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佐藤元相のオフィシャルブログ

1位づくり戦略コンサルタント 佐藤 元相

展示会で受注を増やしたいなら、まず3社のお客さまに聞く|町工場のランチェスター営業戦略

今回のお話は、

「展示会で成果を出すために、まず何から始めればいいのか」

についてです。

2026年8月21日。

尼崎産業フェア2026に出展される企業の皆さまに向けて、ウェビナー形式で展示会活用セミナーを担当しました。

テーマは、

「下請け町工場が次々と受注を増やすランチェスター営業戦略」

です。

今回、私が参加者の皆さまに一番実践してほしいとお伝えしたことがあります。

ブースをつくることでもありません。

チラシをつくることでもありません。

展示商品の見せ方を考えることでもありません。

それは、

「お客さま取材をすること」

です。

なぜ、今のお客さまは自社を選んでくださっているのか。

他社ではなく、なぜ自社なのか。

ここが分からないまま展示会の準備を進めると、自分たちが伝えたいことばかりになってしまいます。

展示会は当日から始まるものではありません。

誰と出会いたいのか。

その人は何に困っているのか。

そして、自社はどんな価値を提供できるのか。

そこを考えるところから始まっています。

それでは詳しくご紹介します。

私も価格を決められない町工場で働いていました

私は高校を卒業してから27歳まで、大阪市此花区にある20人ほどの町工場で働いていました。

自動車のエンジン部品やオートバイの部品、ロケット関連の部品などを加工していました。

鉄を削る。

ステンレスを削る。

加工が難しいチタンも扱っていました。

技術には自信がありました。

しかし、会社は下請けでした。

商社から図面が届いても、発注元の会社名は消されています。

自分たちがつくっているものが最終的にどこで使われるのか、分からないこともありました。

見積もりを出すと、

「あと5円安くしてくれたら頼むで」

と言われる。

1万個、10万個という単位でつくりますから、1円違うだけでも大きな金額になります。

けれど、価格を決めるのは自分たちではありませんでした。

私は当時の社長に、

「営業に行きましょうよ」

と話したことがあります。

すると、

「こんな暇な時に頭を下げに行ったら、余計に値段を叩かれるやろ」

と言われました。

社長は職人として、とても優れた人でした。

早く、安く、良いものをつくる。

技術力はありました。

しかし、

誰をお客さまにするのか。

自社は何が一番得意なのか。

どうやって新しいお客さまをつくるのか。

そうした経営や営業について学ぶ機会がなかったのだと思います。

仕事が来るのを待ち続けました。

しかし、待っていても景気は戻ってきません。

20人ほどいた仲間が、一人、また一人と辞めていきました。

私も、その一人になりました。

その経験から、私の中には一つの問いが残りました。

どうすれば、小さな町工場が価格競争から抜け出せるのか。

この問いは、その後、私がランチェスター戦略を学び続ける大きな原点になりました。

展示会で成果が出にくい3つのパターン

今回のセミナーでは、展示会で思うような成果が出にくいケースについて3つお話ししました。

一つ目は、

客層が絞れていないこと。

つまり、

「今回の展示会で、どんなお客さまと出会いたいのか」

が明確になっていません。

二つ目は、

展示会前のアプローチがないこと。

展示会当日にブースでお客さまを待つ。

これでは、誰と出会えるかは偶然に左右されます。

三つ目は、

自社の強みが明確になっていないこと。

「何でもできます」

「品質には自信があります」

「小ロット・短納期に対応します」

これだけでは、他社との違いがなかなか伝わりません。

では、自社の強みはどうやって見つければいいのでしょうか。

ここで必要になるのが、

お客さま取材です。

「なぜ選んでくださったのですか?」と聞いてみる

セミナーの途中で、参加者の皆さまに質問しました。

「お客さまが、あなたの会社を選んでくださっている理由を3つ書いてください」

少し時間を取って考えていただきました。

しかし、ここで大切なことがあります。

私たちが考えている自社の強みと、お客さまが感じている価値は、同じとは限りません。

経営において、どの会社から買うかを決めるのはお客さまです。

そう考えると、

自社の強みを知っているのは、実はお客さまなのかもしれません。

「なぜ当社を選んでくださったのですか?」

「その時、どんなことで困っていましたか?」

「他社との違いは、どこに感じていますか?」

「取引を始めて、どんなことが良かったですか?」

こうして直接聞いてみる。

すると、自分たちでは当たり前だと思っていたことを、

「そこが良かったんです」

と言っていただくことがあります。

私は、その言葉を大切にしています。

会社側が考えたきれいなキャッチコピーではなく、実際のお客さまが使っている現場の言葉だからです。

ランチェスター戦略では「誰に」を決める

ランチェスター戦略では、経営を考える時に、

目的、目標、戦略、戦術

という順番があります。

事業における目的は、お客さまづくり。

目標は、特定分野で1位になること。

そして戦略とは、そのための仕組みをつくることです。

さらに事業を、

  • 業界・客層
  • 商品
  • 地域
  • 営業
  • 顧客維持

という視点で考えていきます。

展示会は、この中では営業戦略の一つです。

展示会だけを単独で考えるのではありません。

誰をお客さまにしたいのか。

そのお客さまのどんな課題を解決するのか。

そのために、どんな商品や技術を提供するのか。

それを決めたうえで展示会を活用します。

ブース、チラシ、名刺、ホームページ、動画などは、その後に必要になる戦術です。

戦術を考える前に、戦略を考える。

この順番が大切です。

「何でもできます」から「〇〇が得意です」へ

町工場を訪問すると、

「うちは何でもできます」

という言葉を聞くことがあります。

本当に技術力が高く、いろいろな加工ができる会社もあります。

しかし、お客さまからすると、

「では、何が一番得意なのですか?」

となります。

そこで必要になるのが専門性です。

例えば、

「熱処理後の加工が得意です」

「長尺シャフト加工なら相談してください」

「この業界の、この加工を専門にしています」

と絞っていく。

絞ると、お客さまが減ってしまうように感じるかもしれません。

私はセミナーで、

「絞り込むことで減るのは、お客さまではなくライバルです」

とお伝えしました。

広く「何でもできます」とすると、多くの会社と比較されます。

しかし、

「この問題なら、この会社に聞こう」

という専門性ができれば、比較される会社は少なくなります。

価格だけで比べられない会社になるためにも、専門性を見つけることは大切です。

お客さま取材から戦略が変わった永田製作所

今回のセミナーでは、東大阪の町工場、永田製作所さんの事例をご紹介しました。

永田製作所さんも以前は、

多品種小ロット。

短納期。

低コスト。

1円でも安く。

ということを強みだと考えていました。

注文してくださる会社があれば、日本全国どこへでも行く。

相見積もりになれば、できるだけ安くする。

そんな営業スタイルだったそうです。

そして2008年のリーマンショック。

売上が大きく落ち込みました。

景気が良ければ仕事が増える。

景気が悪くなれば仕事が減る。

外部環境によって業績が大きく変わる経営でした。

そこで取り組んでもらったことがあります。

それが、

既存のお客さまへの取材です。

良い関係を築けているお客さまを10社ほど選び、

「なぜ永田製作所を選んでいるのか」

を聞いてもらいました。

すると、

「自社設備で一貫して加工してくれる」

「納期回答が早い」

「外注に出さないので品質管理がしやすい」

「営業担当者と技術的な打ち合わせができる」

「熱処理後の仕上げノウハウがある」

「円筒研磨ではなく切削で仕上げられることに驚いた」

といった声が出てきました。

自分たちが考えていた、

「安い」

「早い」

だけではなかったのです。

特に、

熱処理後の加工技術や、一貫して加工できる体制

に、お客さまが価値を感じていることが見えてきました。

そこから戦略を考え直していきました。

得意とする客層を考える。

高付加価値の加工を考える。

専門性を言葉にする。

営業の仕組みをつくる。

ホームページや名刺を変える。

そして展示会へ出る。

この順番です。

展示会が始まる前に、営業は始まっている

永田製作所さんの最近の展示会営業では、さらに事前アプローチを進めています。

展示会の直前に、

「出展しますので来てください」

と一度だけ案内するのではありません。

まず、どんなお客さまと出会いたいのかを決めます。

そして、その条件に合う企業をリストアップします。

そこへ展示会の数か月前から、段階的にDMを届けていきます。

最初は自己紹介。

次に、お客さまが困っていること。

そして、自社の技術や強み。

スタッフの人柄や仕事への思いも伝えます。

DMにはQRコードを掲載し、動画やSNSへつなげる。

そして何度か接点をつくった後に、展示会の案内を届けます。

ここで大切にしているのが、

専門性と人間性

です。

何ができる会社なのか。

どんな人が働いているのか。

どんな考えでものづくりをしているのか。

会う前から少しずつ知っていただく。

その取り組みから、ある展示会では開催前の段階で、

工場見学5件、見積もり15件、受注4件

という成果につながりました。

まだ展示会は始まっていません。

しかし、営業はすでに始まっています。

これが、

「展示会は当日から始まるのではない」

という意味です。

展示会当日は「売る」より「聞く」

そして、いよいよ展示会当日です。

ここでも私は、

「売るより、聞いてください」

とお伝えしました。

商品説明を一方的にするのではありません。

「今日は何を探しに来られたのですか?」

「どんなことで困っていますか?」

「今の取引先で課題になっていることはありますか?」

「なぜ、このブースに立ち寄ってくださったのですか?」

そんな会話から、お客さまの課題を知っていきます。

名刺を集めることが展示会の目的ではありません。

お客さまを知り、次の関係につながる情報を集めることが大切です。

そして展示会が終われば、

見込み度に応じて名刺を整理する。

お礼を届ける。

必要な方へ電話する。

工場見学へお誘いする。

見積もりや商談を管理する。

そして1か月後には、

「何がうまくいったのか」

「何がうまくいかなかったのか」

「次は何を変えるのか」

を振り返ります。

展示会前、展示会当日、展示会後。

この一連の流れを仕組みにしていくことが、展示会営業なのです。

町工場には、まだ言葉になっていない価値がある

今回のセミナーをしながら、私は自分が働いていた町工場のことを思い出していました。

私たちにも技術はありました。

ステンレスを加工できました。

チタンも加工していました。

難しい仕事にも対応していました。

しかし、

その技術を必要としているのは誰なのか。

どの業界なら、もっと喜んでもらえるのか。

なぜお客さまは自分たちを選んでくださっているのか。

そこまで考える方法を知りませんでした。

もし当時、お客さまに話を聞いていたら。

もし自社の強みを言葉にできていたら。

もし、その強みを必要としている業界へ自分たちから営業していたら。

違う未来もあったのかもしれません。

町工場には、素晴らしい技術があります。

長年積み重ねてきた知恵があります。

対応力があります。

人があります。

しかし、それが社内では「当たり前」になり、価値として言葉になっていないことがあります。

その価値を教えてくれる人がいます。

それが、

お客さまです。

まとめ

展示会で成果を出すために、最初に考えたいのはブースの装飾ではありません。

チラシでも、動画でもありません。

まず、

誰と出会いたいのか。

そして、

なぜ今のお客さまは、自社を選んでくださっているのか。

ここから始めてみてください。

お客さまに聞く。

そこから自社の強みを見つける。

強みを必要としている客層を決める。

専門性を言葉にする。

そのお客さまへ展示会前からアプローチする。

当日は相手の話を聞く。

展示会後も関係を育てる。

この一連の流れが、展示会営業の仕組みになっていきます。

展示会は、一日や二日のイベントではありません。

新しいお客さまとの関係をつくるための営業活動です。

明日、まず3社を決めてください

今回のセミナーを受講された皆さんにも、この記事を読んでくださった皆さんにも、すぐに実践してほしいことがあります。

お客さま取材です。

まず、

「こんなお客さまと、これからも長くお付き合いしていきたい」

と思えるお客さまを3社選んでください。

そして、聞いてみてください。

「最初に当社を選んでいただいたきっかけは何でしたか?」

「その時、どんなことで困っていましたか?」

「他にも会社がある中で、なぜ当社を選んでくださったのですか?」

「取引をしてみて、どんなところに価値を感じていますか?」

「他社と比べて、私たちは何が違いますか?」

できればアンケートを渡して終わりではなく、直接お話を聞いてみてください。

そして、

「それは、具体的にはどういうことですか?」

と、もう一歩聞いてみる。

そこから出てくるお客さまの言葉の中に、あなたの会社の価値が隠れているかもしれません。

展示会のキャッチコピーも、

ホームページも、

営業資料も、

DMも、

その後です。

まず、お客さまに聞く。

ここから始めてみてください。

今回のゴール設定

尼崎産業フェア2026の出展までに、

良いお客さま3社へ取材する。

そして、お客さまの言葉から、

「なぜ私たちの会社が選ばれているのか」を3つ言葉にする。

これを一つのゴールにしてみてはいかがでしょうか。

ブースをつくる前に。

チラシを書く前に。

キャッチコピーを考える前に。

まず、お客さまのところへ行く。

そこから展示会の準備を始めることで、自社が本当に伝えるべきことが見えてくると思います。

今回の尼崎産業フェア2026が、単なる出展で終わるのではなく、新しいお客さまとの出会い、そして自社の強みを改めて知る機会になれば嬉しく思います。

最後に

「お客さまの声から、自社の価値を見つけてみたい」

そう思われた方へ。

NNAのあきない実践道場では、ランチェスター戦略を学びながら、実際にお客さまへインタビューを行い、自社が選ばれている理由や価値を見つける実践にも取り組んでいます。

ご興味があれば、こちらをご覧ください。

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投稿者プロフィール

佐藤元相
佐藤元相
1962年 大阪生まれ。1位づくり戦略コンサルタント。
立志立命式代表世話人。
中小企業に従事した自らの体験を踏まえ、コンサルタントとしてこれまで1300社以上の指導実績を持つ。
また豊富な現場経験から生み出された1位づくり戦略をはじめ多彩なテーマで年間100回以上のセミナーを行い、実践的かつ即効性がある好評を博している。
自ら主催する経営塾「あきない道場」には、全国からたくさんの経営者が参加。その理論を実践し短期間に多くの成功事例を生み出している。

著書には、『小さな会社★採用のルール』をはじめ、『「あなたのところから買いたい」とお客に言われる小さな会社』、『小さな会社☆No.1のルール』、『小さな会社☆集客のルール』、『スゴい仕掛け』など、いずれもAmazonカテゴリーで1位を獲得している。
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