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LIXILリフォームショップなんよう(旧南陽硝子)が実践した、弱者の採用戦略
前回は、工務店・リフォーム会社が取り組むべき「弱者の採用戦略」の考え方についてお伝えしました。
小さな会社は、
大手企業のように、
- 給与
- 福利厚生
- 知名度
- 求人数
- 広告費
で勝負してはいけない。
だからこそ、
- 理想の人材に絞る
- 地域を絞る
- 共感を伝える
- 不安を安心に変える
- 接点を増やす
という“弱者の戦略”が必要になる。
今回は、その実践事例として、
LIXILリフォームショップなんよう(旧南陽硝子)の採用事例をご紹介します。
この事例には、地域密着の工務店が、これから採用を考える上で非常に重要なヒントが詰まっています。
「誰でもいい」ではなく、「この人に来てほしい」
LIXILリフォームショップなんようが採用でまず行ったのは、
「理想の求職者を明確にする」
ということでした。
募集したのは、
- インテリアコーディネーター
- 二級建築士
- リフォーム提案ができる人材
です。
しかし、ただ資格を持っている人を探したわけではありません。
特に意識したのは、
“子育て世代の女性”
でした。
例えば、
- 幼稚園や小学生の子どもがいる
- 建築やインテリアの経験がある
- 以前働いていたが、出産で一度離職した
- もう一度、地域で働きたいと思っている
そんな方々です。
さらに、
- 人と話すことが好き
- 地域のお客様と自然に会話できる
- イベントにも前向きに参加できる
- 明るく前向き
という人物像まで具体的に考えていました。
つまり、
「誰でも来てください」
ではなく、
「あなたのような方に来てほしい」
という採用だったのです。
なぜ「新しい事業部」にしたのか
ここが非常に興味深いポイントでした。
今回、LIXILリフォームショップなんようでは、
「新しいリフォーム事業部を立ち上げます」
という形で採用を打ち出しました。
これは単なる組織変更ではありません。
実はここに、弱者の採用戦略の大きな工夫がありました。
地域密着の工務店には、
長年地域を支えてきた安心感があります。
その一方で、求職者から見ると、
「すでに人間関係が出来上がっていそう」
「途中から入って馴染めるかな」
「ベテランばかりの中に入るのは不安」
という気持ちを持つ方も少なくありません。
特に子育て世代の女性にとっては、
「久しぶりの仕事復帰」
そのものが大きな不安です。
だからこそ、
「新しい事業部」
という言葉には、大きな意味がありました。
新しいスタート。
これから一緒につくっていく。
まだ完成されていない。
だから入りやすい。
つまり、
「ここなら私も参加できそう」
という安心感を生み出していたのです。
採用とは、
不安を安心に変える活動でもあります。
なぜ「お手紙風チラシ」にしたのか
今回の採用で、特に印象的だったのが、
“お手紙風の採用チラシ”でした。
一般的な求人広告のように、
- 給与
- 休日
- 福利厚生
- 条件
を大きく並べたものではありません。
むしろ、
「こんにちは、はじめまして」
という、
やさしい言葉から始まっていました。
これは求人広告ではなく、
“地域の方へのお便り”
として設計されていたのです。
なぜ、このような形にしたのでしょうか。
そこには、
佐藤元相先生が提唱されている
「感性マーケティング FUVSの法則」
という考え方があります。
人は「共通体験」に共感する
FUVSとは、
- F=Family(家族・故郷・生い立ち)
- U=Unusually(特別な体験・失敗談)
- V=Vital(一生懸命な姿)
- S=Smile(笑顔・日常)
という4つの感情共有の法則です。
つまり、
「人は、自分と重なる体験に安心する」
という考え方です。
今回の採用チラシには、
このFUVSが自然に入っていました。
Family|子育て世代の日常に寄り添う
例えば、
- 子どもの送り迎え
- 学校行事
- 急な発熱
- 家庭との両立
など、
地域のお母さんたちの日常です。
「子どもが熱を出したら帰れます」
「学校行事も大切にしてください」
そんな言葉があるだけで、
安心感は大きく変わります。
これは単なる制度説明ではありません。
「あなたの暮らしを理解しています」
というメッセージなのです。
Unusually|新しい事業部という“始まり”
今回の「新しい事業部」という打ち出しも、
まさにUnusuallyでした。
これから始まる。
一緒につくる。
まだ完成されていない。
だからこそ、
新しい人でも入りやすい。
これは求職者にとって、
「私にも役割があるかもしれない」
と思える前向きなメッセージになります。
Vital|一生懸命働く姿を見せる
さらにチラシでは、
- 地域のお客様と向き合う姿
- 女性スタッフの働く様子
- 暮らしを支える仕事
なども紹介されていました。
人は、
頑張っている人に共感します。
特に地域密着の工務店では、
“誰かの暮らしを支えている実感”
が大きな価値になります。
単なる「仕事紹介」ではなく、
「この会社は本気で地域に向き合っている」
という熱量が伝わることが大切なのです。
Smile|小さな日常が安心になる
そして最後は、
何気ない日常です。
- みんなでお茶を飲む
- 子どもの話をする
- 誕生日を祝う
- イベントをする
こうした小さな日常が、
実は一番安心につながります。
求職者が本当に知りたいのは、
「この会社で私は馴染めそうか」
だからです。
チラシは「1回」で終わらせない
さらに興味深かったのは、
チラシを1回で終わらせなかったことです。
1回目は、
社長からのあいさつ。
2回目は、
実際に働くスタッフの声。
3回目は、
子育て世代へのメッセージ。
このように、
少しずつ関係を深めていきました。
これは、
売り込みではありません。
関係づくりです。
採用チラシを、
“物語”として届けていたのです。
学校区に絞る「ご近所採用」
さらに、
配布エリアも絞っていました。
- 学校区
- 幼稚園区
- 自転車で通える範囲
です。
つまり、
広く集めるのではなく、
“近くの理想の人”
に集中して届けたのです。
これが、
ランチェスター戦略でいう
「局地戦」
です。
大手のように全国で募集するのではなく、
地域密着で戦う。
これが、
小さな会社の勝ち方です。
採用は「求人」ではなく「関係づくり」
さらに重要なのが、
採用は、
求人票を出す前から始まっている
ということです。
実際、
採用がうまくいく工務店ほど、
- 地域イベント
- ワークショップ
- OB感謝祭
- SNS
- ブログ
- 学校との関係
など、
地域との接点があります。
そこで地域の人たちは、
- どんな社長なのか
- どんな社員がいるのか
- どんな空気感なのか
を感じています。
つまり採用とは、
「人を集めること」
ではなく、
「地域との信頼関係づくり」
なのです。
小さな会社には、小さな会社の勝ち方がある
小さな会社が、
大手と同じ採用をしても勝てません。
だからこそ必要なのが、
- 理想の人材に絞る
- 地域を絞る
- 共感を伝える
- 安心を見せる
- 日常を発信する
- 接点を増やす
という、
弱者の採用戦略です。
地域密着の工務店には、
本来、大きな魅力があります。
顔が見えること。
人の温度が伝わること。
地域に必要とされていること。
そして、
「この街で暮らす人を支えている」
という誇りがあることです。
採用とは、
単なる人集めではありません。
未来の仲間との、
関係づくりなのです。
より詳しく学びたい方へ
今回のコラムでお伝えした
「小さな会社の採用戦略」については、
拙著『小さな会社★採用のルール』で、さらに詳しく解説しています。
求人広告や条件競争だけに頼らず、
- 地域密着で人が集まる仕組み
- ご近所採用の考え方
- ストーリー型求人チラシ
- 子育て世代採用
- 社員の日常発信
- 共感で人を集める方法
など、小さな会社だからこそできる採用戦略を、事例とともにまとめた一冊です。
採用に悩む工務店経営者、広報担当者、総務担当者の方は、ぜひご覧ください。
『小さな会社★採用のルール』
佐藤元相 著
もし今、
「採用費をかけても成果が出ない」
「求人媒体に振り回されている」
「地域での採用に課題を感じている」
※本記事は、一般社団法人 工務店フォーラム H.O.P.E.(Homebuilders Organization for Prosperity and Ecology) にて、工務店経営者・広報担当者・総務担当者向けに行った「ランチェスター採用戦略」研修内容をもとに構成しています。
投稿者プロフィール

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1962年 大阪生まれ。1位づくり戦略コンサルタント。
立志立命式代表世話人。
中小企業に従事した自らの体験を踏まえ、コンサルタントとしてこれまで1300社以上の指導実績を持つ。
また豊富な現場経験から生み出された1位づくり戦略をはじめ多彩なテーマで年間100回以上のセミナーを行い、実践的かつ即効性がある好評を博している。
自ら主催する経営塾「あきない道場」には、全国からたくさんの経営者が参加。その理論を実践し短期間に多くの成功事例を生み出している。
著書には、『小さな会社★採用のルール』をはじめ、『「あなたのところから買いたい」とお客に言われる小さな会社』、『小さな会社☆No.1のルール』、『小さな会社☆集客のルール』、『スゴい仕掛け』など、いずれもAmazonカテゴリーで1位を獲得している。



