ランチェスター研修会社 NNAで内勤営業・インサイドセールスの育成を行う藤原紀子です。

小学校3年の頃、父が小さなラジカセと一本のカセットテープを持ち出してきました。
デープをセットして再生ボタンを押すとテープが回り始め、そこからは幼い頃の私と姉の歌声が流れ出しました。

｢あーおい あーおい空だよ、くーものない空だよ」と楽しそうに歌う私たちの声。

突如として、「胸〜ぇに付け〜てる、ま～ぁくは流星〜」とウルトラマンの歌を力を込めて歌う私の声が聞こえてきました。私の歌に合わせて姉も歌い始めます。すると私は「姉ちゃんが歌うと分からんようになる！」と、文句を言っていました。

母の笑い声も聞こえました。
こんなのを録音してくれていたんだと笑いながら何度も聞いていました。

ある時、姉が「ラジカセが欲しい」と母にねだり、二人で買いに出かけて行きました。

しばらくして帰ってきた母が「はい！これ」と箱に入ったラジカセを私に渡してくれました。｢私も欲しい」と言い出せなかった私に買ってきてくれたのは、真っ赤な可愛いラジカセでした。

早速、歌謡曲を録音しようと唯一持っていた姉と私の歌声が入っているテープのＢ面に録音することにしました。テレビの前に座り、ラジカセをテレビに近づけて持ち、録音のボタンを押しました。

再生すると大好きな歌が流れてきました。ところがテープを裏返しても姉と私の幼い頃の歌声が聞こえてきません。「うそっ！」と早送りしたり巻き戻したりして確認しましたが、私たちの歌声は戻ってきませんでした。

私は、この失敗を誰にも言えずに、ただ心の中で後悔するばかりでした。

今でも、あのテープが聞きたいと思うことがあります。上書きしてしまったことが残念でたまりません。でも、二度と聞くことができないからこそ、あの歌声や笑い声をこんなに鮮明に覚えているのだと思います。

とても苦い思い出ですが、両親が残してくれたあたたかな時間の記録と、それを聞いて楽しんでいた瞬間が今でも色鮮やかに心に残っています。