「パインアメ」と聞けば、誰もがあの黄色いパッケージと独特の甘酸っぱさを思い浮かべるでしょう。しかし、この国民的なお菓子が長年愛され続ける背景には、巧みな戦略と、SNSを活用した効果的なマーケティング手法がありました。

今回、全国から多くの経営者が集まり、パインアメの会長である上田豊氏の講演を通じて、事業戦略の考え方やSNS活用、そして事業承継について学びました。
目次
パインアメとはどんな会社か?
パイン株式会社は、創業75年以上の歴史を持つ老舗菓子メーカーです。看板商品「パインアメ」は、独特の形と味、そして時代を超えて愛されるブランド力を持っています。
しかし、ただ長く続いているだけではありません。変わらないようで、変わり続ける柔軟な経営方針が、その人気の秘訣です。
「パインアメは、単なる飴じゃないんです。これは、思い出の味、みんなの記憶に残るブランドなんです。」と上田会長は語ります。
また、中小企業は独自のアイデアで価値を創造する知恵の勝負をしているのに対し、大企業はそれを模倣しようとする傾向があるという点も大きな違いです。
パインアメが出版したパインアメ物語という本には 昭和27年当時、「益々競争が厳しくなる業界で勝ち抜くためには、独自のアイディアが勝負となる。私たちにしかできない、他社に真似のできない高品質の商品をつくらなければならない」と書かれていました。
創業当時の看板には「多品種はできないが日本一のキャンディーを」というメッセージを掲げていたといいます。「よそにあるような商品は一切作らない。よそにないようなもんばっかり作るんです」上田会長の言葉が印象的でした。
この考え方は、SNSの活用とも一致します。SNSでは、大手企業のように巨額の広告費を投じなくても、ユニークなアイデアやストーリーで多くの人に届く可能性があるのです。

SNSを活用し、お金をかけずにブランドを広める
セミナーの中で、上田会長は 「中小企業と大企業の違い」 についても語りました。「大企業は金がある。でも中小企業は金がない。その代わり、知恵を絞ることができる」
大企業は 資本力 がありますが、中小企業は アイデアと機動力 で戦う必要があります。
特に、 「お金をかけずに認知度を高める」 ためには、 SNSの活用 が欠かせないという話が印象的でした。
上田会長はこう続けました。「昔はテレビCMを打たな売れへん時代でした。でも今はちがう。SNSをうまく使えば、お金かけずに広めることができますね」
つまり、 中小企業にとってSNSは、今後なくてはならないツール であり、それを活用できるかどうかが 企業の成長を左右する のです。セミナーの中盤では、パイン株式会社がどのようにSNSを活用し、広告費をかけずに認知度を飛躍的に向上させたのかを紹介してくれました。
ファンクラブを作る
「ファンが宣伝してくれるんですよ。これほど強いマーケティングはないでしょう?」と上田会長。同社は「パインアメ公式ファンクラブ」を立ち上げ、現在21万人以上のフォロワーを獲得しています。以前は、テレビCMや新聞広告が主なマーケティング手法でしたが、現在は SNSを通じた情報発信 が主流です。
特に X(旧Twitter)やInstagramでは、企業が消費者とダイレクトに対話できる環境 が整っています。
パイン株式会社では、SNSの担当者を配置し、 日々の投稿や消費者とのやりとりを細やかに行う ことでブランドの親しみやすさを強化しました。
また、消費者が自発的に投稿し、それが拡散されることで、広告費をかけずにブランド認知度を高めることに成功しました。「SNSは消費者との接点を作る場。うちのパインアメがどこでどんなふうに食べられてるかを知れるのも、SNSのおかげです」
消費者の声を商品開発に活かす
SNSを活用することで、消費者のリアルな声を直接拾い上げることができます。
パイン株式会社では、フォロワーからの意見をもとに 期間限定フレーバー を開発するなど、消費者参加型のブランド戦略を展開しています。
「お客さんの声を聞いて、商品の企画を作っています。それをSNSで発信して、またお客さんにフィードバックをもらう。この流れがブランドを育てると考えています」SNSの活用は単なる宣伝ではなく、 消費者との共創の場 へと進化しているのです。
コラボレーション戦略
パインアメは、他社とのコラボレーションを積極的に行っています。「うちはね、コラボが得意なんです。パインアメ単体じゃなくて、いろんな企業と一緒に価値を作る。お互いにとってWin-Winなんです。」
ユーザー投稿を活用する
「SNS時代っていうのはね、企業が広告を打つんじゃないんです。お客さんが宣伝してくれる時代なんです。」このように、SNSは中小企業にとって、知恵を活かして大企業に対抗できる強力な武器となるのです。
パインアメ会長が語る、事業承継の想い
「私の仕事は、ただ商品を売ることではない。次の世代にバトンを渡し、企業を未来へつなげることだ。ただ引き継ぐだけじゃダメなんです。未来を見据えて、どう変化するかを考えなきゃいけない。」強い思いを伝えてくれました。
パインアメ 上田豊会長は、若い社員向けに次のようなメッセージを伝えています。
これからわれわれは、菓子づくりを通して世の中の役に立とう。
お客様の喜びを我々の喜びとするために、お客さまに喜んで頂けるモノづくりに徹しよう。
その中でわれわれ自身を成長させよう。
できる。できる。できる。できる。
やろうとすれば必ずできる。自分を信じて、未来に挑もう
私の気づきと学び
このセミナーを通じて、私は改めて中小企業がどうして生き残っていくのかを深く考える機会を得ました。特に印象的だったのは、パインアメがブランドを絞り込み、特化し、そこから事業展開を行っている点です。「狭く深く、そして狭く深くから広く展開する」。これはまさにランチェスター戦略そのものです。こちらの動画もパインアメさんのことがよく分かる内容になっています。
阪神タイガース日本一で大注目!パインアメ誕生秘話
さらに、SNSの活用はまさに接近戦でもあります。お金をかけずに、直接ユーザーとつながり、共感を生み出し、ブランドを育てる。これは私たちのあるべき姿なのではないかと感じました。
私は今、事業承継を控えています。まだまだやらなければならないことが山積みですが、このセミナーでの学びを生かし、次世代に押し付けるのではなく、考えながら育てることの大切さを再認識しました。
だからこそ、社長は語ることが大切なのです。伝えることで、想いは次世代へとつながる。「語ることの大切さ」——この言葉を胸に、私自身の事業の未来を考えたいと思います。
最後に、上田会長、貴重なお話をありがとうございました。

投稿者プロフィール

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1962年 大阪生まれ。1位づくり戦略コンサルタント。
立志立命式代表世話人。
中小企業に従事した自らの体験を踏まえ、コンサルタントとしてこれまで1300社以上の指導実績を持つ。
また豊富な現場経験から生み出された1位づくり戦略をはじめ多彩なテーマで年間100回以上のセミナーを行い、実践的かつ即効性がある好評を博している。
自ら主催する経営塾「あきない道場」には、全国からたくさんの経営者が参加。その理論を実践し短期間に多くの成功事例を生み出している。
著書には、『小さな会社★採用のルール』をはじめ、『「あなたのところから買いたい」とお客に言われる小さな会社』、『小さな会社☆No.1のルール』、『小さな会社☆集客のルール』、『スゴい仕掛け』など、いずれもAmazonカテゴリーで1位を獲得している。