小さなお店繁盛店の法則

小さなお店繁盛店の法則

現場の声を集め活かす方法

今回は、チームの生産性を高める方法とお客さまの声を活かす方法とは。パン屋さんの事例と共にお伝えしていきます。

お客さまが選ぶ理由

国産小麦100%のパンづくりをしている1988年創業のパン屋さん、プロムナードは本店(姫路市辻井のヤマダストアー新辻井店内)、青山店(広畑区のヤマダストアー青山店内)、そして姫路駅前店(姫路前の山陽百貨店B1)3店舗を運営しています。

このパン屋さんは添加物や保存料を一切使用しない本物のパンづくりで人気を集めています。オーナーの前田さんの方針は明快「本物志向」です。

「例えば、カレーパンのルーは野菜などの食材をスタッフの手で調理して作られています。生クリームは保存料が入ったものを使わず、生乳だけで作られた生クリームを使っています」とこだわりを話してくれました。
こうした作り手の「想い」に共感する人たちがプロムナードのパンを選んでいるのです。

パン屋さんの取り組み

さて今回はプロムナード青山店の俣木チーフの取り組みをご紹介しましょう。
「以前の私は、オーナーが決めたルールでちゃんとパンを作りをすれば私の仕事はOKだとずっと思っていました。

自分が担当するお店の強みを考えることが必要だと思いませんでした。
また『お客さま、第一』だと分かってはいたけれど、具体的にどうすればいいのかよくわかりませんでした」と、これまでのご自身の仕事を振り返り話してくれました。

青山店の販売はパートさんを含む4名体制で運営しています。
午前の担当と分かれていて、一日を通してずっとみんなが一緒に働く場面はほとんどありません。ですからチームとして意識も少なく、スタッフの間で考えを共有することもなかったといいます。しかし盛店の法則を学び、意識が変わりました。パンを作り販売だけではダメだとはっきりわかりました。

まずはお客さまに不便をかけていることを解消することから始めました。あるとき、午前中にサンドイッチが売り切れて、がっかりして帰るお客さまが数人続きました。
俣木チーフはどうすればいいのか考えました。

「お客さま、サンドイッチは事前にご予約いただくことも可能ですよ」とか「スーパーで買い物する前にお声を掛けていただければお取り置きもしておきます」と予約や取り置きができることをお伝えしサンドイッチが売り切れても「次回、○○時に焼き立てパンができますよ」とひと声アナウンスしました。また、朝の買い物で来店してくれたお客さまには「フランスパンは昼から焼きあがりますよ」と
積極的にお声を掛けました。

するとお客さまの予約注文が増えていきました。
一方で、サンドイッチが売れ残る日もあったといいます。
「午前中に売り切れた」とか「売れ残った」という状況を午前の担当者と午後の担当者で共有できていませんでした。
また「お客さまから訊ねられたこと」などお客さまのお声は、直接関わった人が個別に対応していてお店の情報として蓄積できていませんでした。

そこで俣木チーフは「お客さまに不便をかけてることを改善しよう」と日報で情報共有する仕組みを考えました。日報は「振り返りま表」の大きな特徴はスタッフ全員のコメントを1枚のシートに書き込む仕組みになっていることです。全員で気づいたことを1行でもいいので書き込むことから始めました。「この振り返りま表」は下記のような項目になっています。

本日のイベント/記載日/天気/午前(ご予約)/午後(ご予約)/その他/申し送り・連絡など

日報の「振り返りま表」は店のイベントやお天気、気温で変わる販売状況をしっかり共有できる仕組みとして機能しています。
週末の売れ具合や売れ残りなどが記録されているので、誰もが翌日には状況を知ることができます。
スタッフ全員で情報共有し素早い対応ができるのが特徴です。

スタッフの江原さんは「以前、私はお客としてこのお店にパンをずっと買っていました。
今はプロムナードのスタッフとなり、サンドイッチを作っています。ここのパンは添加物の多いマーガリンは一切使用せず、バターを使い、生クリームはポイップを使わず生乳のみで作られた物を使っています。
本当に良い素材を使ってパン作りをしているお店です。
私もここで働くようになり主婦の視点で良いと感じたモノを作り提案しています。


自分たちが『こんなものがあったらいいなぁ』と思うものを自分たちで作っているので、
とてもやりがいがあります」
と教えてくれました。

スタッフ間で情報共有

「ちょっとこれを見てください!サンドイッチ製造チームからの意見で『サンド送りま表』ノートを作りました」と俣木さん。

暑くなるとたまごサンドの売れ行きが鈍くなることやスーパーのイベントで売れ行きが変わること、
レタスの色でも売れ行きが変化することや、近隣に競合スーパーができて客足が一時鈍ったこと・・・など、スタッフとしてはもちろん、作り手、主婦の立場からの出来事など詳細な情報が毎日「サンド送りま表」に記されています。

こうした俣木チーフの取り組みをスタッフは「たくさんの人や意見や考えを『送りま表』で知ることができ、発見があります」「意見を出し合う雰囲気ができました」「より多くの人の話を聞きたい」「お客様の求めているものをうまく取り入れていく仕組みをしりたい」と前向きに受け取っています。

小さなお店は全社員が営業マンです。
よりチームの生産者を高めるには「情報の共有」がポイント
です。
そこで1枚の日報に全員が情報を書き込む方法はとてもシンプルで良い方法だと思いました。

今回の取り組み事例から、お客さまのお声やクレーム、販売状況や取り組むべき課題、わからないことやしなければいけない作業などを知ることで対応を変えてみたり、お互いに助け合ったりできることがよくわかります。

最後にオーナーの前田さんは「よくスタッフががんばって取り組んでくれています。
お客さまのお声をみんなで共有してより良いお店づくりをしていきたいと思っています。

私たちの目指すところは手作りパンを通じて地域の人の笑顔を増やすことです!」と想いを語ってくました。

チームの生産性を高めるには「情報の共有」がポイントです。

あなたのお店での情報共有はどんな方法で行いますか?

お客さま視点で考え、実行して、ファンを増やす!
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投稿者プロフィール

佐藤元相
佐藤元相
1962年 大阪生まれ。1位づくり戦略コンサルタント。
中小企業に従事した自らの体験を踏まえ、コンサルタントとしてこれまで1300社以上の指導実績を持つ。
また豊富な現場経験から生み出された1位づくり戦略をはじめ多彩なテーマで年間100回以上のセミナーを行い、実践的かつ即効性がある好評を博している。
自ら主催する経営塾「あきない道場」には、全国からたくさんの経営者が参加。その理論を実践し短期間に多くの成功事例を生み出している。

著書には、『小さな会社★採用のルール』をはじめ、『「あなたのところから買いたい」とお客に言われる小さな会社』、『小さな会社☆No.1のルール』、『小さな会社☆集客のルール』、『スゴい仕掛け』など、いずれもAmazonカテゴリーで1位を獲得している。
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