中小企業の多くが、「求人を出しても応募が来ない」「せっかく採用してもすぐ辞めてしまう」といった課題に直面しています。
「もっと給料を上げれば応募が来るのでは?」
「福利厚生を充実させれば辞めないのでは?」
そう考えて対策を講じても、なかなか思うような結果が出ない…そんな経験をしたことはありませんか?
実は、中小企業の採用がうまくいかない原因は、単に条件が悪いからではありません。では、なぜ中小企業は採用に苦戦し、人が定着しないのでしょうか?そして、どうすれば理想の人材を確保し、長く働いてもらうことができるのでしょうか?
今回は、その原因と解決策について詳しく解説していきます。
目次
1. 中小企業の採用がうまくいかない3つの理
理由① 給与や条件で大手企業と競争してしまう
多くの中小企業は、採用活動をする際に大手企業のやり方を真似しがちです。例えば、「給与や福利厚生を改善すれば人が集まる」と考え、高い待遇をアピールしようとします。
しかし、現実的に中小企業が大手と同じ条件を提供することは難しく、結果的にコストばかりかかり、採用の成果が出ません。求職者は「条件」だけではなく、「共感」できる環境や成長の機会を求めています。そのため、中小企業は「大手にない強み」を前面に出すべきなのです。
理由② 社長の願望や会社の想いが伝わっていない
採用活動を行う際、会社の「想い」をしっかり伝えていますか?
求職者は、ただ「働く場所」を探しているのではありません。「この会社はどのような未来を創りたいのか?」を理解し、共感できなければ、選ばれることはありません。特に中小企業の場合、社長の願望が会社の魅力そのものです。
しかし、多くの中小企業では、社長の想いやビジョンが採用活動の場で十分に伝わっていないのが現状です。「どんな未来を一緒に創れるのか?」をしっかりと語ることが、採用成功のカギとなります。
理由③ 心理的安全性が確保されていない
せっかく採用した人材が、「思っていた会社と違う」と感じて辞めてしまうケースも多いです。
その大きな原因の一つが、「心理的安全性」の欠如です。心理的安全性とは、社員が「ありのままの自分を表現できる」「意見を自由に言える」「失敗しても非難されず、学びに変えられる」職場環境のことです。
もし、新入社員が「意見が言えない」「相談しづらい」「ミスをしたら怒られる」と感じると、ストレスが溜まり、早期離職につながってしまいます。長く働き続けてもらうためには、社員が安心して働ける環境づくりが不可欠なのです。
2. 採用と定着を成功させるための3つのポイント
では、どうすれば中小企業でも理想の人材を採用し、定着率を高めることができるのでしょうか?
次の3つのポイントが重要になります。
① 社長の願望を「物語」にして伝える
求職者は、「この会社でどんな未来が待っているのか?」を知りたがっています。そこで重要なのが、社長の願望を物語にして伝えることです。
例えば、こんなストーリーを伝えることで、共感を生むことができます。
私が小学校1年生のころです。父と母はときどき家を留守にしました。そんなとき、ばあちゃんが子守で家にきてくれました。寝るとき、兄弟3人でばあちゃんの取り合いでした。ある日の夏の夕方、ばあちゃんがご飯をつくっているときに突然停電になりました。停電は珍しくありませんでした。
だんだんと陽が暮れてきました。ばあちゃんは、仏壇のでかいろうそくに火を入れて台所に子どもたちを集めました。妹たちはおばあちゃんと一緒に唄をうたってすごしていました。
1時間ほど過ぎたとき、ばあちゃんは「今日は長いね」といいました。いつもはそんなに長く停電は続きませんでした。ばあちゃんは、子どもには心配な顔を見せたくないと思ったのか?ずっと笑顔でした。
私は、しばらくして窓から外を観ると、隣の家に明かりがついているのを見つけました。玄関に走って「ばあちゃん 他の家はみんな明かりがついてるよ」私は言いました。ばあちゃんが電話帳で九州電力を探して電話をしました。
「ブレーカーを確認してください」と言われたようです。しかし、ばあちゃんはブレーカーがどこにあるのか?分かりませんでした。「助けてください」と受話器をもっていいました。
みんな揃って玄関でまっていました。
家は山の上にありました。しばらくして、作業服に工具をたくさんもったお兄さんが「こんばんは」とやってきました。そして玄関の上にある黒いボックスをあけてスイッチを入れました。
そうしたらいっきに家の明かりがつきました。
「こんなところまで来てくれてありがとうございます。」「すみません。すみません。」と何度も繰り返し、ばあちゃんが頭を下げて言いました。お兄さんは笑顔で「大丈夫ですよ。いいですよ」と優しくばあちゃんに言いました。
私はその様子をみていて「かっこいいなぁ」思いました。助けてくれた兄さんがヒーローに見えました。それから私は大人になり、今は対馬の産業と生活のインフラを守る!仕事をしています。
あのとき、助けてくれたヒーローになれると信じてこの仕事をしています。
対馬ビルサービスの事例
この島の安心と安全を守ることが私たちの使命です。
対馬ビルサービスは、「国境の島 対馬」の産業と生活のインフラを守るヒーローを探しています。共にヒーローになりませんか?
「私がこの仕事を始めたのは、幼い頃に助けてくれたヒーローのようになりたかったから。」
「誰かの役に立つ仕事がしたい。そんな仲間と一緒に、島の未来を守っていきたい。」
このように、社長の想いを情熱的に伝えることが、共感を呼び、求職者の心を動かします。
② 給与や条件ではなく、教育で「働く価値」を伝える
「どんな環境で成長できるのか?」
「どんなやりがいを感じられるのか?」
給与や条件だけでなく、こうした「仕事の価値」を教育を通じて伝えることが大切です。
教育を通じて価値観を共有し、働く意味や目的を深く理解してもらうことで、社員の意識を変え、定着につながります。
- 会社のミッション・ビジョンを対話を通じて深める
- 研修や勉強会を通じて、社員同士が価値観を共有する機会を作る
- 地域や社会に貢献する意義を、体験を通じて学ぶ
「企業は人なり」と言われるように、社員の成長が会社の成長につながります。
孔子の言葉にある「国家百年の計は教育にあり」と同様に、会社の未来を担う人材を育てることこそ、長期的な成長につながるのです。
③ 心理的安全性を高める職場づくり
社員が安心して働ける環境を整えることが、定着率を高める最大のポイントです。
心理的安全性の高い職場を作るために、次の取り組みを行いましょう。
- 定期的な1on1ミーティングの実施(社員の悩みや考えをしっかり聞く)
- 失敗を許容する文化の醸成(失敗を責めず、学びに変える習慣を作る)
- 社員同士の信頼関係を深める機会をつくる(レクリエーションや社内イベントの実施)
「安心して働ける」「自分の意見を言っても大丈夫」という環境があれば、社員の定着率は大幅に向上します。
あなたの会社でも、教育を通じた採用戦略を始めてみませんか?
投稿者プロフィール

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1962年 大阪生まれ。1位づくり戦略コンサルタント。
中小企業に従事した自らの体験を踏まえ、コンサルタントとしてこれまで1300社以上の指導実績を持つ。
また豊富な現場経験から生み出された1位づくり戦略をはじめ多彩なテーマで年間100回以上のセミナーを行い、実践的かつ即効性がある好評を博している。
自ら主催する経営塾「あきない道場」には、全国からたくさんの経営者が参加。その理論を実践し短期間に多くの成功事例を生み出している。
著書には、『小さな会社★採用のルール』をはじめ、『「あなたのところから買いたい」とお客に言われる小さな会社』、『小さな会社☆No.1のルール』、『小さな会社☆集客のルール』、『スゴい仕掛け』など、いずれもAmazonカテゴリーで1位を獲得している。