今回は、3回シリーズの最後として、
「人は、何のために成長するのか」
について考えてみたいと思います。
第1回では、
と思える自信について書きました。
第2回では、
自分で考え、
自分で決めることが、
主体性につながるというお話をしました。
では、その先にあるものは何でしょうか。
自分に自信を持つ。
自分から動けるようになる。
それだけで、人の成長は終わりなのでしょうか。
長崎県対馬市の対馬ビルサービスさま主催の話し方セミナーで、私が講師を担当させていただきました。
その研修を振り返りながら、私はもう一つ大切なことを感じました。
人は、自分のためだけに成長するのではない。
自分が学んだことを次の人へ渡す。
自分が受けた恩を次の人へ返していく。
会社が大切にしてきた考え方を次の世代へつなぐ。

人が育つということには、そんな意味もあるのではないでしょうか。
それでは詳しくご紹介します。
目次
最終講で見えてきた、3つのこと
全5回の話し方セミナーが終わった後、今回の研修を振り返りました。
そこで私たちの中から出てきたのが、3つの気づきでした。
一つ目は、
「立場を持つことが、人を育てる」
ということ。
二つ目は、
「話すことで、会社の歴史や文化が伝わる」
ということ。

そして三つ目は、
「人は、自分が支えられてきたことに気づくと、感謝を語り始める」
ということでした。
私は、この3つは別々の話ではないと思っています。
全部つながっています。
立場が変わると、見える景色が変わる
今回のセミナーには、受講するスタッフだけでなく、サポーターとして関わるスタッフもいました。
同じ研修に参加していても、立場が違えば見ているところが変わります。
受講する側なら、
「自分は理解できたか」
「自分はうまく話せたか」
が中心になります。
しかし、サポーターになると違います。
「参加している人は困っていないか」
「次の準備はできているか」
「今、この場に何が必要か」
まで考えなくてはなりません。
さらに次は、自分が人前に立って進行するかもしれない。
自分も話さなければならない。
講師の話も聞かなければならない。
参加者も見なければならない。
負荷は増えます。
でも私は、その負荷が人を育てることもあると思っています。
今回、そんな姿を見ながら、

「1年生が2年生になるというのは、単に知識が増えることではないんやな」
と思いました。
役割が変わる。
責任が増える。
すると、見える景色が変わります。
社長がいつまでも一番前を走らなくてもいい
中小企業では、社長が何でもやっている会社が少なくありません。
営業もする。
お客さまの相談にも乗る。
社員も育てる。
問題が起これば解決する。
私自身にも身に覚えがあります。
しかし、社長が全部やり続けている間は、次の人がその役割を経験できません。
人は役割を与えられて初めて、
「自分がやらなければ」
と考えることがあります。
最初から完璧にできる必要はないと思います。
むしろ、
やってみる。
失敗する。
考える。
周りに助けてもらう。
またやってみる。
その繰り返しの中で、人は少しずつ役割に育てられていくのではないでしょうか。

役職が人を育てるのではなく、役割を引き受ける経験が人を育てる。
私はそんなふうに感じています。
ベテランが話すことで、会社の歴史が残っていく
今回、もう一つ印象に残ったことがあります。
年長のスタッフが、自分の経験を話してくれたことです。

若い社員が、
「昔の会社はどうだったんですか」
「先代の社長はどんな人だったんですか」
と、普段の仕事の中で改まって聞く機会は、それほど多くないかもしれません。
ベテランの側も、「若い人に俺の昔話を聞かせよう」とは、なかなかならないでしょう。
しかし、「自分の経験を話す」という場があると、自然に言葉が出てきます。
昔どんな仕事をしていたのか。
先代から何を教わったのか。
会社がどんな時代を乗り越えてきたのか。
対馬という地域をどう思っているのか。
そういう話が出てくる。
私は横で聞きながら、「これは単なるスピーチではないな」と思いました。
その人が生きてきた会社の歴史を、次の世代へ渡しているのです。

技術だけを残しても、会社らしさは残らない
製造業では、技術承継という言葉をよく使います。
加工方法。機械の段取り。品質を見る目。不具合への対応。
工務店なら、施工技術。
現場の納まり。職人との関わり。
お客さまとの付き合い方。
もちろん、こうした技術を残すことは重要です。
でも、会社が次の世代へ残すものは、それだけでしょうか。
「なぜ、この仕事を大切にしてきたのか」
「困っているお客さまには、どう向き合うのか」
「先代は、どんな思いで会社を続けてきたのか」
「地域に対して、自分たちはどんな存在でありたいのか」
こうしたことは、マニュアルだけでは残りません。
人が人に語ることで残っていくものがあります。

私は、それを会社の文化と呼ぶのだと思います。
そして、みんなの話の中に「ありがとう」があった
最終講で皆さんの発表を聞いていると、不思議なくらい感謝の言葉がたくさんありました。
先輩への感謝。
仲間への感謝。
自分が休んだ時に支えてくれた人への感謝。
家族への感謝。
先代への思いや会社への思い。
誰かから、「今日は感謝について話してください」とお願いしたわけではありません。
それでも、自分の過去を振り返り、今の自分を見つめ、これからの未来を考えていくと、
自然と、「自分は一人でここまで来たわけではない」ということに気づくのかもしれません。

私はその姿を見ながら、嬉しくなりました。
人が成長するということは、できることが増えることだけではない。
自分が支えられていることに気づけることも、成長なのではないか。
そんなことを思いました。
自分を大切にする。そして、人を大切にする
今回の研修の中で、「世の中で一番大切なものは何だろう」という話もしました。
私は、「まず自分自身を大切にすること」が大事だと思っています。
自分を大切にできないまま、人を本当に大切にするのは難しいと思うからです。
自分のできることを認める。
自分を信じる。
自分の人生を自分で決める。
第1回、第2回でお伝えしてきたことです。
でも、それは自分だけ良ければいいという話ではありません。
自分を大切にできるようになる。
自分に少し余裕ができる。
すると、周りにいる人を見ることができる。
支えてもらったことに気づく。
今度は自分が誰かを支えたいと思う。

私は、その流れが大切なのではないかと思っています。
「教えてもらった」から「次は自分が」へ
人を育てる会社には、一つの循環があります。
先輩が若手を育てる。
育ててもらった若手が成長する。
その人が次の若手を育てる。
ベテランが会社の歴史を語る。
若手がそれを受け取る。
そして、いつかその若手が次の世代へ語る。
こうして、人から人へ、会社がつながっていく。
私は、会社というものは、建物や設備だけで存在しているのではないと思っています。
人の思い。
仕事への姿勢。
お客さまとの約束。
先輩から教わったこと。
失敗から学んだこと。
誰かに助けてもらった記憶。

そういう目には見えないものが積み重なって、その会社らしさをつくっているのではないでしょうか。
国境の島で会社をつなぐということ
対馬は、人口約2万5千人の離島です。
地域の公共インフラを担う人がいなくなれば、地域の暮らしにも影響します。
人を採用する。
人を育てる。
技術を伝える。
次のリーダーを育てる。
これは単なる社内教育ではありません。
この島で仕事を続けていくための営みでもある。
そう思います。

製造業でも、工務店でも同じではないでしょうか。
地域に必要とされてきた技術。
お客さまとの信頼。
会社が長い時間をかけて積み上げてきたもの。
それを次の世代へ渡せる人を育てなければ、会社は続いていきません。
社員教育とは、会社の未来を手渡すこと
今回、全5回の話し方セミナーを終えて、改めて思いました。
社員教育とは、
仕事を覚えてもらうことだけではない。
人前で話せるようになることだけでもない。
資格を取ることだけでもない。
自分を信じられる人を育てる。
自分で考えられる人を育てる。
そして、
次の人を大切にできる人を育てる。
そこまでつながっていくと、教育は会社の文化になっていくのだと思います。
社長一人が人を育てる会社から、
育った社員が次の社員を育てる会社へ。

私は、そんな会社は強いと思います。
まとめ
今回の対馬ビルサービスさま主催の話し方セミナーを通じて見えてきたことは、
立場が人を育てること。
人が語ることで、会社の歴史や文化がつながること。
そして、「自分が支えられてきたことに気づくと、感謝が生まれること。」でした。
人は、自分のためだけに成長するのではないと思います。
学んだことを誰かへ渡す。
受けた恩を、次の人へ返す。
自分が育ててもらったように、今度は誰かを育てる。

そんな循環が会社の中に生まれれば、
人が育つことと、
会社が続くことが、
一本につながっていきます。
人を育てることは、会社が大切にしてきたものを未来へ手渡すこと。
対馬ビルサービスの皆さんの姿から、私はそんなことを教えてもらいました。
明日からできること
明日、一人のベテラン社員さんに聞いてみてください。
「若い人たちに、一つだけ残しておきたいことは何ですか?」
技術のことかもしれません。
仕事への姿勢かもしれません。
先代から教わった言葉かもしれません。
お客さまとの忘れられない出来事かもしれません。
その話を、若い社員さんにも聞いてもらう。
それだけでもいいと思います。
会社の文化は、立派な理念集だけで残るものではありません。

人が自分の体験を語り、次の人がそれを受け取る。
そこから、会社の大切なものが次の世代へつながっていくのではないでしょうか。
3回シリーズを終えて
第1回では、「自分はできる」と思える人を育てること。
第2回では、自分で考え、自分で決める機会をつくること。
そして第3回では、「育った人が、次の人を育てること」について書きました。
私は、人材育成にはこの流れがあるように思います。
自分を信じる。
自分で決める。
そして、人を育てる。
会社の未来をつくるのは、特別な一人だけではありません。
一人ひとりが成長し、自分の役割を見つけ、次の人へ大切なものをつないでいく。
その積み重ねが、強い会社をつくっていくのだと思います。

社員育成について、一緒に考えてみませんか
「若い社員に、もっと自信を持ってほしい」
「社員が自分の良さに気づけるような研修をしたい」
「技術だけではなく、人としても成長できる機会をつくりたい」
そんなことを考えておられる社長や研修担当者の方へ。
私は、研修とは知識や技術を教えるだけのものではないと思っています。
一人ひとりが、
「自分はできる」
「自分はやれる」
と思えるようになること。
自分の良さに気づき、少しずつ自信を持ち、次の一歩を踏み出せるようになること。
そんな社員教育を、会社の状況に合わせて一緒に考えています。
「うちの社員には、どんな研修が合うだろう」
という段階でも構いません。
社員育成について気になっていることがあれば、お聞かせください。
研修についてのご相談はこちらから
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投稿者プロフィール

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1962年 大阪生まれ。1位づくり戦略コンサルタント。
立志立命式代表世話人。
中小企業に従事した自らの体験を踏まえ、コンサルタントとしてこれまで1300社以上の指導実績を持つ。
また豊富な現場経験から生み出された1位づくり戦略をはじめ多彩なテーマで年間100回以上のセミナーを行い、実践的かつ即効性がある好評を博している。
自ら主催する経営塾「あきない道場」には、全国からたくさんの経営者が参加。その理論を実践し短期間に多くの成功事例を生み出している。
著書には、『小さな会社★採用のルール』をはじめ、『「あなたのところから買いたい」とお客に言われる小さな会社』、『小さな会社☆No.1のルール』、『小さな会社☆集客のルール』、『スゴい仕掛け』など、いずれもAmazonカテゴリーで1位を獲得している。



