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佐藤元相のオフィシャルブログ

1位づくり戦略コンサルタント 佐藤 元相

「現場に追われて経営を学ぶ余裕がない…」後継者を育てる先行投資時間とは?

あるエクステリア店の経営者から「後継者に現場を学ばせているが、現場が忙しくなって経営を学ぶ時間が取れない」…と、相談を受けました。詳しく聞いてみると、「後継者にはまず3年間、しっかり現場を経験させた。

施工の技術も覚え、職人やお客様との関係も築けてきた。次は経営を学ばせたいと思っているが、現場が忙しすぎて時間が取れない。人手不足もあり、現場を離れることができない。いつか学ばせたいとは思っているが、なかなかできない。このままで大丈夫だろうか?」というのです。

後継者育成で、この悩みは、多くの中小企業でよくある問題です。

「まずは現場を学ばせる」という方針自体は決して間違いではありません。
しかし、現場が忙しすぎると、いざ経営を学ばせようとしても 「時間がない」「余裕がない」 という状態に陥ってしまいます。

このままでは、後継者は 「現場の責任者」にはなれても、「経営者」としての能力を高める機会を失ってしまう可能性があります。

では、どうすれば 「現場を回しながら、経営も学ぶ」 ことができるのか?
その答えが 「先行投資時間を確保し、共通言語を持つこと」 です。


仕事と経営は別物—現場経験だけでは経営者にはなれない

後継者の教育では、「現場を覚えたら経営もできるようになる」と考えがちですが、実際にはそう簡単ではありません。
現場と経営では、求められる視点が大きく異なります。

仕事(現場)経営(会社全体)
施工の技術を学ぶどこで1位になるのか?特定分野の決定
材料の発注をするライバルとの差別化対策を考える
職人との関係を築くお客さまの声を聴き独自の価値をつくる
お客様と打ち合わせをするエリアを絞りマーケティングの仕組みをつくる
施工ミスを防ぐ事業の未来を描く(5カ年計画づくり)

この違いを理解せずに、「まずは現場を3年やってから」と考えると、次のような問題が起こります。

1. 現場が忙しくなり、結局経営を学ぶ時間が取れない
仕事に追われるうちに、「今は経営を学ぶ余裕がない」となり、いつまでたっても学べない。

2. 「仕事ができる=経営ができる」と錯覚する
現場の仕事をこなせるようになったことで、「自分は会社を回せる」と思い込み、経営の本質を学ぶ機会を失う。

3. 経営戦略の知識がないまま引き継ぐと、会社が成長しにくくなる
経営戦略の知識がないまま経営を引き継ぐと、感覚で経営してしまい、経営判断を誤るリスクが高まる。

このような問題を避けるためには、「現場の経験」と「経営の学習」を並行して進める」 ことが必要です。


先行投資時間を確保し、共通言語を持つ

① 先行投資時間として、労働時間の10%を「学びの時間」にする
経営を学ぶには「時間」が必要です。
しかし、日々の業務の中で学びの時間を自然に確保するのは難しい。

そこで、「先行投資時間」として、労働時間の8%〜10%を経営学習に充てる ことが重要になります。

例えば、

  • 1日8時間労働なら、週に約3.5〜4時間を学びの時間にする
  • 1ヶ月に2回、半日(4時間)を戦略時間として確保する

これは 「今の仕事を止めてでも、未来の経営者を育てる投資」 です。


② ランチェスター戦略を共通言語にする
仕事には、それぞれ専門用語があります。例えば、

  • 鳶職や大工は尺貫法(寸・尺・間)を使う
  • 現場ではメートル法(cm・m)が使われる

このように、共通の言語があるからこそ、意思疎通ができる のです。
事業戦略でも専門用語があり、後継者がこれらを理解しなければ、適切な意思決定ができません。
そこで、共通言語として 「ランチェスター戦略の5大戦略」 が最適な知識であると考えています。


③ ランチェスター戦略の5大戦略を学ぶ

ランチェスター戦略の5大戦略は特定分野で1位を目指すための基本戦略です。

  1. 目的・目標を定める → 会社がどこを目指すのかを明確にする
  2. 営業エリアを絞る → エリアを絞り、勝てる地域に集中する
  3. 客層を決める → 理想の客層を決めて一番に選ばれるような取り組みを行う
  4. 商品の差別化を行う → 価格ではなく、自社独自の価値で差別化する
  5. 新規開拓とリピートの仕組みをつくる → 継続的に売上を伸ばすための仕組みを整える

この5つの戦略を共通言語にすることで、後継者が経営の意思決定をスムーズに行えるようになります。


まとめ 社長の役割は「後継者に先行投資時間と共通言語を与える」こと

① 先行投資時間として、労働時間の10%を経営学習に充てる(1ヶ月に2回、半日を確保)
② 共通言語としてランチェスター戦略を学ぶ(専門用語を理解し、意思決定の精度を上げる)
③ ランチェスター戦略の5大戦略を実践する(目的・エリア・客層・差別化・リピート戦略)

「学ぶ時間がない」のではなく、「学ぶ時間を先に確保する」ことが、後継者を真の経営者へと育てる鍵になります。

今すぐ、スケジュールに「先行投資時間」として経営学習の時間を確保しましょう!

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投稿者プロフィール

佐藤元相
佐藤元相
1962年 大阪生まれ。1位づくり戦略コンサルタント。
中小企業に従事した自らの体験を踏まえ、コンサルタントとしてこれまで1300社以上の指導実績を持つ。
また豊富な現場経験から生み出された1位づくり戦略をはじめ多彩なテーマで年間100回以上のセミナーを行い、実践的かつ即効性がある好評を博している。
自ら主催する経営塾「あきない道場」には、全国からたくさんの経営者が参加。その理論を実践し短期間に多くの成功事例を生み出している。

著書には、『小さな会社★採用のルール』をはじめ、『「あなたのところから買いたい」とお客に言われる小さな会社』、『小さな会社☆No.1のルール』、『小さな会社☆集客のルール』、『スゴい仕掛け』など、いずれもAmazonカテゴリーで1位を獲得している。
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