
こんにちは!1位づくり戦略コンサルタント 佐藤元相です。
前回の工場視察勉強会の続きです。今回は、パイン株式会社 滋賀工場で行われた勉強会で、上田豊会長が語られた「社長の仕事」「人を育てる経営」「時代を読む力」についての講話をまとめました。
上田会長は、経営者としての視点だけでなく、働く人一人ひとりの気持ちを大切にする姿勢を、穏やかな語り口で伝えてくださいました。

目次
「やがてテレビを観なくなる」 ― SNSの時代を見通していた
上田会長は講話の中で、「やがてネットの時代が来る」と語られました。
「これからは、テレビを観なくなる時代が来ると思っていました。
企業が伝えたいことを伝える方法が、変わると感じていたんです。」
テレビ広告の時代から、SNSやインターネットを通して情報が広がる時代へ。
その変化を、上田会長は早い段階から感じ取っていたといいます。
「SNSの時代になる。個人が発信して、個人が影響を持つようになる。
だからこそ、会社も“個の力”を大切にしなければいけない。」
井守広報部長がSNSでお客さまとのつながりを築いたことも、
上田会長は「時代の流れをとらえた素晴らしい取り組み」と評価しました。

「社長の仕事は、未来を描くこと」
講話の中で、上田会長ははじめにこう話されました。
「社長の仕事とは何かと聞かれたら、私は“未来を描くこと”だと思っています。会社をどんな方向へ導くのか、その姿を社員に見せるのが社長の役目です。」
売り上げや利益といった数字の目標ももちろん大切だと前置きしたうえで、上田会長は「しかし、それだけでは人は動かない」と続けました。
「人が本当に動くのは、数字ではなく“気持ち”です。
ワクワクするような未来、これをやってみたいと思える希望を見せること。それが社長の一番大事な仕事です。」
「売上げよりも、お客さまに喜ばれる会社を」
上田会長は、「売上げを追うこと」と「お客さまに喜ばれること」の違いについても語りました。
「売上げを上げることは大事です。でも、それだけを追いかけるのは違います。
お客さまに喜んでもらうために、どんな会社でありたいかを描くことが大切です。」
つまり、数字を“結果”として見るのではなく、
「お客さまに喜んでいただくための姿勢」が“目的”であるということです。
「“もっと売るために”ではなく、“もっと喜んでもらうために”。
そのために会社はどう変わるべきかを考える。
社長は、その未来を描いて見せることです。」
パイン株式会社が70年以上続いてきた背景には、
この「お客さまの笑顔を中心に置く経営」が根づいていることがうかがえます。

「人の強みを活かし、弱みは見逃す」
上田会長は、経営における「人の見方」についても語られました。
「人はみんな違います。
強いところを見つけて、そこを伸ばしてあげてください。
弱いところは、見逃してあげていいんです。」
すべての人に完璧を求めるのではなく、
それぞれが持つ“得意”を活かすことが、組織の力になると話しました。
「全部ができる人はいません。
だからこそ、足りないところを補い合うチームをつくることが大切です。」
この言葉には、会長が長年現場で人と関わってきた中で得た経験がにじんでいます。
社員一人ひとりの個性を認め、強みを活かす――それが「人を育てる経営」です。
「問題はチャンス」 ― 変化を恐れずに進む
講話の中で、上田会長は会社が長く続くために大切な考え方として、
「問題はチャンス」という言葉を紹介しました。
「何か問題が起きたときは、チャンスが来たと思うことです。
そこから新しいアイデアが生まれ、人が成長します。」
上田会長によれば、問題がない会社は「止まっている会社」です。
課題や失敗があるということは、挑戦している証拠。
大事なのは、失敗を恐れず、次にどう生かすかを考えることだと強調しました。
「トラブルを責めるより、次にどう変えるかを一緒に考える。
それが人を育てるということです。」
滋賀工場の現場でも、社員一人ひとりが考え、提案する文化が根づいており、上田会長はその姿勢をとても誇りに思っていると語りました。
「会社は人の集まり」
上田会長は、経営を「人の集まりを育てる仕事」と表現しました。
「会社は建物や機械でできているように見えますが、
本当は“人”でできています。人が育たないと、会社も育たない。」
社員が成長し、仕事にやりがいを感じることが、最終的には会社の成長につながるという考え方です。
「人が働く喜びを感じられる会社にしたい。そうすれば自然と数字はついてきます。」
売上や利益を追う前に、社員が気持ちよく働ける環境をつくること。
それが社長の最も大切な責任だと語りました。
「理科の実験室のような工場に」
滋賀工場についての話では、上田会長は次のように話されました。
「滋賀工場は、理科の実験室のような場所にしたかったんです。
失敗を恐れず、やってみようと声を掛け合える職場。
問題が起きたら、なぜ起きたかを一緒に考える。
そういう現場をつくりたかった。」
実際に滋賀工場では、社員が自ら改善点を見つけ、提案し、それを会社がすぐに採用することも多いそうです。
「上から命令するのではなく、社員が自分の頭で考えて動けること。
それが強い会社をつくる力になります。」
「数字を追うだけではなく、希望を見せる」
講話の最後に、上田会長はもう一度、社長の役割について話されました。
「会社を続けていくには、もちろん数字の目標も必要です。
でも、数字だけを追いかけていると、人の心がついてこなくなります。
社長は、数字の先にある“希望”を見せなければいけません。」
社員が「自分たちは何のために働いているのか」を感じられるように。
そのために社長は、感動、ワクワクするような未来を描く必要があると語りました。
「目の前の売上よりも、未来の希望を。
その希望を語るのが、社長のいちばん大切な仕事です。」
まとめ ― “人の力と希望”で進むパイン株式会社
上田会長の講話から学べることは、次の3点に集約されます。
- 時代を読む力
テレビからSNSへ。変化を恐れず、早く気づき、動く。 - 人を信じる力
社員一人ひとりの強みを活かし、弱みは責めずに支える。 - 希望を描く力
数字よりも、お客さまと社員が“喜び”を感じる未来を見せる。
「問題はチャンス」「人を信じる」「希望を描く」
この3つの言葉が、上田会長の経営哲学を表しています。
70年以上続くパイン株式会社の強さは、
時代を読み、人を信じ、未来を描くこの姿勢にあると感じられました。

※本記事は、パイン株式会社 滋賀工場で行われた勉強会における
上田豊会長の講話内容をもとに構成しています。
投稿者プロフィール

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1962年 大阪生まれ。1位づくり戦略コンサルタント。
立志立命式代表世話人。
中小企業に従事した自らの体験を踏まえ、コンサルタントとしてこれまで1300社以上の指導実績を持つ。
また豊富な現場経験から生み出された1位づくり戦略をはじめ多彩なテーマで年間100回以上のセミナーを行い、実践的かつ即効性がある好評を博している。
自ら主催する経営塾「あきない道場」には、全国からたくさんの経営者が参加。その理論を実践し短期間に多くの成功事例を生み出している。
著書には、『小さな会社★採用のルール』をはじめ、『「あなたのところから買いたい」とお客に言われる小さな会社』、『小さな会社☆No.1のルール』、『小さな会社☆集客のルール』、『スゴい仕掛け』など、いずれもAmazonカテゴリーで1位を獲得している。



