今回のお話は、製造業における「通信を使ったお客さまとの関係づくり」についてです。
商品を売り込むのではなく、社長の体験や感じたことを伝え、共感を育てていく。
株式会社三好キカイの三好公一社長が毎月発行している「みよし通信」の実践から、その価値を考えてみたいと思います。

それでは詳しくご紹介します。
目次
通信は、一度できたご縁を育てる営業活動
展示会で名刺交換をした。
一度、仕事をさせてもらった。
経営者の集まりや勉強会で出会った。
そのときは会話が弾んでも、何もしなければ相手との関係は少しずつ薄れていきます。
特に製造業では、出会った相手がすぐに仕事を依頼してくれるとは限りません。
半年後、1年後、数年後に、初めて困りごとが生まれることもあります。
そのときに、「あの会社へ相談してみよう」と思い出してもらえるかどうか。
ここに、通信の大きな役割があります。
通信であれば、会えない間にも、社長や社員の近況、仕事への思い、現場での取り組みを届けられます。
実際に通信を継続している会社には、問い合わせや工場見学の依頼が入っています。
通信で出展を知り、展示会のブースへ来てくださる方もいます。
何年も前に仕事が終わっていた会社から、久しぶりに相談が入り、新しい受注につながることもあります。
通信は、一度できたご縁を切らさず、必要なときに思い出してもらうための営業活動です。

みよし通信は128号を迎えた
三好キカイの「みよし通信」は、現在128号を数えます。
毎月欠かさず発行し、お客さま、友人、銀行、関係先など、三好社長とご縁のある方へ届けています。
三好キカイのモットーは、「つながりをより大切に」です。
紙面にも、「三好キカイと何かのご縁が有った方にお渡ししている通信誌です」と記されています。
LINEで送る。
メールに添付する。
会った方へ手渡しする。
相手との関係に合わせ、さまざまな方法で届けています。
128号という数字は、一度つくって終わりではなく、長く続けてきた証しです。
通信の目的は、相手と仲良くなること
私は、あきない接点道場で、製造業や工務店、サービス業の経営者やスタッフに、通信づくりのノウハウを伝え、実践してもらっています。
最初に伝えているのは、通信の目的は商品を売り込むことではないということです。
目的は、相手との人間関係をつくることです。
自分たちのことを知ってもらう。
相手との距離を少しずつ縮める。
そして、共感を得ることです。
「この人の話は面白いな」
「何かあったら相談してみよう」
そう思ってもらえる関係を育てることが、通信の大きな役割です。

田植えより印象に残った、仲間の姿
みよし通信第127号のテーマは、「田植えより印象に残ったこと」でした。
三好社長は、農家の方の厚意で田植えを体験しました。
参加者は17人。子どもたちも参加し、にぎやかな一日になりました。
田植えの後には、初開催の「どろんこ運動会」が行われました。

最終種目のチーム対抗リレーで、三好社長はゴール直前に足を滑らせ、顔面から田んぼへダイブしました。
泥だらけになって立ち上がると、後ろのポケットに入れていたスマホがありません。
運営の方が参加者へ呼びかけると、全員が田んぼの中へ入り、自分のスマホを探すように泥の中を一緒に探してくれました。
なかなか見つからず、全員でローラー作戦をしようかと話していたとき、仲間のせいやさんがスマホを見つけました。
三好社長の心に最も残ったのは、スマホが見つかったことだけではありません。
誰一人「自分には関係がない」と思わず、一緒に探してくれた仲間の姿でした。
この体験から、三好社長が何に感動し、どのような人とのつながりを大切にしているのかが伝わります。
これが、その人ならではの通信です。

同じ出来事でも、体験を観る人の感性によって表現が変わる
通信では、珍しい出来事だけを書く必要はありません。
大切なのは、現場で起きたことを、自分がどのように観て、何を感じたのかを書くことです。
人はそれぞれ、持っている知識や経験、育ってきた環境が違います。
同じ出来事を経験しても、感じることは一人ひとり異なります。
ある人は子どもの頃の自分と今との違いを感じる。
ある人は仲間が力を合わせる姿に、人との絆を感じる。
ある人は親子の関係に愛を感じる。
その違いが、独自性であり、個性です。
私は仕事上の出来事に出会うと、「ランチェスター戦略の視点から観ると、どうだろうか」と考えることがあります。
プライベートでは、戦国時代の武将の生き方と重ねて考えることもあります。
体験は、どの視点から観るかによって、同じ体験から見えてくる意味が変わります。
その人の体験を通して語られる話は、ほかの人には書けません。
つまりそれが、唯一無二の存在なのです。

お客さまの反応が、次の通信を育てる
三好社長は、通信を届けた後、お客さまや友人から寄せられた反応を、毎回私に届けてくれます。
第127号にも、たくさんの声が集まりました。
「田んぼでの状況が目に浮かび、ほっこりします」
「大地とつながって、みんながつながって、最高の体験ですね」
「8月号も楽しみにしています」
自分の田植えや茶摘みの体験、子どもの頃の思い出を返してくださる方もいました。
通信を読んだ方が自分の体験を思い出し、その気持ちを三好社長へ返してくれる。
一方的なお知らせではなく、人と人との対話が生まれています。
三好社長は、どの話に興味を持ってもらえたのか、どの場面に共感が集まったのかを読み取り、次に書くテーマを考えています。
通信を送る。反応が届く。声を読み取る。次の通信へ生かす。
この循環によって内容が磨かれ、人間関係も深まっていきます。

FUVSの法則が共感を生む
みよし通信には、FUVSの法則が自然に表れています。
FはFamily。家族、生い立ち、故郷、地域、人とのつながりです。
UはUnusual。初めての体験、失敗、けが、思いがけない出来事です。
VはVital。仕事や趣味、学びに一生懸命取り組む姿です。
SはSmile。楽しい出来事や、思わず笑ってしまう話です。
田植え、どろんこ運動会、スマホを落とした出来事、仲間とのつながりには、FUVSの要素が重なっています。
FUVSは、きれいな文章を書くための法則ではありません。
その人の体験や人柄を伝え、読み手の共感を得るための考え方です。

ランチェスター戦略では顧客維持が重要になる
ランチェスター戦略では、
営業の目的を「お客さまから、ライバル以上に好かれて、気に入られて、喜ばれて、忘れられないようにする」取り組みがあります。
新規開拓だけが営業ではありません。
一度ご縁ができた方との接点を続け、関係を深めることも大切な営業活動です。
中小製造業には、顔の見える関係をつくる接近戦がなにより大事。
会えない間にも社長の人柄や考え方を伝え、困りごとが生まれたときに思い出してもらう。
みよし通信は、毎月届く小さな営業担当者として、その役割を果たしています。

まとめ
通信の目的は、売り込むことではありません。
相手と仲良くなり、人間関係を育て、共感を得ることです。
現場で起きたことを自分の視点で観て、感じたことを自分の言葉で伝える。
届いた声を読み、次の通信へ生かす。
128号まで続くみよし通信には、その積み重ねがあります。

今日からできる小さな一歩
まず、今月、心に残った出来事を一つ選んでください。
「いつ、どこで、誰と」「何があったのか」「何を感じたのか」「自分はどう観たのか」を500文字ほどで書き、写真を一枚添えてみましょう。
その会社、その人ならではの通信の第1号が見えてきます。

お客さまとの関係を育てる「あきない接点道場」
あきない接点道場では、製造業や工務店、サービス業の経営者やスタッフが、お客さまとの接点づくりを学び、実践しています。

自社の現場で起きたことを振り返り、自分が何を感じ、どのように観たのかを言葉にする。
実際に通信をつくり、お客さまへ届け、寄せられた反応から次の内容を考えていきます。
みよし通信のように、自社らしい通信を継続し、お客さまから親しまれ、相談される関係を育てたい方へ。
あきない接点道場で、一緒に実践してみませんか。
投稿者プロフィール

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1962年 大阪生まれ。1位づくり戦略コンサルタント。
立志立命式代表世話人。
中小企業に従事した自らの体験を踏まえ、コンサルタントとしてこれまで1300社以上の指導実績を持つ。
また豊富な現場経験から生み出された1位づくり戦略をはじめ多彩なテーマで年間100回以上のセミナーを行い、実践的かつ即効性がある好評を博している。
自ら主催する経営塾「あきない道場」には、全国からたくさんの経営者が参加。その理論を実践し短期間に多くの成功事例を生み出している。
著書には、『小さな会社★採用のルール』をはじめ、『「あなたのところから買いたい」とお客に言われる小さな会社』、『小さな会社☆No.1のルール』、『小さな会社☆集客のルール』、『スゴい仕掛け』など、いずれもAmazonカテゴリーで1位を獲得している。



