買ってくださるお客さまはどんな方ですか?」と店長の安達さん聞きました。
すると「開店祝いに胡蝶蘭、誕生祝にバラの花、母の日などのイベントの時にカーネーションなど、いろんなお客さまに来店していただいてます。あるとき、ふとおもしろいことに気づいたのです。継続購入いただいているお客さまに、猫を飼ってる方がいらっしゃいました」と安達さんが言いました。
「猫を飼ってる方が、定期的にお花を買いに来るんですか?」と私が聞くと「はい。きっかけはネコ草です」と安達さんが言いました。
「以前、近所の方から『ネコ草ないの?』と何度か聞かれたことがあったので、ネコ草の販売を始めたところ、買いにきてくださるようになりました」と教えてくれました。
私も猫を飼っていたことがあります。
猫が家の観葉植物などの葉を食べたりするので困っていたとき、近所のホームセンターでネコ草が販売されていることを知りました。
マグカップのような容器に芝生を長くしたような葉っぱが生えているものでした。
さっそく買って、猫に与えると、喜んで食べていました。
数日で1カップがなくなってしまう勢いでした。
安達さんは、「このお店の周辺にはペットを飼ってる年配の方も多くペットの話題が広がり、長時間立ち話をしていく方もいますよ」と言います。
お客さまとの会話の中で、家族の誕生日や知り合いの方にお花を贈りたいなどといった話になり、予約や注文をいただく機会が少なくありませんでした。
そこで安達さんは、ネコ草を買ってくださったお客さま限定で、ポイントカードを発行することを思いつきました。
「10個ポイントがたまれば、ネコ草1カップをプレゼントします。有効期限はありませんのでいつでも持って来てくださいね」とレジで個別に案内しはじめ、お客さまに手渡しているそうです。
ネコ草のポイントカードは、継続購入していただいてる特別なお客さまに絞ったコミュニケーションのツールです。
通常であればお花を買ってくれた人にポイントカードを発行するのですが、このお店にはありません。
最初にカップに入ったネコ草を買えば、次回から空いたカップを持っていけばネコ草を補充してくれて、ポイントカードに1つスタンプがもらえます。
定期的にお客さまがお店に来てくれるので、人間関係もより深くなっていきます。
「猫ちゃん元気ですか?」と気に掛けてもらえれば、それはそれで嬉しいものです。
ペットも家族と同じ、大事な存在です。
お客さまの立場からすると「同じネコ草を買うのであれば、遠くのホームセンターやペットショップよりも、近所で気心しれた安達さんのところで買いたい」といった気持ちになるのもそうした小さな取り組みがあるからなのです。
・特定のお客さまに絞ってポイントカードを発行する。
・お客さまとコミュニケーションが増えて
・人間関係が築きやすくなる。
・定期的に継続して来店してもらえる
とても分かりやすい仕組みです。
紹介者が増えてる理由を知る
このお店ではもうひとつ、発見がありました。
新しいお客さまが来店した時に「どうしてお店のことを知ったのですか?」と何気なく聞いたら、「ある美容室のスタイリストさんにおススメされて・・・」と教えてくれたと言います。
安達さんが美容室に行って、スタイリストさんにお礼を言うと、「お客さまから『珍しい花ですね。キレイ!どこの花屋さんで注文しているのですか?』と聞かれるので、そんな時は『市之町東交差点近くのお店ですよ!』と伝えています」と口コミして頂いていることを知りました。
フラワー・ルーシュさんでは、近隣の美容室や飲食店などの店舗から、「お店の雰囲気をよりハイセンスで優雅な感じにしたい」と相談を頂く機会が増えてると言います。
安達さんはフランスやドイツなど、海外で開催されているフラワーアレンジ教室で直接学び、独自の感性を培ってきたと言います。
お客さまに喜んでいただくため、継続して注文をいただくため、「常に感性を高めていかなければならない」と、今でも時間を見つけてはヨーロッパのフラワーアレンジメント教室で学ばれているそうです。
ヨーロッパの優雅な雰囲気と安達さん独自の感性から創られた装花やアレンジメントは店舗インテリアとして人気があり、お店に来るお客さまから「季節感あっていいですね」「癒されました」「お花をみてると心が豊かになります」と感謝される機会が増え「お客さまの満足度が高くなってリピートが増えました」と飲食店の方からも、大変喜んでいただけてます。
「お客さまに喜ばれ、継続的にご注文いただけることから、この地域のお店には心を込めて、きめ細やかな対応をするようにしています」と安達さんは話してくれました。
こうなると経費はほとんど使わないのに、新しいお客さまができるので利益性はぐんと良くなります。
継続購入や口コミの理由を知ることで、新たなお客さまをつくるきっかけになるかもしれません。
継続購入のお客さまを見つけ、なぜ購入してくださるのか?分析してみましょう。
継続購入のお客さまを見つけ、なぜ購入してくださっているのか?分析してみましょう。
継続的にお店に来店してくださる人はどんな人ですか?
また、どんな理由でしょうか?
お客さまの特徴と理由を考えてみましょう。
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投稿者プロフィール
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1962年 大阪生まれ。1位づくり戦略コンサルタント。
中小企業に従事した自らの体験を踏まえ、コンサルタントとしてこれまで1300社以上の指導実績を持つ。
また豊富な現場経験から生み出された1位づくり戦略をはじめ多彩なテーマで年間100回以上のセミナーを行い、実践的かつ即効性がある好評を博している。
自ら主催する経営塾「あきない道場」には、全国からたくさんの経営者が参加。その理論を実践し短期間に多くの成功事例を生み出している。
著書には、『小さな会社★採用のルール』をはじめ、『「あなたのところから買いたい」とお客に言われる小さな会社』、『小さな会社☆No.1のルール』、『小さな会社☆集客のルール』、『スゴい仕掛け』など、いずれもAmazonカテゴリーで1位を獲得している。
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