目次
「人を集める前に、会社をつくる」と決めた経営者の覚悟
「今回は、見送らせてください」
一本の連絡でした。
それは、断りの言葉でありながら、どこか静かな決意を含んでいました。
ある地方で、社員100名ほどの会社を営む社長です。
広報の内製化に関心があり、
SNSでの発信にも強い意欲を持っておられました。
だからこそ私は、迷いなく
「SNS動画実践講座」をおすすめしました。
これからの時代、
採用も営業も、「伝える力」が問われる。
自分たちの言葉で、自分たちの価値を語る。
それは企業にとって、生きる力そのものだと思っていたからです。
けれど返ってきたのは、
「今ではない」という選択でした。
採用に1000万円かけて気づいたこと
なぜなのか。
少し気になり、理由をお聞きしました。
社長は、手帳を開きながら、
ゆっくりと言葉を選びます。
「昨年、数名採用するのに、約1000万円かかりました」
数字は淡々としていましたが、
その奥には、重たい時間が流れているように感じました。
外部に任せ、人数は集まった。
目標も達成した。
けれど
「この人たちは、本当にうちで働きたいと思って来ているのか」
その問いだけが、残ったそうです。
採用を止めるという決断
数は満たされる。
しかし、心は満たされない。
そういうことが、あるのかもしれません。
人は集まる。
けれど、つながらない。
社長は言いました。
「もう、人任せの採用はやめます」
強い言葉でしたが、
どこか静かでした。
決意というより、
受け入れた、という響きに近い。
忘れられない出来事
そして、その背景には、
ひとつの出来事がありました。
大切な社員が、突然この世を去ったのです。
まだ若く、これからという人でした。
彼はよく、会社の未来を語っていたそうです。
「こんな会社にしたい」
「あんな会社にしたい」
夢を語る人は、どこかまぶしいものです。
だからこそ、その不在は、
静かに、深く、残ります。
会社づくりを先にやる
「未来を語り合える会社にしたい」
社長は、そう言いました。
それは目標というより、
祈りに近い言葉でした。
「この1年は、採用の年ではありません」
そう決めたそうです。
では、何をするのか。
会社をつくる。
文化をつくる。
関係をつくる。
誇りをつくる。
目に見えないものを、
時間をかけて育てていく。
そして、思いました。
発信とは、何を伝えるかではなく、
何がにじみ出ているか、なのかもしれないと。
どれだけ言葉を並べても、
そこに“中身”がなければ、届かない。
逆に言えば、
中身があれば、多くを語らなくても伝わる。
なぜ研修を断ったのか
だから社長は、こう判断されたのでしょう。
「今ではない」と。
それは後ろ向きではなく、
むしろ、前に進むための立ち止まりだったのだと思います。
むしろ、本質を見抜いた判断です。
採用とは「共感を集めること」
採用とは何か。
人を集めることなのか。
それとも、誰かと出会うことなのか。
おそらく、その答えは一つではありません。
ただひとつ言えるのは、
人は「条件」ではなく、「共感」で動くということです。
そして共感は、つくるものではなく、
にじみ出るものです。
会社とは何か。
働く場所なのか。
それとも、誰かと未来を語る場所なのか。
私が応援したい理由
1年後。
この会社は、どんな表情をしているのでしょうか。
どんな言葉を発信し、
どんな人たちが集まっているのでしょうか。
そのとき、またお会いできたら
それはきっと、自然な流れなのだと思います
最後に
採用に悩んでいる経営者は、少なくありません。
人が来ない。
定着しない。
育たない。
その悩みは、どの会社にも、どこかで訪れるものなのかもしれません。
けれど
その前に、一度立ち止まって考えてみたいことがあります。
「どんな会社を創りたいのか」
この問いに、はっきりと向き合えているかどうか。
願いの輪郭がぼんやりしていると、
その会社に合う人とも、どこかすれ違ってしまう。
そんなこともあるのではないでしょうか。
採用の前に、文化を育てる。
発信の前に、想いを言葉にする。
順番を整えることで、見えてくるものがある。
私は、そんなふうに感じています。
これからの時代、
その“順番”こそが、静かに差を生んでいくのかもしれません。
投稿者プロフィール

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1962年 大阪生まれ。1位づくり戦略コンサルタント。
立志立命式代表世話人。
中小企業に従事した自らの体験を踏まえ、コンサルタントとしてこれまで1300社以上の指導実績を持つ。
また豊富な現場経験から生み出された1位づくり戦略をはじめ多彩なテーマで年間100回以上のセミナーを行い、実践的かつ即効性がある好評を博している。
自ら主催する経営塾「あきない道場」には、全国からたくさんの経営者が参加。その理論を実践し短期間に多くの成功事例を生み出している。
著書には、『小さな会社★採用のルール』をはじめ、『「あなたのところから買いたい」とお客に言われる小さな会社』、『小さな会社☆No.1のルール』、『小さな会社☆集客のルール』、『スゴい仕掛け』など、いずれもAmazonカテゴリーで1位を獲得している。



