今回のお話は、ブルーオーシャンの見つけ方についてです。
先日、電車に乗っていた時のことです。
私は座席に座り、本を読んでいました。
ある駅に到着し、一人の女子学生が電車を降りました。

その時でした。
カバンからオレンジ色の小さなポーチが落ちたのです。
私はすぐに気づき、
「落ちましたよ」
と声をかけました。
しかし反応がありません。
もう一度声をかけました。
それでも振り向きません。
よく見ると耳には白いイヤホンが見えました。
音楽を聴いていたのでしょう。
私の声は届いていませんでした。
私はその駅で降りる予定ではありませんでした。
あきらめかけたその時、近くにいた方が
「私が渡します」
と言ってホームへ降りてくださいました。
そして女子学生の肩を軽くたたき、無事にポーチを渡してくれました。
その様子を見ながら、
私は商売も同じかもしれないと思いました。
お客さまの困りごとが聞こえていない。
そんなことを現場で対話して感じることがあります。
しかし本当に聞こえていないのでしょうか。
じつは、そうではありません。
多くの中小企業の社長はとにかく忙しい。
見積もりに追われる。
値上げ対応に追われる。
現場のトラブル対応がある。
社員同士の人間関係の問題もある。
採用や離職の問題もある。
目の前の課題に向き合うだけで、一日が終わってしまいます。
だから、お客様の声を
聞こうとしていないわけでもありません。
ただ、日々の忙しさがイヤホンのようになり、
本当に大切な情報が届きにくくなっているのです。
目次
価格競争から抜け出したい
ブルーオーシャンという言葉があります。
簡単に言えば、
ライバルとの競争が少なく、自社の強みを活かせる市場のことです。
反対に、
価格競争や消耗戦が起きている市場をレッドオーシャンと言います。
ランチェスター戦略の講演をしていて、よくいただく相談があります。
「値引きはあかんのはわかっている」
「相見積もりで価格競争になる」
「下請けから脱却したい」
「強みがわからない」
という内容です。
しかし、
日々の仕事に追われ、
気がつけば一日が終わっている。
未来のことを考える時間も取れない。
そんな経営者の声を私は数多く聴いてきました。
だからこそ、
「何とかしなければならない」
と思いながらも、
なかなか次の一歩が踏み出せないのが現実です。
解決への道のりは、
決して簡単なものではありません。
そこで私は、
まず最初に取り組むべきことがあると思っています。
それは、
「どこで戦い、何で一番になるのかを決めること」
です。
私はこれこそが、
社長の最も重要な仕事の一つだと考えています。
なぜなら、
限られた経営資源をどこに集中するのか。
誰に選ばれる会社になるのか。
それを決めなければ、
どれだけ努力を重ねても力が分散してしまうからです。
ブルーオーシャンとは、
新しい商品を発明することではなく、自社が勝てる市場を見つけることだと思っています。
では、そのヒントはどこにあるのでしょうか。
私はお客さまの声の中にあると思っています。
お客さまの声の中に価値が眠っている
「あなたの会社の強みは何ですか?」
そう質問すると、
「納期が早いことです」
「小ロット対応です」
「対応力です」
という答えが返ってきます。
もちろんそれも強みでしょう。
しかし実際にお客さまへ話を聞いてみると、違う答えが返ってくることがあります。
「困った時に相談に乗ってくれた」
「担当者が親身だった」
「急な依頼でも断らなかった」
「安心して任せられた」
というお客さまの現場の声です。
私達の言葉とお客さまの言葉が違っている。
同じようなことだけれど、そこに大きな違いがあるのです。
こうしたことは決して少なくありません。
「安心して任せられた」とは、どういうことですか?
とより深く質問して聴いてみる。
そこに差別化のヒントがあるのです。
「聞く」「聴く」「訊く」の三段階
ここで大切になるのが、
「聞く・聴く・訊く」
という三つの「きく」です。

まず一つ目は「聞く」です。
聞くとは人間関係をつくることです。
相手の話を最後まで聞く。
うなずく。
共感する。
安心して話せる空気をつくる。
信頼関係がなければ本音は出てきません。
二つ目は「聴く」です。
意図を持って話を聴くことです。
どんな背景があるのか。
どんな困りごとがあるのか。
仮説を持ちながら話を聴いていきます。
すると表面的な言葉の奥にある本音が見えてきます。
そして三つ目が「訊く」です。
私はこれが最も重要だと思っています。
訊くとは本質を探ることです。
相手自身も気づいていない課題に迫ることです。
例えば、
「なぜこの加工をしているのですか」
と質問したとします。
すると、
「素材を固くするためです」
という答えが返ってきます。
ここで終わるのは聴く力です。
訊く力はそこから先へ進みます。
「固くすることでどんな効果があるのですか」
「一番困っていることは何ですか」
「別の方法があれば検討されますか」
そんなふうに問いを重ねていくのです。
すると、
コストダウンへの期待。
品質安定への要望。
環境負荷への課題。
これまで見えなかった本当のニーズが見えてきます。
私はこの訊く力の中に、新しい市場を見つけるヒントがあると思っています。
ランチェスター戦略という物差し
ただし、お客さまの声を聞くだけでは十分ではありません。
聞いた内容を整理し、分析する必要があります。
その時に必要なのが物差しです。
私は長年、ランチェスター戦略を学んできました。
客層。
商品。
地域。
ライバル。
この四つの視点で市場を見ていきます。
特にBtoB企業ではライバル調査が欠かせません。
なぜならお客さまは必ず比較しているからです。
価格。
納期。
品質。
対応。
提案力。
どこで比較されているのか。
どこで評価されているのか。
それを知らずに差別化はできません。
差別化とは違いをつくることです。
違いは比較しなければ見えてこないのです。
ブルーオーシャンは三つの重なりの中にある
私は市場を見る時、三つの視点を大切にしています。
一つ目はお客さまです。
何に困っているのか。
何を求めているのか。
二つ目はライバルです。
どこが強く、どこが弱いのか。
三つ目は自社です。
何が得意なのか。
何が評価されているのか。
この三つを重ねていくと、ある一点が見えてきます。
お客さまが求めている。
ライバルが十分に対応できていない。
そして自社が得意としている。
そこがブルーオーシャンです。

私は強い会社と同じ土俵で戦う必要はないと思っています。
自社が勝てる場所を見つける。
それがランチェスター戦略の考え方です。
まずは心のイヤホンを外してみる
電車の中で見た女子学生の姿から、私は改めて考えさせられました。
聞こえていないのではない。
聞こえなくなっている。
経営も同じです。
お客さまの声。
社員の声。
市場の変化。
ライバルの動き。
それらは今も私たちの周りにあります。
しかし心のイヤホンをつけたままでは聞こえません。
まずはお客さまの話を聞いてみる。
ライバルを観察してみる。
そして自社の強みを見つめ直してみる。
その先に、
価格競争ではなく価値で選ばれる市場が見えてきます。
ブルーオーシャンは遠くにあるものではありません。
お客さまの声の中にあるのです。
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投稿者プロフィール

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1962年 大阪生まれ。1位づくり戦略コンサルタント。
立志立命式代表世話人。
中小企業に従事した自らの体験を踏まえ、コンサルタントとしてこれまで1300社以上の指導実績を持つ。
また豊富な現場経験から生み出された1位づくり戦略をはじめ多彩なテーマで年間100回以上のセミナーを行い、実践的かつ即効性がある好評を博している。
自ら主催する経営塾「あきない道場」には、全国からたくさんの経営者が参加。その理論を実践し短期間に多くの成功事例を生み出している。
著書には、『小さな会社★採用のルール』をはじめ、『「あなたのところから買いたい」とお客に言われる小さな会社』、『小さな会社☆No.1のルール』、『小さな会社☆集客のルール』、『スゴい仕掛け』など、いずれもAmazonカテゴリーで1位を獲得している。



