先日、大阪市平野区にある「東洋バレル技研」さんの月例勉強会に参加させていただきました。

社員数は10名という小規模な町工場。しかし、社内で交わされる言葉、整った業務体制、そして全社員に根付いた“納期を守る”という強い責任感には、大手企業にも引けを取らない「組織力」と「戦略性」があります。
特に印象的だったのは、「納期遵守100%」という明確な信念です。東洋バレル技研さんでは、「納期を守ることが信用の第一歩」という考えを中心に、事業戦略から日々の行動までが組み立てられています。
今回は、東洋バレル技研さんの取り組みを、「納期」「営業」「社内育成」「情報発信」という4つの軸でご紹介します。
目次
「納期遵守100%」という誇り
東洋バレル技研さんの最大の強みは、何といっても納期を守ることへの徹底した姿勢です。どんなに技術が高くても、どんなに品質が良くても、お客さまとの約束である納期が守れなければ信頼は得られません。
実際、東洋バレル技研さんではこれまで納期遅れは一度もなく、「納期遵守100%」という数字が誇りとなっています。
この強みは単なる偶然や現場努力の結果ではなく、納期を守ることを前提にした工場全体の仕組みづくりに支えられています。生産工程、品質管理、スタッフの役割分担や日々の情報共有すべてが、「納期厳守」を中心に組まれているのです。
月例勉強会が生み出す「安心」と「前進」
このような強固な体制を支えるのが、毎月行われている「月例勉強会」です。
この会議では、社員全員が集まり、1ヵ月のふり返りを行います。

「今月もクレームゼロでした」
「お客さまが来られた時、台車を持ってすぐに出迎えできました」
「ちょっとした物損事故がありました。すみません。すぐに改善対策を取りました」
といった現場の声が次々に共有されます。
そして最後には社長から、全体への感想や方向性の話が語られます。この流れを毎月続けることで、全社員が会社の現状と向かう方向をしっかり理解し、自分の立ち位置を確認できるようになっています。
また、「去年の3月と比べて、自分はどう成長したか?」というテーマで、スタッフ一人ひとりが発表する場面もありました。
「研修に参加するようになって、自分の仕事に自信が持てるようになりました」
「生産ラインが倍のスピードで回るようになりました」
「物流が1日1往復から2往復に増えて、受注量が増えているのを実感しています」
といった発表からも、会社とともに自分も成長しているという実感が伝わってきました。
「全社員営業」という新しい考え方
東洋バレル技研さんでは、「営業=営業担当者の仕事」という固定観念はありません。全社員が、お客さまとの関係づくりに関わる、いわゆる「全社員営業」のスタイルを取っています。
たとえば現場のスタッフも、工場見学に来られたお客さまに対して、丁寧に案内や説明を行い、現場の雰囲気や取り組みを伝える“営業の一員”として活躍しています。
このように、どんな立場でも「お客さまとの信頼関係をつくる」ことを意識して行動しているのです。

工場の中から信頼を生む ― 内勤スタッフの“お客さま目線”の工夫
そして今、工場の中からも営業的な取り組みを進める動きが始まっています。内勤スタッフの取り組みは、まさにその象徴です。
事務スタッフのなっちゃんは、「今、自分にできることは何か」を常に考えながら行動しています。仕事は指示される前に、自分で先回りして動く。与えられた課題にも、周りの倍のスピードで取り組み、相手の期待を超えるように工夫を加えてくれます。
最近では、納品伝票にちょっとした手書きコメントを添えたり、工場見学に来られたお客さまを手書きのウェルカムボードで迎えたり、スムーズに案内するための工場見学マップやマニュアルを整備したり、クレーム対応のマニュアルづくり、自ら考えて改善を進めています。
内勤営業部 なっちゃんの具体的な取り組みはこちらで詳細に紹介されています
また、商談後のお礼の手書きのはがきや嬉しかったことやちょっとしたホウレンソウなど、心のこもったアナログ対応も大切にしています。
こうした行動の背景には、内勤営業育成講座で学んだ「工場にいながらも信頼関係を築く方法」が活かされているのだそうです。けれど、何より大切なのは、学んだことを自分ごととして捉え、実際に行動に移していることです。




工場の中であっても、「お客さまのことを考えて行動する」姿勢が、今の東洋バレル技研さんを支えているのです。
情報の物量戦_ホームページ・SNSでの情報発信と新規開拓
営業活動は社内だけにとどまりません。外に向けた発信も積極的に行っています。
私が東洋バレル技研さんのホームページ制作をお手伝いした際、公開からわずか1ヵ月以内で新規のお問い合わせが入り、相談案件へつながったという報告がありました。
この成果の裏には、社長の徹底した戦略的な姿勢があります。ライバル企業のホームページを研究し、自社の強みである「納期」「品質」「スピード感」をどう表現するか、何度も検討されていました。
また、SNSや動画も活用し、「日本一情報発信するバレル研磨会社を目指す」という目標に向かって日々更新を続けています。東洋バレル技研の工場見学動画はこちら
別所代表は、「ライバル企業をいくつも確認分析しました。そこで分かったのは、情報の古さです。何年前につくったWebなのか?また強みも明確ではないモノもいくつもありました。これはイケると感じ、Webのリニューアル、PR動画を強化することにしました。今後、大阪に絞った展示会に出展し営業をより強化していきますよ」と力強いコメントがありました。
東洋バレル技研さんでは、ウェブもSNSもただの広告ではなく、「社長の人柄」や「信頼を伝える手段」として戦略的に活用しているのです。Tiktok別所社長は毎日更新しています。
小さな町工場にこそ、尖った情報戦略を
「納期を守るなんて当たり前」と思われるかもしれません。でも、その当たり前を“100%”守り抜くために、仕組みをつくり、人を育て、全社員で取り組むことは、簡単なことではありません。
東洋バレル技研さんのように、
- 納期遵守を事業戦略の中心に据える
- 全社員が営業の視点を持つ
- 工場内からも信頼関係を育てる
- ホームページやSNSで強みを発信し新規開拓する
これらを地道に、誠実に、継続している会社は、そう多くはないでしょう。
私が参加した勉強会では、社長も社員も、自分たちの言葉で会社の未来を語っていました。その姿から感じたのは、「小さな会社だからこそできる営業」「町工場だからこそ生まれる信頼」の強さでした。
最後に
東洋バレル技研さんの取り組みは、これからの町工場のひとつの理想形を見せてくれているように思います。
どんなに小さな現場でも、「強みを見つけて、それを活かす仕組み」を持ち、「自分たちの声で会社を前に進めていくこと」ができれば、確かな未来は拓ける。
それを証明してくれる、素晴らしい時間と出会いでした。
投稿者プロフィール

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1962年 大阪生まれ。1位づくり戦略コンサルタント。
立志立命式代表世話人。
中小企業に従事した自らの体験を踏まえ、コンサルタントとしてこれまで1300社以上の指導実績を持つ。
また豊富な現場経験から生み出された1位づくり戦略をはじめ多彩なテーマで年間100回以上のセミナーを行い、実践的かつ即効性がある好評を博している。
自ら主催する経営塾「あきない道場」には、全国からたくさんの経営者が参加。その理論を実践し短期間に多くの成功事例を生み出している。
著書には、『小さな会社★採用のルール』をはじめ、『「あなたのところから買いたい」とお客に言われる小さな会社』、『小さな会社☆No.1のルール』、『小さな会社☆集客のルール』、『スゴい仕掛け』など、いずれもAmazonカテゴリーで1位を獲得している。