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佐藤元相のオフィシャルブログ

1位づくり戦略コンサルタント 佐藤 元相

予算ゼロから始める、中小企業のSNSブランディング パイン滋賀工場視察で見えた「お客さま」中心の経営思想(前編)

今回のテーマは、
「予算ゼロから始める 中小企業のSNSブランディング」

創業75年パイン滋賀工業をあきない道場生とゲストとともに視察

2026年4月16日 滋賀パイン滋賀工場の視察と勉強会を開催しました。
パイン株式会社は1951年創業。
今年で75周年という節目を迎えます。

パインアメの誕生は、戦後、
パイナップルの缶詰は高級品で、
誰もが気軽に口にできるものではなかった。

だからこそ、「もっと多くの人が、
気軽にパイナップルの味を
楽しめるようにしたい」という想いから企画され、
生まれた商品だったといいます。

あきない道場卒業生、ゲストを含め約20名で
工場見学の機会をいただきました。

パイン株式会社は、社員数約120名です。
工場は滋賀工場に集約されています。
工場で働く人は8名です。
非公開の工場を見学させていただきました。

スタッフも一緒に工場視察


内容はお伝えできませんが、
パイン滋賀工場では、近い将来に工場の無人化を
目指していると言います。

できたてのパインアメをいただきました。
柔らかくて、香りがよくて、口の中にじわーとパインの味が
広がっていきました。

工場視察の様子



さて、工場視察を終えて、
会議室で広報担当の井守さんの
お話がはじまりました。
彼女は、広報を1人で切り盛りしています。
さらに、企画、営業ツールの作成、プレスリリース、
メディア対応、ネットショップの運営。
広報担当という言葉では収まらない役割を担っておられます。

まさに、パインの「伝える」を一手に引き受ける存在です。


会議室(食堂)に準備されたスクリーンには、
「予算ゼロから始める
中小企業のSNSブランディング」
映し出されたこの言葉に、会場の空気が変わりました。

パインアメのブランディングセミナー



多くの中小企業にとって、「予算がない」は
言い訳になりやすい。

しかし、パインさんは、予算がないところから始めて、
今のブランドを築いてきた。
その現実が、目の前にありました。

2010年、ほぼPRしていなかった会社が動き出した

井守さんのお話で印象的だったのは、SNSを始めたきっかけです。
2010年当時、会社としてPRは
「ほぼしていないに等しかった」と言います。

新聞の番組欄のようなところに、
小さな広告が年に1回出る程度。
独自性の高い商品はある。
歴史もある。
知名度も一定ある。

それでも、自ら伝えることにはほとんど力を
入れていませんでした。

会議室でのセミナーの様子


その時に井守さんは、
「誰にも知られていないのは、もったいない」
と感じたそうです。

ここが大事だと思いました。

商品力があるから売れる、ではない。
知られていなければ、存在しないのと同じ。
X(当時のTwitter)というSNSが、
会社にとってプラスになるかもしれない。
そう考えて、社内に提案しました。

けれど、その当時は社内でSNSを
知っている人はほとんどいなかった。
それでも、時代はもうテレビ一辺倒ではない、
という感覚が社長(現会長)にもあったそうです。

そして返ってきた反応が、

「失敗しても損失はないんやったら、
やってみたらええやん」

とても印象的な言葉でした。

期待されていなかった面もあった。
だからこそ、逆に非常にやりやすかった。
このリアルな話に、私は中小企業の可能性を
感じました。

大きな予算もない。
立派な専門部署もない。
けれど、やってみる自由がある。
それが中小企業の強みになるのだと思います。

ルールはたった3つ

井守さんは、SNS運用のルールについても明確にお話されていました。
それがまた、シンプルで本質的でした。

1つ目は、
特定の人を傷つける内容の投稿はしないこと。

2つ目は、
自社商品や会社から離れすぎないこと。

3つ目は、
リアルタイムで投稿すること。予約投稿はしないこと。

この3つです。

難しいことは言っていません。
でも、この3つを守ることで、発信の軸がぶれない。

特に「自社商品や会社から離れすぎない」というのは
重要だと感じました。
話題性を追いかけすぎると、主語が自分たちではなく、
世の中の流行になってしまう。
そうすると、一時的な反応は取れても、ブランドにはならない。

また、リアルタイムで投稿するという考え方も
非常に興味深かったです。
予約投稿は便利ですが、
世の中で何か大きな出来事が起きた時に、
空気を読まない投稿になってしまうことがある。

だからこそ、その時の社会の空気や、
お客様の感情も含めて、今この瞬間に出す。
ここにも「相手中心」の思想がありました。

運用体制も、特別ではない。だから学べる

運用体制についてもリアルでした。

基本は井守さん1人で担当。
通常業務の合間に投稿し、反応を見て、必要があれば返事をする。
特別な大組織があるわけではない。

けれど、方向性は最初に決めておく。
ここが大事だと語られていました。

つまり、

  • どんなトーンで発信するのか
  • 会社として、ゆるく親しみやすくいくのか
  • それとも、固めにいくのか
  • 誰に向けて話すのか

これを最初にある程度決めておくことが大切だということです。

ここは、どんな中小企業にも応用できる話だと思いました。
何を投稿するかの前に、どういう人格で発信するのか
これが決まっていないと、積み重ねてもブランドにならない。

毎日投稿するために必要なのは、根性ではなく「ルーティン」

スライドの中に、
「ルーティンを作ると毎日投稿できる」
という言葉がありました。

これも非常に示唆に富んでいました。

SNSは、特別なネタがないと投稿できないと思いがちです。
けれど実際は逆で、毎日投稿できるように、
日々の型を持っておくことが大事だということです。

たとえば、

  • 朝の挨拶
  • 商品の紹介
  • ちょっとした気づき
  • 新商品やコラボの案内
  • 季節の話題

こうしたルーティンがあるから、継続できる。
そして継続こそが、AIやアルゴリズムの評価にもつながっていく。

この話は、SNSだけでなく、営業にも広報にも、そのまま通じると思いました。
思いつきでやるのではなく、習慣に落とし込むこと。
それが、積み重ねになる。

お客様の「困りごと」に寄り添う。

ここがいちばん大事だった

今回、私が最も関心を持ったのはここでした。
スクリーンに大きく映し出された言葉があります。

「お客様の『困りごと』に寄り添う」

この一言に、井守さんの広報姿勢、
そしてパインさんのブランドづくりの本質が
表れていたと思います。

どこで売っているのか分からない。
買いたいのに見つからない。
商品について気になることがある。
困っている。疑問がある。
時にはクレームもある。

その時に、企業としてどう向き合うか。

井守さんのお話を聞いていて、
常に主語が「お客様」だったことが、
私は非常に印象深かったです。


お客様の困りごとに寄り添う。
お客様の声を見る。
お客様のクレームから学ぶ。
お客様の反応を次の商品や改善に活かす。

つまり、常にお客が中心なのです。

ここは、私自身のコメントとして、ぜひ残しておきたいところです。


お客様の困り事に寄り添う。
お客様の声とか、お客様のクレームとか、
常にお客が主語になっているところが非常に関心深いと思いました。

経営は常にお客が中心である。
こうしたことが広報担当に強く根付いているところが、
とても良いと感じました。


広報という仕事は、
ともすると「会社が言いたいことを
発信する仕事」になりがちです。

しかし、井守さんのお話を聞いていると、その逆でした。
「お客様が何を求めているか」
「どんなことで困っているか」を
起点にして発信している。
ここに、愛される会社の条件があると思います。

実例① ネタから商品化へ

「パインアメは鳴らない」から始まった展開

実例の一つ目は、非常に有名なお話でした。

「パインアメは鳴らない」という事実を投稿したところ、
大きな反響があったというものです。


パインアメは、形状的に「笛みたいに鳴りそう」と思う人が多い。
でも実際には鳴らない。
その事実を、ユーモアを交えて投稿した。

すると話題になり、たくさんの人が、
音がなるのか?
吹けるのか?
チャレンジの様子をSNSに投稿しだした。
そこからフエラムネとのコラボへ発展していった。


私はこの話がとても面白いと思いました。

普通なら、「そんな小ネタは商品に関係ない」と
見過ごしてしまうかもしれない。
でも、井守さんはそれを見逃さなかった。

お客様が面白がるポイントを掘り起こし、
それを商品化へつなげていった。


これは、単なるSNS活用ではありません。
お客様の関心を見つけ、それを価値に変える力です。

実例② クラウドファンディング

反対されても、やりたいことを形にした

次に印象的だったのが、ぬいぐるみの話です。

パインアメくんのマスコットぬいぐるみ化プロジェクト。
会社の中では反対もあったそうです。

普通なら、そこで諦める。
しかし井守さんは違った。

自らクラウドファンディングで挑戦したのです。

結果は、
支援総額311万円超。
支援者860人。

これは本当に素晴らしい数字です。

私はこの話を聞いて、単に「すごい」と思っただけではありません。
やはりここでも、お客様との関係性があったからこそだと感じました。

普段からお客様に寄り添い、関係を築いていた。
だから、「応援したい」という人が現れた。
日々の対話が、いざという時の支援につながる。
これは、中小企業経営にとって極めて大きな示唆だと思います。

実例③ 阪神タイガースの件

「すぐ送る」という行動力がニュースを生んだ

三つ目の事例も非常に印象的でした。

阪神タイガース関連のお話です。
監督がパインアメ好きだという話が出た時、
井守さんたちはすぐに動いた。

大量のパインアメと自社商品を詰め合わせて送った。

ここで大事なのは、
「どうしようか」と会議を重ねたわけではないことです。
まず動いたのです。

その結果、追いかけ取材が入り、
新聞一面に掲載され、Yahoo!ニュースにも取り上げられた。
売り場も一気に拡大した。

今までコンビニで2袋程度しか並んでいなかったものが、
棚一面に広がったというお話は、本当に迫力がありました。


やれることは何でもやる。
全力でやる。
躊躇していたら何も変わらない。

この行動力は、中小企業の広報や営業にとって、大きな学びだと思います。

実例④ 復刻版

過去のストーリーを掘り起こし、今の価値に変える

四つ目は、パインアメの缶、復刻版のお話です。

私は古いものが好きで、メルカリなどを通じて、集めていました。
パインアメにもたくさんの思い出となる商品があるのですが、会社には何も残っていませんでした。メルカリで昔のパインアメの缶などを集めてSNSに投稿していました。

読者の方から、「創業当時の缶があるので引き取ってもらえませんか?」と投稿がありました。こうした経緯から復刻商品へとつながっていきました。

私はこの話にも強く惹かれました。

企業には、歴史があります。
でも、多くの会社は、その歴史をただ眠らせてしまっている。

パインさんは違った。
過去を掘り起こし、それを今のお客様に届く物語として再編集していた。

しかも、ここでも大切にしていたのは、お客様の声でした。
こういうものが欲しい。
こういうストーリーに惹かれる。
その反応を見ながら、展開していった。

復刻版の缶詰のパインアメは阪神百貨店にて数量限定で販売されました。
販売前に行列ができて、販売直後に完売したといいます。
つまり、歴史を語ることも、自己満足ではない。
お客様にどう届くかを考えているのですね。

クレームも、他部署連携も、全部お客様起点だった

井守さんのお話の中では、
クレームや商品の不具合がSNS上で
見えてくることについても触れられていました。


それを、広報だけで抱え込まない。
ちゃんと他部署と連携して共有する。
改善につなげる。

これも素晴らしいと思いました。

SNSを「宣伝の場」とだけ捉えている会社は多いですが、実際には
お客様の声が最も早く届く現場でもあります。

だからこそ、広報は会社の窓口であり、耳でもある。
そして、その情報を社内につなげる役割がある。

ここにもまた、「お客様が主語」である姿勢が見えていました。

やらないことも決めている

もう一つ、興味深かったのは「NGにしていること」でした。

たとえば、得意先の宣伝はやらない。
これを一度やってしまうと、全部やらないといけなくなるから。

これは大事な判断です。
何でも受けることが親切ではない。
ブランドを守るためには、
やらないことを決める必要がある。

広報とは、何を出すかだけでなく、
何を出さないかを決める仕事でもあるのだと感じました。

最後に残った言葉があります。

「前例がないからやらないのは、もったいない」

この言葉は、とても重いと思いました。

前例がない。
予算がない。
人がいない。
時間がない。

中小企業には、できない理由はいくらでもあります。
でも、パインさんはそこから始めた。

だからこそ、この言葉には説得力があります。

まとめ

ブランドとは、お客様との関係を育て続けること

今回、井守さんのお話を通じて感じたのは、
ブランドとはロゴやデザインのことではない、
ということです。


ブランドとは、
お客様との関係を育て続けること。

困りごとに寄り添い、
声を聞き、
クレームから学び、
喜ばれることを考え、
時にはすぐ動き、
時にはやらないことも決める。

そのすべての中心に、お客様がいる。

だから、愛される。
だから、75年続く。

最初から主語は「商品」ではなく「お客様」。
この原点があるからこそ、75年経った今もなお、愛され続けているのだと思いました。

現場のリアルな言葉から学ばせていただいた1日でした。


次回予告

そして、この実践を根っこで支えているのが、上田会長の経営思想です。

なぜ危機を越えられたのか。
なぜ人が集まるのか。
なぜ挑戦が文化になっているのか。

次回は、会長のお話から
「愛され続ける会社の経営哲学」
に迫りたいと思います。


ご案内
誰でも参加いただける「あきないトークライブ」を定期的に開催しています。
NNAでは、お酒を片手に気軽に学び、交流する場をつくっています。

投稿者プロフィール

佐藤元相
佐藤元相
1962年 大阪生まれ。1位づくり戦略コンサルタント。
立志立命式代表世話人。
中小企業に従事した自らの体験を踏まえ、コンサルタントとしてこれまで1300社以上の指導実績を持つ。
また豊富な現場経験から生み出された1位づくり戦略をはじめ多彩なテーマで年間100回以上のセミナーを行い、実践的かつ即効性がある好評を博している。
自ら主催する経営塾「あきない道場」には、全国からたくさんの経営者が参加。その理論を実践し短期間に多くの成功事例を生み出している。

著書には、『小さな会社★採用のルール』をはじめ、『「あなたのところから買いたい」とお客に言われる小さな会社』、『小さな会社☆No.1のルール』、『小さな会社☆集客のルール』、『スゴい仕掛け』など、いずれもAmazonカテゴリーで1位を獲得している。
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