「三人寄らば文殊の知恵」ということわざがあります。
ひとりでは思いつかないような知恵も、三人で話し合えば素晴らしいアイデアが出てくる、という意味です
この言葉を思い出したのは、兵庫県三木市の三木城跡を歩いたときのことでした。
今では三木市役所の敷地内として静かに佇むこの場所は、戦国時代、羽柴秀吉が兵糧攻めを仕掛けた「三木合戦」の舞台でした。

このとき、秀吉の軍を支えていたのが、名軍師・黒田官兵衛と、名参謀・竹中半兵衛。
とくに半兵衛が亡くなったとき、秀吉は涙を流しながら「半兵衛さえいてくれたら、何も怖くなかった」と語ったといいます。
自分とは違う意見を持つ存在。自分にない視点を与えてくれる存在。
それを「不要」ではなく「ありがたい」と受け止められる人間の器こそが、乱世を生き抜くリーダーの条件だったのだと、私は感じています。
目次
小さな会社の経営者が陥りやすい「一人の視点」
私はふだん、小さな会社の経営者と日々向き合う仕事をしています。
その中で感じるのは、社長という立場は孤独であるがゆえに、自分の考えが正しいと思い込みやすいということです。
誰かが意見を言ってくれることも少なく、仮にあっても「いや、それは違う」と心のどこかで退けてしまう。
人は肉体を持つ限り、どうしても偏見や先入観から自由にはなれません。
だからこそ、「自分とは違う意見」を受け入れる力が、経営者にとって最も大切な素養の一つだと感じています。

そのために私たちが取り組んでいるのが、「あきない特訓道場」です。
あきない特訓道場は“現代の戦略会議”
私たちの特訓道場では、同じ経営戦略(ランチェスター戦略)を学んだ仲間たちが、毎月集まり、年間計画を月ごとの行動にまで落とし込む作業を行います。
単なる勉強会ではありません。
「これまで何をやって、どんな成果が出たか」「来月、何をするか」
それを発表し、仲間からフィードバックをもらい、自分では見えない“盲点”に気づく場なのです。
まさに、“三人寄れば文殊の知恵”の現場です。
同じような立場の社長同士が、時に厳しく、時にあたたかく、お互いの未来を思って意見を交わす。その関係性が、ひとりの限界を超えさせてくれます。
12期参加者の声に現れた、学びと成長の実感
この13期も、無事に10ヵ月を終えることができました。
そして多くの参加者が、感慨深いふり返りの声を寄せてくださいました。
ある税理士事務所の代表はこう語ってくれました。
「6月から取り組みをまとめることができ、一歩ずつですが前に進めている実感がありました。仲間の取り組みが大変刺激になり、新しいアイデアも出てきました。次の時期にはさらにチャレンジしていきたいです。」
また、英語塾に特化したコンサルタントの方は、
「10ヵ月を振り返ることができたのは、参加していたからこそ。人間力が上がり、感性が磨かれる場でした。このような場をつくることこそ、コンサルタントの仕事だと感じました。」
そして最後には「もっともっと学びたい。それが今の正直な気持ちです。」と締めくくってくれました。
さらに、地域密着の工務店経営者からは、
「未来を見据えて計画を立て、お客様との関係をブラッシュアップしていく。そのために毎月の発表を自らの振り返りとし、仲間の意見を大切にしたい。自分自身が地域を守る存在になるように努力したい。」という前向きな声も届きました。
リーダーとは「受け入れる人」である
私はこれらの声を読みながら、あらためてこう感じました。
経営者にとって最も必要なのは、学び続ける姿勢と、自分と違う意見を受け入れる力だと。
羽柴秀吉は、誰よりも勝ち続けた武将です。しかしその勝利の陰には、黒田官兵衛や竹中半兵衛といった「違う目線をくれる右腕たち」がいました。
その死を悼んで涙を流し、「彼さえいれば怖くなかった」と語ったその姿に、私は「強さとは孤独な強がり」ではなく、「支えを受け入れる柔らかさ」であることを教えられた気がします。
社長は孤独である
でもだからこそ、“参謀”となる部下や税理士、右腕となる存在やメンターを持つことが、経営の安定と成長に直結します。
社外のアドバイザーとの関係の強化が特に効果的であるとの研究も存在します。
中小企業庁の調査では、経営者が社外からの意見を取り入れることで、問題解決能力の向上や新たな成長機会の発見につながるケースが多いことが確認されています。
具体的には、経営者が外部の視点を取り入れることで、業績向上や経営戦略の改革に成功している事例が多く報告されており、特に業務の効率化や人材育成において顕著な成果を上げている企業が多いとされています。
こうした取り組みは、企業文化の変革にも寄与し、社員の意識改革やモチベーション向上にもつながることが期待されています

三人寄らば文殊の知恵。
あきない特訓道場は、その知恵が交わされ、響き合い、形になる場です。
12期を終えた今、私は確信しています。
この道場がある限り、小さな会社の経営者は、決して一人ではないということを。
投稿者プロフィール

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1962年 大阪生まれ。1位づくり戦略コンサルタント。
立志立命式代表世話人。
中小企業に従事した自らの体験を踏まえ、コンサルタントとしてこれまで1300社以上の指導実績を持つ。
また豊富な現場経験から生み出された1位づくり戦略をはじめ多彩なテーマで年間100回以上のセミナーを行い、実践的かつ即効性がある好評を博している。
自ら主催する経営塾「あきない道場」には、全国からたくさんの経営者が参加。その理論を実践し短期間に多くの成功事例を生み出している。
著書には、『小さな会社★採用のルール』をはじめ、『「あなたのところから買いたい」とお客に言われる小さな会社』、『小さな会社☆No.1のルール』、『小さな会社☆集客のルール』、『スゴい仕掛け』など、いずれもAmazonカテゴリーで1位を獲得している。