2025年4月12日、春爛漫の晴天に恵まれ、大阪・大槻能楽堂にて「第30回 立志立命式」が厳かに執り行われました。
この式典は、日本学ユニバーシティ(JU)の主催により10年間続けられてきた、奈良時代の元服の儀を現代に甦らせた精神文化の祭典です。
日本にはかつて、「15歳で志を立て、大人になる」という元服の儀が存在していました。
この文化は終戦まで千数百年にわたり行われてきましたが、戦後の教育制度改革により、「志」という言葉が教科書から消え、その本質は社会から遠のいてしまいました。
現在では、ごく一部の中学校で立志式が行われているにすぎません。

立志立命式は、この失われた精神文化を再興し、志と命を社会に取り戻すことを目的として創られました。
そしてその本質は、単なる伝統復興ではなく、「良い世の中を創るために、志を立て、自らの人生を生き切る」という強い意志の表現であると感じます。
目次
人生に一度の“志の成人式”
立志立命式は、人生で一度きりの儀式です。
35歳から50歳までを「立志期」、50歳以降を「立命期」と定め、それぞれが自らの生き方を見つめ直し、志と命を言葉にして“天に奉納”します。
その場に立つ者は、過去を振り返り、未来に対して覚悟を語ります。
その語りは、能舞台の中央、能楽師の大倉昭之助さんの大鼓が響いた後の静寂の中で行われます。
茶道による一服で心を整え、大鼓で場を清めるという、日本文化が重ねられたその空間は、まさに精神の浄化と再生の場となっていました。
今回、記念すべき第30回の式典で「立志者」として登壇されたのは、和歌山で農業法人を営まれているライスJAPAN株式会社 代表取締役 寺前彰彦さんです。

日々自然と向き合いながら、米づくりを通じて地域を支えてこられた寺前さんは、「私は農業 農業は私」というテーマで「農業魂を後世に繋げ、日本の米文化を躍進させる農業者になる」という志を立て言霊を奉納しました。。
立志。それは志を立てること。人は生まれてからその生涯を閉じるまで、天命を全うするため、目標を立て、達成するために未来へ歩き続けています。
志は、人のため、夢は自分のため
志は、仕事を通して何を実現したいのか?を明らかにすることです。
人生をふり返り、先祖を含めて過去を振り返り、自分の中にある志を明確にする。
寺前さんの奉納は、穏やかながらも確かな力強さを帯びていました。
生き方そのものが“志”であるという真摯な姿勢が、会場全体に響き渡りました。
“捨てる”に命を ― 立命者・栗山泰充さんの世界観
今回の立命者は、東大阪でアパレルブランド「栗山縫製」を手掛けられている栗山泰充さんです。
栗山さんは「地球黒字化経営」という独自の理念のもと、廃材を資材として再活用するプロジェクトに取り組まれています。
栗山さんのテーマの志は「人類の精神進化を創り、美しい地球を取り戻し、次世代へ手渡す」です。
「ゴミを捨てる。“捨てる”という字は、“手”に“舎”と書きます。
モノの命の終わりを感じ、供養するように、ゴミを捨てるときに“ありがとう”と声をかけられる人が増えれば、きっと弥勒の世が実現できると確信しています。」

栗山さんにとって立命とは、天命に耳を澄まし、すべての命を慈しむ生き方そのものです。
孔子の言葉「五十にして天命を知る。六十にして耳順す」にも触れながら、60歳という節目に立命の舞台に立たれたことへの覚悟を語られました。
「廃材を資材と見立て、商品化する活動を世界に広めたいです。
人は仕事と私生活の中で万物の命を感じ、慈しんで生きるべきです。
地球黒字化経営をする者が、宇宙の来和を創造する。そのために、立命させていただきます。」
モノへの礼節と、命あるすべてへの敬意。
栗山さんの言葉は、単なる経営論ではなく、哲学であり、祈りであり、生き方そのものでした。
文化を未来へ ― 1000年続く場を創るという覚悟
私はこの立志立命式において、二代目代表世話人として運営に関わらせていただいています。
この式が単なる一過性のイベントではなく、1000年先にも続く新たな日本文化として根付いてほしいと心から願い、志をもってこの場を支えております。
私自身、経営者として“永続する会社”を目指しておりますが、それはただ利益を追い続けることではありません。
事業もまた、“志”と“命”の交差点にあると感じています。
誰のために存在し、何を残し、どう次世代に受け渡していくか。
その問いがなければ、真の継承も発展もあり得ません。

この立志立命式を通して、志ある大人が増えれば、必ず社会は変わります。
文化が変わり、人の生き方が変わり、やがてそれが地域や国の未来をつくる。
私たちは、その未来への種を蒔いているのだと信じております。
式の終わりと、志を祝う風景
式のあとは、直会(なおらい)として関係者が集い、お祝いの席が設けられました。
その会場からは、大阪城と満開の桜が一望でき、まるで志と命を祝福するような景色が広がっていました。

厳かな儀式の緊張感から一転、穏やかな語らいと笑顔があふれるひとときでした。
その空気の中で、参加者一人ひとりの胸に、志を立てて生きるとはどういうことかという問いが、静かに灯っていたように思います。
立志立命式は、かつての文化を継承しながらも、私たちが今生きている時代に必要な“精神の場”として、新たな息吹を与え続けています。
志を立て、命を語る――
そんな美しい文化を、これからも静かに、力強く、未来へとつなげてまいりたいと思っております。

第30回立志立命式 大槻能楽堂/直会 KKRホテル
最後に立志立命式のことがよく分かる動画を紹介します。
文責:佐藤 元相
NNA株式会社 代表/立志立命式 代表世話人
投稿者プロフィール

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1962年 大阪生まれ。1位づくり戦略コンサルタント。
立志立命式代表世話人。
中小企業に従事した自らの体験を踏まえ、コンサルタントとしてこれまで1300社以上の指導実績を持つ。
また豊富な現場経験から生み出された1位づくり戦略をはじめ多彩なテーマで年間100回以上のセミナーを行い、実践的かつ即効性がある好評を博している。
自ら主催する経営塾「あきない道場」には、全国からたくさんの経営者が参加。その理論を実践し短期間に多くの成功事例を生み出している。
著書には、『小さな会社★採用のルール』をはじめ、『「あなたのところから買いたい」とお客に言われる小さな会社』、『小さな会社☆No.1のルール』、『小さな会社☆集客のルール』、『スゴい仕掛け』など、いずれもAmazonカテゴリーで1位を獲得している。