顧客ターゲティングとニッチ戦略で売上を最適化する|あきない実践道場36期レポート
「売れないのではなく、届ける相手が間違っているのかもしれない。」

中小製造業の営業現場では、こんな言葉が実感として聞こえてきます。
頑張っているのに成果が出ない。展示会に出ても引き合いが少ない。地域密着の工務店なら、チラシを撒いても反応がない。
それは、商品やサービスが悪いのではなく、「誰に売るか」が明確になっていないからかもしれません。
第36期あきない実践道場では、ランチェスター戦略の基本に立ち返り、「業界・客層の絞り込み」を中心テーマに据え、12社の中小企業が「差別化戦略構築」に取り組みました。
本記事では、研修で学んだ顧客ターゲティングの重要性と、参加者がどのように自社に引き寄せて実践を始めたかを、講師である私の視点からお伝えします。
目次
ターゲティングは営業の労力を最適化する“戦略の起点”
営業活動には限界があります。時間も人手も資金も限られた中で、最大の成果を出すために必要なのが「ターゲティング戦略」です。
顧客ターゲティングとは、「誰に対して営業するかを決める」こと。
このプロセスを経ることで、以下のようなメリットが生まれます。
- 不要な訪問や営業コストを削減できる
- 誰のための商品かを明確にすることで、提案の質が上がる
- チラシやWebなどの反応率が上がる
- 社員間で“誰を顧客とするのか共通認識ができ、営業ブレがなくなる
とくに中小企業の場合、全方位に向かって営業する体力はありません。
だからこそ、「誰に向けるか」を絞り、そこに限られた戦力を集中投下する必要があります。
ニッチ市場にこそ、チャンスがある
研修の中で、私は特にニッチ市場に特化することの優位性を強調しました。
- 競合が少なく、自社の強みを活かしやすい
- 顧客の課題が明確で、提案が通りやすい
- 専門性が評価され、信頼を得やすい
たとえば、製造業であれば「消費財メーカーにおける高精度バレル加工」「硬度の高い部品に特化した金属加工」など、工務店であれば「築15~20年の戸建て×子育て卒業層×開口部の断熱リフォーム」など、“どの業界・どのライフステージ・どの用途”に絞るかで、営業の景色が一気に変わります。
実際、今回参加した企業の中には「業界別の提案資料をつくるだけで、展示会での反応が激変した」「絞った地域で反響チラシを撒いたら、問い合わせが従来の5倍になった」といった報告も聞かれました。
研修内容:理論+ワーク+個別アドバイスの三位一体
あきない実践道場では、単なる知識提供ではなく、以下の流れで「自社の営業戦略」に落とし込んでいきます。
【STEP1|仮説を立てる】
- 自社がこれまで“どのような顧客に選ばれてきたか”を棚卸し
- 競合が強いゾーン/弱いゾーンをマッピングし、自社の立ち位置を整理
- 将来どこで1位になるのかを仮説を立てる
【STEP2|全体像をあきらかにして目的/目標を定める一点集中戦略】
- ランチェスター戦略の「弱者のルール」を解説
- 「差別化できるゾーン」「専門性を活かせるゾーン」を見つける
- 「何をやらないか(捨てる戦略)」を決めることで、集中力を高める
【STEP3|全体像からシンプルに手を打つ】
- Webやチラシ、展示会で“誰向けか”を明確にする
- 業界客層ごとの情報収集のテンプレートを活用し取材をする
- 顧客分類と営業リストの構築(業界×規模×課題)
■個別アドバイス事例|講師として伝えた視点
私が行ったアドバイスの一部をご紹介します。
◆製造業(大阪八尾・製造メーカー)
参加いただいている営業部長のKさんには、「地域ではなく業界で営業を再構築すべき」と伝えました。
特に、製紙業界や半導体関連設備に対して、展示会を活用し商社と共に新規開拓をする。事前に既存顧客を取材することをつたえ、顧客の課題を絞り込んでいく。展示会を利用して、事前のアプローチと展示会後のフォローについて見直し、営業の取り組みを一緒に設計しました。
◆工務店(兵庫県・リフォーム会社)
代表・Kさんには、「自宅近隣の3500世帯」にターゲットを絞り、自転車での現地調査、建物種別のマッピング、築年数別のニーズの想定と、“足で情報を取りに行く戦略”をアドバイスしました。
補助金対応の窓リフォームに絞り込み、「築15年以上の戸建てに住む50代ファミリー層」という明確な客層に特化したチラシ戦略も提案しました。
■参加者の学びが“唯一無二の実践知”になる理由
私があきない実践道場を通して大切にしているのは、「正解を教えること」ではなく、「考え方と判断軸を持ち帰ってもらうこと」です。

誰かの成功事例をそのまま真似ても意味はありません。
大切なのは、
- 自社の強みは何か
- どこで戦えば勝てるか
- 誰に届けるのが最も効果的か
この問いに、自分の言葉で答えられるようになることです。
私が伝えている数々の事例や実践ノウハウは、机上の理論ではなく、現場で悩み、挑戦し、成果につなげてきた経験に基づくものです。
だからこそ、あきない実践道場は他にはない、“唯一無二の学びの場”になっていると確信しています。
まとめ|営業は「数」より「戦う場所」で勝負が決まる
売上を上げるために必要なのは、「もっと売り込む」ことではありません。
“誰に売るかを決める”ことが、最大の打ち手になるのです。
今回のあきない実践道場36期では、12社がそれぞれにターゲティング戦略を構築し、自社ならではのニッチ市場に向けて動き始めました。
あきない実践道場は、これからも中小企業の戦略づくりに寄り添い、
“売れる仕組み”を現場と共に構築していく実践型の学びを提供していきます。
次回、あきない実践道場第37期もまもなく始動します。
「営業活動を根本から見直したい」「業界・客層の絞り込みを本気で考えたい」という方は、ぜひご参加ください。
投稿者プロフィール

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1962年 大阪生まれ。1位づくり戦略コンサルタント。
立志立命式代表世話人。
中小企業に従事した自らの体験を踏まえ、コンサルタントとしてこれまで1300社以上の指導実績を持つ。
また豊富な現場経験から生み出された1位づくり戦略をはじめ多彩なテーマで年間100回以上のセミナーを行い、実践的かつ即効性がある好評を博している。
自ら主催する経営塾「あきない道場」には、全国からたくさんの経営者が参加。その理論を実践し短期間に多くの成功事例を生み出している。
著書には、『小さな会社★採用のルール』をはじめ、『「あなたのところから買いたい」とお客に言われる小さな会社』、『小さな会社☆No.1のルール』、『小さな会社☆集客のルール』、『スゴい仕掛け』など、いずれもAmazonカテゴリーで1位を獲得している。