甘い香りの中のほろ苦い思い出

こんにちは！内勤営業育成専門コンサルタントの藤原紀子です。

金木犀の甘い香りが風に乗ってふわりと広がる季節になると小学校1年生の頃の出来事を、今でも鮮明に思い出します。

私が子供の頃に住んでいた2階建てのアパートは、緩やかな傾斜の大きな青いトタンの屋根がひさしのように張り出していました。晴れた日の日曜日には、そのトタン屋根の上に布団を干して、姉や弟と寝転がったりしていました。

隣接する大家さんの庭に、立派な金木犀の木がありました。その木が秋になると黄色い花でいっぱいになり、窓を開けると甘い香りが漂ってきました。私は、どうしてもその香りが欲しくて、道具箱からハサミを取り出し、しゃがんだまま屋根の先端へ向かいました。

屋根の下から母の踏むミシンの音がダダダダ～と響く中、左手を伸ばし金木犀の枝を掴みました。細い枝をハサミでそっと挟むと思ったより簡単に切ることができました。もう少しと枝をパチンパチンと切っていると、下から「こらっ！」と大きな声が聞こえました。

私は慌てて部屋へ戻り、切った枝とハサミを持ったまま、息をひそめていました。しばらくするとトントンと階段を上がる音が聞こえて、心臓がバクバクして痛いくらいでした。

目の前に現れたのは母でした。「びっくりした～、大家さんが来たかと思った」と体の力が抜けました。母に「他所の木を勝手に切ったらダメでしょ！」と叱られましたが、私は「あんなにミシンの音が大きかったのに、枝を切る音が聞こえるとはビックリ！」なんて思っていました。

でもその後に「滑って落ちたらどうするの」と言う母の言葉を聞いた瞬間、胸の奥がゾクっとして、母に心配をかけたことに気が付きました。花瓶に金木犀を飾ってもらい、その甘い香りに包まれながら、なんとも言えない気持ちで膝を抱えて座っていました。

甘い香りの中のほろ苦い思い出。今でも私の心に刻まれています。

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