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佐藤元相のオフィシャルブログ

1位づくり戦略コンサルタント 佐藤 元相

下請け町工場は場当たり的な受注から脱却!後継者に選ばれる1位づくりの設計図

2代目社長からの相談

大阪にある金属加工業を営む町工場の社長から相談を受けました。

創業58年目で、現在の社員数は8名。社長は62歳の2代目ですが、後継者は決まっていません。

「私は2代目ですが、後継者を育ててこなかった。若い社員はいるものの、言われたことはやるが、それ以上のことは自分から考えて動かない。教育もしてこなかったので、私の責任ではありますが、今後が不安です。」

この会社は、かつて車業界の仕事をメインにしていましたが、ピーク時の売上の1/10まで減少しました。現在は、同業者からの下請けや、過去のご縁による紹介で仕事を受けていますが、安定した経営とは言えない状況です。

そんな中、新たな転機が訪れました。高齢で廃業する金属加工会社から生産設備を引き継ぎ、それに伴う仕事も受注することになったのです。

この会社が新たに取り組もうとしているのは、「薄い金属を加工する特殊技術」です。難易度が高く、簡単には真似できない分野であり、社長はこれを自社の強みとして活かせば、新たな市場を開拓できる可能性があると考えています。

しかし、それには明確な根拠がなく、あくまで感覚的なものにとどまっています。社長の期待値は高いものの、業界の情報や今後の展開についての知識が不足しており、不安を感じているのも事実です。

目の前の受注に飛びつくのではなく、今後の自社の戦略を明確にしなければ、単なる「なんでも屋」になってしまいます。もちろん、売上が不足している状況では仕方がない面もありますが、こうした場当たり的な対応を繰り返してきた結果が、現在の厳しい経営状況につながっていることを考えなければなりません。

だからこそ、今必要なのは「1位づくりの設計図」を持つことです。自社がどの分野で強みを発揮し、どの市場で1番を目指すのか。その方向性を明確にし、戦略的に行動することが、これからの事業の安定につながります。

日本の町工場が直面する後継者問題

中小企業庁の調査によると、日本の中小企業経営者の平均年齢は2023年には全国平均で63.8歳となっており、年々高齢化が進んでいます。さらに、経営者の年齢が70歳以上の企業のうち、約半数が後継者を決めていないというデータもあります。

中小企業経営者の平均年齢推移
出所:(株)東京商工リサーチ「2023年 全国社長の年齢調査」

後継者不在の理由としては、次のような要因が挙げられます。

  • 子どもが家業を継がない(他の職業に就いている、関心がない)
  • 従業員の中に経営を引き継げる人材がいない
  • 事業承継の準備を後回しにしてしまった
  • そもそも会社を存続させるべきか迷っている

後継者がいないことは、経営者自身だけでなく、取引先にも影響を与えます。発注側としては、将来の供給リスクを考慮し、長期的な契約を避けたり、別の安定した取引先を探したりする可能性が高くなります。そのため、町工場が事業を継続していくためには、後継者問題を放置するのではなく、具体的な対策を講じることが求められます。

後継者がいないことは発注側にとっても不安材料になります。長期的な取引を検討する企業ほど、「この会社は5年後、10年後も安定して製品を納められるのか?」と考えます。事業の継続性が不透明な会社には、大きな発注をしにくくなり、結果として受注が安定しない要因となります。

経営戦略の知識がなければ、生き残れない

町工場の経営者は、ものづくりの技術には投資をしてきました。しかし、経営の知識を学ぶ機会は極めて少なく、そこに投資をしてこなかったことが、価格競争に巻き込まれる大きな要因となっています。

経営者の多くは、最新の設備導入や工場の改善には積極的ですが、経営の仕組みづくりや戦略の構築にはほとんど目を向けてこなかったのが現状です。

しかし、これからの時代は、単に「良いものを作る」だけでは生き残れません。

  • どの分野で1位を目指すのか
  • どうすれば発注先から選ばれる会社になれるのか
  • 価格競争に巻き込まれず、適正な利益を確保するにはどうすればよいのか

こうした経営戦略を学び、実践していかなければ、厳しい市場環境の中で生き残ることはできません。

また、魅力ある会社をつくることが、後継者を育てるポイントにもなります。
経営が不安定で、将来が見えない会社には、誰も跡を継ごうとは思いません。逆に、経営が安定し、成長の方向性が見えている会社であれば、社員の中から「この会社を引き継ぎたい」と思う人材が出てくる可能性が高まります。

町工場が取り組むべきこと

① 価格競争からの脱却:自社の強みを活かす

小規模な町工場は、大手企業と競争するのではなく、小ロット・短納期・特殊加工など、大手が手を出しにくい分野で強みを持つことで、価格競争から抜け出すことが可能です。

② 受注を待つのではなく、自ら営業する

受注が減少する中、発注を待つだけではなく、ホームページや展示会を活用し、新たな取引先を開拓することが必要です。

まとめ:町工場の未来をつくるために

後継者がいないからといって諦める必要はありません。今からできることを一つずつ実行し、会社の未来を切り開いていきましょう。

  • 経営戦略の知識を学び、会社を成長させる
  • 受注機会を増やす営業戦略を立てる
  • 魅力ある会社をつくり、後継者が育つ環境を整える

小さな町工場は可能性に満ちています。技術や人材は日本の宝だと私は信じています。
今こそ行動を起こし、町工場の未来を守るための第一歩を踏み出しましょう。

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投稿者プロフィール

佐藤元相
佐藤元相
1962年 大阪生まれ。1位づくり戦略コンサルタント。
中小企業に従事した自らの体験を踏まえ、コンサルタントとしてこれまで1300社以上の指導実績を持つ。
また豊富な現場経験から生み出された1位づくり戦略をはじめ多彩なテーマで年間100回以上のセミナーを行い、実践的かつ即効性がある好評を博している。
自ら主催する経営塾「あきない道場」には、全国からたくさんの経営者が参加。その理論を実践し短期間に多くの成功事例を生み出している。

著書には、『小さな会社★採用のルール』をはじめ、『「あなたのところから買いたい」とお客に言われる小さな会社』、『小さな会社☆No.1のルール』、『小さな会社☆集客のルール』、『スゴい仕掛け』など、いずれもAmazonカテゴリーで1位を獲得している。
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