今回は、
「社員を育てるとは、どういうことなのか」
について考えてみたいと思います。

製造業や工務店の社長から、
「若い社員がなかなか育たない」
「もっと自信を持って仕事をしてほしい」
「言われたことはするけれど、もう少し自分から挑戦してほしい」
そんな話を聞くことがあります。
私も経営者なので、その気持ちはよく分かります。
しかし今回、長崎県対馬市にある対馬ビルサービスで行った話し方セミナーを通じて、改めて感じたことがあります。
社員を育てる時に大切なのは、できないところばかりを見ることではない。
その人のできることに気づく。
本人自身にも、それに気づいてもらう。
そして、
「自分はできる」
「自分はやれる」
と思えるようになること。
人が成長していく上で、この感覚はとても大切なのではないかと思っています。
それでは詳しくご紹介します。
目次
国境の島・対馬で行った話し方セミナー
今回、私が関わらせていただいている対馬ビルサービス様は、対馬で公共インフラを支える仕事をしています。
建物を守る。
設備を守る。
電気や空調など、人々の暮らしに必要な環境を守る。
地域の「当たり前」を支えている会社です。
対馬ビルサービスの社長は、社員教育をとても大切にされています。

その根底には、
「社員の成長が会社の成長につながる」
という考えがあります。
若手、中堅、リーダー、ベテランのスタッフが一緒になって学びました。
今回お伝えするのは、その第5講。
最終講でのお話です。
私は皆さんの発表を聞きながら、
「話し方が上手になったな」
ということ以上に、嬉しく感じたことがありました。

それは、
スタッフたちが、
自分自身の成長を、自分自身の言葉で語り始めていたこと
です。
「私は逃げません」
ある中堅スタッフは、最終発表でこう話しました。
この話し方セミナーが始まった時、
正直、
「嫌だな」
と思っていたそうです。
人前に立って話すことに不安があった。
「ちゃんと伝わるかな」
「こんな話し方でいいのかな」
そんな思いがあったそうです。
しかし、学びを重ねる中で少しずつ変わっていきました。
準備をすれば話せる。
やってみればできる。

そして実際に、対馬商工会議所青年部の主張大会にも挑戦しました。
県大会では2位という結果も出しました。
そのスタッフが、最後に言いました。
「私は逃げません。」
そして、
「役割が来たということはチャンスだと思って、その責任を全うできる人間でありたい」
と話してくれました。
私はこの言葉を聞きながら、
「ああ、人が成長するって、こういうことなんやな」
と思いました。
最初は、「嫌だ」と思っていた。
「できるかな」と不安だった。
それが最後には、「私は逃げない」という言葉に変わった。
私は、話し方が上手になったということ以上に、この変化に大きな意味があると思いました。
「自分はできる。やれる」と思える自分をつくる
今回の最終講で、私が何より大切にしたかったことがあります。
それは、
「自分はできる」
「自分はやれる」
と思える自分をつくることです。
人は、自分のできないところをよく知っています。
人と比べて、できない自分を評価してしまいます。
でも今回、私は皆さんに、
できないことではなく、
自分がすでにできていることにも目を向けてほしい
と思って伝えました。
研修の中で、
「自分で決めて、続けていることは何ですか」
ということを考えてもらいました。
資格の勉強を続けている。
毎朝、決めた時間に起きている。
自分で決めたことを続けている。
本人からすれば、
「そんなの普通です」
と思うことかもしれません。
でも、
自分で決めたことを続けている。
それは、その人がすでに持っている力です。
私は、
そういう自分自身に気づいてほしいと思いました。
そして、
「自分、できている」
と思ってほしい。
自分のできることを、自分で認めてほしい。
自分を少し褒めてあげてほしい。
そこから、
「じゃあ、もう一回やってみよう」
という気持ちが生まれてくるのではないかと考えています。
短所はなくさなくてもいい
私は、人は短所をなくさなくてもいいと思っています。
苦手なことを克服して、
何でもできる人になる必要もない。
その人には、その人の良いところがあります。
その人にしかないものがあります。
私は、
「変わらなくてもいい。成長すればいい」
と思っています。
別の誰かになる必要はありません。
今の自分を否定して、
新しい人間になるのではない。
今の自分を土台にして、
自分の良いところを少しずつ伸ばしていく。
それでいいと思っています。

じつは、私は、中学生の頃から、
人と同じところで競うより、
自分の良さを活かせるところはどこだろうと考えてきました。
人には、それぞれ違いがあります。
得意なことも違います。
育ってきた環境も違います。
経験も違います。
みんな同じ人間になる必要はないと思うのです。
社員教育も同じではないでしょうか。
「ここが足りない」
「これができていない」
と、足りないところだけを見るのではなく、
この人の良いところは何だろう。
この人は何ができるのだろう。
どこを伸ばせば、この人らしさがもっと活きるのだろう。
そういう目で人を見る。
私は、それが人を育てる上でとても大切なことだと思っています。
「間違えたらどうしよう」から変わった言葉
別の若手スタッフの言葉も印象に残りました。
そのスタッフは、もともと人前に出ることは好きだったそうです。
しかし、話すとなると、
「間違えたらどうしよう」
という不安があったと言います。
ところが研修を重ねる中で、
考えることが変わってきました。
「どうしたら、みんなが笑って聞いてくれるのかな」
「どうしたら、楽しんで聞いてくれるのかな」
と考えるようになったそうです。
私は、この言葉を聞いて、自信を持つということは、単に堂々と話せるようになることではないと思いました。
最初は、
「自分が間違えないか」
「自分が失敗しないか」
というところに意識が向いていた。
それが少しずつ、「相手はどう感じるだろう」というところへ変わっている。
自分に少し自信が持てるようになると、自分のことだけでいっぱいだった状態から、
少し周りを見ることができるようになるのかもしれません。
私は、そこにも人の成長を感じました。

話し方は、自分を知る学びでもある
私自身、話し方について20年間学んできました。
最初の10年間は、木下道之先生が主宰されていたコトハナセミナーで学びました。
その後、私自身も10年間インストラクターとして活動しました。
もともと私は町工場で働いていました。
将来、人前に立って話をしたり、人に教えたりする仕事をするとは考えていませんでした。
しかし、話し方を学ぶことで、自分の世界は大きく広がりました。
20年間学んできて思うのは、
話し方とは、
単に上手にしゃべるための技術ではないということです。
自分を知る。
人を知る。
相手の話を聞く。
自分の思いを言葉にする。
そして、
「自分はどうありたいのか」
を考える。
今回の対馬ビルサービスの皆さんの発表を聞きながら、そのことを改めて感じました。
人前で話すことを通して、
自分自身を見つめる。
過去を振り返る。
今の自分を見る。
そして、
「これからどうありたいのか」
を考える。
話し方を学びながら、
実は自分自身について学んでいるのだと思います。
「今度は、自分が後輩に教えたい」
そして、もう一人。
私は、この若手スタッフの言葉が特に心に残りました。
そのスタッフは一時期、会社を休んでしまったことがあったそうです。
その後、会社に戻りました。
先輩と一緒に仕事をする中で、
自分が休んで迷惑をかけたにもかかわらず、先輩は以前と変わらず仕事を教えてくれた。
その時、
「このままじゃいけない」
と思ったそうです。
そして、第二種電気工事士の資格取得に挑戦しました。
資格を取得し、できる仕事も増えていきました。
その彼が最後に、
こう話してくれました。

「今まで教えてもらってきたので、今後、新しい後輩が入った時には、自分が教えるように頑張りたいです」
私は、この言葉を聞いて本当に嬉しくなりました。
教えてもらう人だった。
支えてもらう人だった。
その人が、
「今度は自分が教えたい」
と言っている。
そこには、
「自分にもできることがある」
という感覚が芽生えているように私は感じました。
自信とは、何でもできると思うことではない
私は、自信とは、
「自分は何でもできる」
と思うことではないと思っています。
できないこともあります。
失敗することもあります。
迷うこともあります。
でも、
「自分にもできることがある」
「一回やってみよう」
「失敗しても、またやればいい」
と思えること。

それが、
自分を信じるということではないでしょうか。
「できるか、できないか」
だけではなく、
「やってみようと思える自分でいられるか」
私は、そこが大切だと思っています。
社員本人より先に、可能性を見る
社員本人がまだ、
「自分には無理です」
と思っている時があります。
そんな時に、
誰がその人の可能性を見るのか。
私は、社長や上司の関わりも大きいと思っています。
「まだできてへんやん」
だけではなく、
「ここはできるようになったな」
と見る。
「大丈夫か?」
だけではなく、
「一回やってみたらええやん」
と声をかける。
本人がまだ気づいていない成長を、
周りが先に見つけてあげる。

人は、
誰かに信じてもらった経験から、
自分自身を信じられるようになることもあると思っています。
私は、
人を信じることには力がある
と思っています。
「あなたならできる」
「大丈夫や」
そう言ってもらえる人がいる。
失敗しても見放されない。
また挑戦できる。
そんな関係の中で、人は少しずつ前へ進めるのではないでしょうか。
社員教育とは、
知識を教えることだけではない。
その人が自分自身を信じられるようになるまで、
その人の可能性を信じて関わること。
それも大切な教育だと私は思っています。
まとめ
今回、対馬ビルサービスの話し方セミナーを通じて、改めて感じたことがあります。
人を育てる時、
できないところばかりを見るのではなく、
その人のできることを見る。
続けていることを見る。
挑戦したことを見る。
少しずつ成長しているところを見る。
そして本人自身が、
「自分はできる」
「自分はやれる」
と思えるようになる。
その自信が、「もう一回やってみよう」という一歩につながっていく。
短所を全部なくさなくてもいい。
別の誰かにならなくてもいい。
変わらなくてもいい。成長すればいい。
自分の良いところを見つけ、それを少しずつ伸ばしていく。
私は、そんな社員教育を大切にしたいと思っています。

明日からできること
明日、スタッフ一人に聞いてみてください。
「最近、自分で成長したと思うことは何?」
もし、
「分かりません」
「特にないです」
という答えが返ってきたら、
あなたのほうから一つ伝えてみてください。
「前より、ここができるようになったな」
「最近、この仕事を任せられるようになったな」
「それ、ええやん」
大きな成果でなくてもいいと思います。
本人がまだ気づいていない「できる」を、周りが見つけて伝える。
その小さな積み重ねが、「自分はできる」という感覚につながっていくのではないでしょうか。

次回予告
「自分で決める」から、社員は動き始める
与えられた目標から、自分の意志で動く社員へ
第2回では、
「自分はできる」という自信を持った人が、
次に、
自分の未来を考え、
自分で決め、
自分の意志で一歩を踏み出していくことについて考えます。

社員育成について、一緒に考えてみませんか
「若い社員に、もっと自信を持ってほしい」
「社員が自分の良さに気づけるような研修をしたい」
「技術だけではなく、人としても成長できる機会をつくりたい」
そんなことを考えておられる社長や研修担当者の方へ。
私は、研修とは知識や技術を教えるだけのものではないと思っています。
一人ひとりが、
「自分はできる」
「自分はやれる」
と思えるようになること。
自分の良さに気づき、少しずつ自信を持ち、次の一歩を踏み出せるようになること。
そんな社員教育を、会社の状況に合わせて一緒に考えています。
「うちの社員には、どんな研修が合うだろう」
という段階でも構いません。
社員育成について気になっていることがあれば、お聞かせください。
研修についてのご相談はこちらから
https://www.nna-osaka.co.jp/contactus/
投稿者プロフィール

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1962年 大阪生まれ。1位づくり戦略コンサルタント。
立志立命式代表世話人。
中小企業に従事した自らの体験を踏まえ、コンサルタントとしてこれまで1300社以上の指導実績を持つ。
また豊富な現場経験から生み出された1位づくり戦略をはじめ多彩なテーマで年間100回以上のセミナーを行い、実践的かつ即効性がある好評を博している。
自ら主催する経営塾「あきない道場」には、全国からたくさんの経営者が参加。その理論を実践し短期間に多くの成功事例を生み出している。
著書には、『小さな会社★採用のルール』をはじめ、『「あなたのところから買いたい」とお客に言われる小さな会社』、『小さな会社☆No.1のルール』、『小さな会社☆集客のルール』、『スゴい仕掛け』など、いずれもAmazonカテゴリーで1位を獲得している。



