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佐藤元相のオフィシャルブログ

1位づくり戦略コンサルタント 佐藤 元相

第2回 元請け化だけが正解ではない|取引先との関係を守りながら利益を残す建築板金業の経営戦略

今回のお話は、建築板金業における下請け経営と元請け化についてです。

「下請けから脱却したい」

「元請けの仕事を増やしたい」

「自社で価格を決められるようになりたい」

現場からは、このような声を聞くことが多々あります。

たしかに、特定の元請け会社への依存度が高く、価格を自社で決められない経営には大きなリスクがあります。

しかし、下請けをやめて元請けになれば、すべての問題が解決するわけではありません。

現在の取引先との信頼関係を大切にしながら、自社の価値を正しく伝える。

そして、利益が残る価格や取引条件を、お客さまと話し合える会社をつくる。

その道もあります。

それでは詳しくご紹介します。

「下請け脱却」という声が届いた

先日、全国建築板金協会で講演をする機会をいただきました。

全国から約250名の方々が参加されていました。

講演テーマは、

「唯一無二の強みを磨く」

です。

価格だけで比較される会社から、自社の強みで選ばれる会社へ変わる。

そのためのランチェスター戦略についてお話ししました。

最後に値上げをどのように進めていけばいいのか?ご質問をいただきました。
その内容について、先日ブログを書きました。
こちらです。
第1回 値上げでお客さまが離れるのが怖い|建築板金業が価格改定の前に行う顧客のグループ分け

さて今回、参加された方々のアンケートには、次のような声がありました。

「下請け脱却」

「下請け体質からの脱却」

「元請け化に向けた、自社の価値の見つけ方を知りたい」

「新規顧客を開拓したい」

「単価を上げたい」

「価格転嫁を進めたい」

「利益率を改善したい」

一つひとつの言葉から、これからの経営に対する真剣な思いが伝わってきました。

同時に、私は思いました。

本当に、下請けをやめることだけが答えなのだろうか。

下請けであること自体が問題ではない

下請けという言葉には、弱い立場という印象があるかもしれません。

しかし、下請けであること自体が問題なのではありません。

長年にわたり、元請け会社や工務店から仕事を任されている。

困ったときに、最初に声をかけてもらえる。

難しい納まりを相談される。

現場で問題が起きたときに頼られる

これは、技術と信用を積み重ねてきた結果です。

大切にしてきた取引先との関係を切り、すべてを元請けへ変える必要はありません。

問題は、取引の形ではありません。

仕事をいただいても利益が残らない。

価格について相談できない。

急な変更や追加工事を断れない。

一社からの仕事がなくなると、経営が成り立たない。

このような状態が続いていることです。

問題は「下請け」ではなく「依存」です

一社から、安定して仕事をいただける。

営業活動をしなくても、現場が続いていく。

これは大きな利点です。

一方で、その一社が売上の大部分を占めていると、価格や取引条件について話しにくくなります。

「単価を上げてほしいと言えば、他社へ仕事が流れるかもしれない」

「無理な工期でも、断れない」

「追加工事の費用をお願いしにくい」

この不安が積み重なると、取引先との関係を守ることと、言われた条件をすべて受け入れることが同じになってしまいます。

それでは、職人が忙しく働いても利益が残りません。

車両や道具を更新できません。

社員の賃金を上げることも難しくなります。

取引先を大切にすることと、会社を守ること。

その両方を考える必要があります。

元請け化にも新しい責任が生まれる

元請けになれば、価格を自社で決めやすくなります。

お客さまと直接話せるため、技術や提案力も伝えやすくなります。

しかし、元請け化には新しい仕事と責任が生まれます。

新しいお客さまを見つける。

相談に対応する。

現場を調査する。

見積もりを作る。

契約内容を確認する。

工事全体を管理する。

近隣へ配慮する。

代金を回収する。

工事後の保証や苦情にも対応する。

技術力だけでは、元請け事業を続けられません。

営業、顧客対応、現場管理、資金管理の仕組みが必要です。

元請け化を目指す場合も、「元請けになること」を目的にしないことです。

どのようなお客さまの、どのような困りごとを解決するのか。

その仕事で、必要な利益を残せるのか。

ここを先に考えます。

目指すのは価格決定力を高めること

私は、下請け脱却よりも先に考えたいことがあります。

それは、価格決定力を高めることです。

価格決定力とは、自社の都合だけで価格を決めることではありません。

自社が提供している価値を整理する。

必要な原価と利益を把握する。

その内容をお客さまへ説明する。

そして、お互いが納得できる条件を話し合う力です。

お客さまが買っているのは、屋根材や外壁材を取り付ける作業だけではありません。

雨漏りの原因を見つける力。

複雑な建物の納まりを考える力。

現場に合わせて加工する技術。

工期を守る段取り。

他業者と調整する力。

安全に工事を進める力。

緊急時に対応する力。

工事後も相談できる安心感。

これらも、お客さまが受け取っている価値です。

その価値が言葉になっていなければ、見積書には材料費と施工費しか表れません。

お客さまから見ても、他社との違いが分からなくなります。

顧客選択力も経営を守る

もう一つ必要なのが、顧客選択力です。

これは、お客さまを上から選ぶという意味ではありません。

自社の技術や人員、対応できる地域を考え、力を発揮できる仕事へ重点を置くことです。

遠方で移動時間が長い現場。

急な工程変更が何度も続く仕事。

追加工事を請求できない取引。

少額でも緊急対応を求められる仕事。

こうした仕事が増えると、売上は上がっても利益が残らない場合があります。

一方で、自社の技術を理解し、相談しながら仕事を進めてくださるお客さまもいます。

価格だけではなく、品質、対応、安心感を評価してくださるお客さまです。

どのお客さまと関係を深めるのか。

どの仕事の条件を見直すのか。

どの地域に力を集中するのか。

この選択が、会社の利益を変えていきます。

ランチェスター戦略は「全部を変える」考え方ではない

ランチェスター戦略では、小さな会社が限られた経営資源を分散させないことを重視します。

客層を絞る。

商品や工事分野を絞る。

地域を絞る。

新規開拓の仕組みをつくる。

そして、自社が力を発揮できる狭い分野で、1位を目指します。

1位とは、全国一の売上を目指すことだけではありません。

「工場屋根の改修なら、この会社」

「雨漏りの原因調査なら、この会社」

「難しい納まりの相談なら、この会社」

「地域の緊急対応なら、この会社」

このように、お客さまの頭の中で最初に思い出してもらえる存在になることです。

今ある取引をすべて捨てる必要はありません。

現在のお客さまとの関係を守りながら、利益が残る得意分野を少しずつ増やしていきます。

強みは自分たちだけで決めない

「うちの強みは、技術力です」

この言葉だけでは、他社との違いが分かりません。

強みを見つけるときは、お客さまへ直接聞きます。

「なぜ、当社へ仕事を依頼してくださっているのですか」

「他社と比べて、どこを評価してくださっていますか」

「どのようなときに、当社へ相談しようと思われますか」

「当社がいなくなると、何に困りますか」

お客さまの答えのなかに、自社では気づいていない価値があります。

「返事が早いから助かる」

「難しい現場でも、納まりを考えてくれる」

「他業者との調整までしてくれる」

「現場をきれいにして帰ってくれる」

「約束した日に必ず来てくれる」

技術だけではなく、日頃の対応や姿勢が選ばれる理由になっていることもあります。

強みは、自分たちが言いたいことではありません。

お客さまが感じている価値から見つけます。

既存のお客さまとの対話から始める

新しいお客さまを増やす前に、現在のお客さまとの関係を見直します。

お客さま別の売上を確認する。

粗利益額と粗利益率を見る。

利益が残る仕事と、残らない仕事を分ける。

利益が残らない原因を調べる。

そのうえで、価格や取引条件について話し合います。

「値上げをお願いします」と、一方的に伝えるだけではありません。

これまで評価していただいたことを確認します。

今後も品質、安全、納期を守るために必要なことを伝えます。

追加工事、現場調査、緊急対応、遠方への移動など、これまで曖昧だった条件も整理します。

顔の見える関係があることは、小さな会社の強みです。

お客さまと近いからこそ、事情を聞き、自社の状況も伝えられます。

下請けをやめるのではなく、経営の主導権を取り戻す

大切なのは、下請けか元請けかという二者択一ではありません。

現在の取引先との関係を大切にする。

自社の価値を言葉にする。

利益が残る価格を考える。

取引条件を話し合う。

特定の一社への依存を少しずつ減らす。

自社の強みが生きるお客さまとの取引を増やす。

こうした取り組みを重ねることで、経営の主導権を少しずつ取り戻せます。

取引先との関係を壊すためではありません。

これからもよい仕事を続けるためです。

社員と家族の生活を守る。

若い職人を育てる。

技術を次の世代へ残す。

必要な設備や安全へ投資する。

そのために、適正な利益が必要です。

まとめ

下請けであること自体が、経営上の問題ではありません。

大切なのは、取引先との関係と利益の両方を守れているかです。

元請け化には、価格を決めやすいという利点があります。

一方で、営業、集金、保証、苦情対応など、新しい責任も生まれます。

元請け化だけを正解にせず、自社に合う経営の形を考える必要があります。

目指したいのは、自社の価値を正しく伝えられる会社です。

そして、価格や取引条件について、お客さまと話し合える会社です。

さらに、自社の強みが最も生きるお客さまや仕事を選び、そこへ力を集中できる会社です。

ランチェスター戦略は、今あるものをすべて捨てる戦略ではありません。

現在の信頼関係を大切にしながら、自社が選ばれる場所を見つける1位づくり戦略です。

今日からできる小さな一歩

まず、長く取引してくださっているお客さまを一社選んでください。

そして、次の質問をしてみてください。

「長い間、当社へ仕事を依頼してくださっている理由は何ですか」

答えを聞くときは、反論や説明をせず、そのまま受け止めます。

その言葉のなかに、価格だけでは比較できない自社の価値があるかもしれません。

あきない実践道場では、下請けか元請けかという形だけで経営を考えません。

お客さまの声から自社の強みを見つけます。

そして、客層、商品、地域、営業、顧客維持を一つの経営設計図にします。

現在のお客さまとの関係を大切にしながら、価格ではなく価値で選ばれる会社をつくりたい方は、あきない実践道場の内容をご覧ください。

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投稿者プロフィール

佐藤元相
佐藤元相
1962年 大阪生まれ。1位づくり戦略コンサルタント。
立志立命式代表世話人。
中小企業に従事した自らの体験を踏まえ、コンサルタントとしてこれまで1300社以上の指導実績を持つ。
また豊富な現場経験から生み出された1位づくり戦略をはじめ多彩なテーマで年間100回以上のセミナーを行い、実践的かつ即効性がある好評を博している。
自ら主催する経営塾「あきない道場」には、全国からたくさんの経営者が参加。その理論を実践し短期間に多くの成功事例を生み出している。

著書には、『小さな会社★採用のルール』をはじめ、『「あなたのところから買いたい」とお客に言われる小さな会社』、『小さな会社☆No.1のルール』、『小さな会社☆集客のルール』、『スゴい仕掛け』など、いずれもAmazonカテゴリーで1位を獲得している。
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