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佐藤元相のオフィシャルブログ

1位づくり戦略コンサルタント 佐藤 元相

現場が最高のセールスマンになる|27年の3S活動と「待ち工場」から抜け出す下請け町工場の営業実践

大阪府八尾市にある株式会社関西クラウン工業社を訪問しました。

同社は、冷間鍛造という技術を使い、作業工具や各種部品を製造している町工場です。

社員、役員、パートさんを合わせて8名。

工場へ入って、まず驚いたのは床の美しさでした。

古い機械が並び、油や鉄粉が出る製造現場です。

それでも床は明るく、工具は決められた場所に並び、通路には線が引かれていました。

工場の中を歩くと、至るところに小さな工夫があります。

その一つひとつから、働く人の高い美意識と、人を大切にする姿勢を感じました。

「現場そのものが、会社の営業力になっている」

今回は、関西クラウン工業社の工場見学から学んだ、3S活動と町工場の営業についてご紹介します。

それでは詳しくご紹介します。

見える化と手元化が現場を変える

関西クラウン工業社では、整理・整頓・清掃の3S活動を27年にわたり続けています。

工場内では、作業に使う工具が一目で分かるように並べられていました。

工具の形に合わせて、置き場所が決められています。

使った工具が戻っていなければ、離れた場所から見ても分かります。

軍手も、必要な場所のすぐ近くに置かれていました。

以前は、作業のたびに離れた棚まで取りに行っていたそうです。

そこで、機械の近くに軍手を置きました。

必要なときに、すぐ取れます。

これが「手元化」です。

一回だけなら、わずかな移動です。

しかし、毎日、何度も繰り返せば、大きな時間になります。

歩く時間や探す時間からは、製品も利益も生まれません。

ランチェスター戦略では、移動時間は、生産に直接つながらない時間と考えます。

営業でいえば、お客さまと面談している時間が、価値を生み出す生産時間です。

移動時間や社内業務の時間も必要です。

しかし、その時間が増えすぎると、お客さまと面談する時間が減ってしまいます。

営業では、面談時間を増やし、移動時間を減らすことが生産性の向上につながります。

現場も同じです。

製品をつくっている時間が、営業における面談時間に当たります。

重たい材料を動かすたびに、リフトを使う。

作業のたびに、道具を取りに行く。

必要な部品を探す。

一つひとつは小さな動きでも、積み重なれば大きな時間になります。

もちろん、移動や準備がすべて不要になるわけではありません。

必要以上の移動や探す時間を減らせば、同じ勤務時間でも、より多くの時間を生産に使えます。

現場の小さな不便を見つけ、働く人が動きやすい状態をつくる。

3S活動は、単に工場をきれいにする活動ではありません。

生産時間を増やし、移動や探す時間を減らす活動です。

安全で、効率的で、快適な職場をつくる活動でもあります。

新しく入った人にも分かる現場をつくる

ネジを入れる容器にも工夫がありました。

以前は、中の見えない箱を使っていたそうです。

必要なネジを確認するためには、箱を一つずつ開けなければなりません。

そこで、透明な容器へ入れ替えました。

箱を開けなくても、中身が分かります。

残量も見えるため、注文する時期にも気づけます。

作業の手順書も、必要な場所へ置かれています。

誰かに毎回聞かなくても、その場所へ行けば分かるようになっています。

町工場では、仕事が特定の人に集中する

「あの人に聞かなければ分からない」

「あの人が休むと作業が止まる」

このような状態は、働く人にも会社にも負担になります。

見える化は、人を管理するためだけのものではありません。

働く人が迷わず仕事を進められるように、助ける仕組みでもあります。

社内で確認する時間や、担当者を探す時間も減らせます。

営業でも、社内業務の時間は必要です。

見積書をつくる。

資料を準備する。

社内で情報を共有する。

どれも欠かせない仕事です。

しかし、社内業務に時間をかけすぎると、お客さまと面談する時間が減ります。

現場でも、準備や確認に時間をかけすぎると、製品をつくる時間が減ります。

見える化と手元化によって、準備や確認にかかる時間を短くする。

その積み重ねが、生産時間を増やすことにつながります。

遊び心が改善を続ける力になる

工場内の棚には、リンゴ、ゴリラ、ラッパ、パンダ、ダルマ、松、ツバメ、メダカ、カラス、スイカという表示がありました。

しりとりになっています。

棚の場所を数字だけで伝えると、移動している間に忘れてしまうことがあります。

「上から何段目の、右から何番目」

そう言われても、すぐに思い出せないことがあります。

しかし、「ゴリラの2段目」と言われると覚えやすくなります。

改善というと、難しく考えてしまうことがあります。

関西クラウン工業社の現場には、働く人が楽しく続けられる工夫がありました。

高額な設備を入れなければできない改善ばかりではありません。

100円ショップの商品を使った工夫もあります。

大切なのは、働く人が何に困っているのかを見つけることです。

そして、自分たちで知恵を出し、小さく試してみることです。

うまくいかなければ、また変えればよいのです。

27年間続けてきたから見えるもの

現在の工場だけを見ると、最初から整った会社だったように感じます。

しかし、以前の写真には、工具や材料が積み上げられ、通路も分かりにくい現場が写っていました。

今の状態になるまで、27年かかっています。

社長が最初に動きました。

社長自身も現場へ入り、掃除や改善に取り組みました。

トイレ掃除の当番表には、社長の名前もありました。

「社員にやらせる」のではなく、社長が自ら始める。

その姿を見て、一人、また一人と参加する人が増えていったのだと思います。

人の意識は、社長が一度話しただけでは変わりません。

目的を繰り返し伝えます。

自ら行動します。

改善の結果を、みんなで確認します。

時間をかけて続ける中で、それが会社の文化になっていきます。

現場が最高のセールスマンになる

関西クラウン工業社では、新規のお客さまが工場へ来られたときに、

「きれいですね」

と言ってくださるそうです。

階段を見て、

「ここは靴のまま上がってよいのですか」

と尋ねられることもあります。

製造業のお客さまは、製品だけを見て発注先を決めているわけではありません。

工場の床を見ています。

工具の扱い方を見ています。

材料の置き方を見ています。

働いている人の表情や挨拶も見ています。

「この会社なら、預けた材料を大切に扱ってくれそうだ」

「この現場なら、品質を任せられそうだ」

そう感じてもらえる現場は、営業担当者が言葉で説明する以上の説得力を持ちます。

「現場が最高のセールスマンになる」

この言葉を実感できる工場でした。

よい現場だけでは仕事は増えない

一方で、関西クラウン工業社は、大きな課題にも気づきました。

それは、これまで営業らしい営業を、ほとんどしていなかったことです。

技術があります。

きれいな工場があります。

地域の加工会社と連携し、冷間鍛造だけでなく、切削、溶接、研磨、焼き入れ、表面処理まで対応できる力もあります。

しかし、その価値が外のお客さまに伝わっていませんでした。

よい技術があっても、知ってもらえなければ相談は生まれません。

待っているだけでは、新しいお客さまとの出会いは増えません。

これは、町工場が抱えやすい課題だと思います。

「良いものをつくっていれば、誰かが見つけてくれる」

そう願いたくなる気持ちは、私にもよく分かります。

私自身、町工場で働いていた頃、目の前の仕事を一生懸命に仕上げることが、何より大切だと思っていました。

しかし経営には、よい商品をつくる仕事と、その価値を伝える仕事の両方が必要です。

会社案内と名刺をつくり直す

関西クラウン工業社では、自社分析を行いました。

「うちの会社は、何ができるのか」

「冷間鍛造には、どのような利点があるのか」

「どのような部品を得意としているのか」

社内で繰り返し話し合いました。

分からないことは、社長や工場長へ聞きました。

その結果、担当者自身が、冷間鍛造について自分の言葉で説明できるようになりました。

その内容をもとに、会社案内も作り直しました。

円形、円柱、ギアなど、得意な加工を絞って見せました。

対応できる大きさや数量も、具体的に伝えるようにしました。

名刺も変えました。

以前の名刺には、会社の情報や認証マークが多く並んでいました。

新しい名刺には、その人の趣味や人柄が伝わる情報を載せました。

名刺交換をすると、

「これは、どういうことですか」

と質問されるようになりました。

名刺が、単なる連絡先の交換から、会話を始める道具へ変わったのです。

展示会の前から営業を始める

2026年、関西クラウン工業社は、展示会への取り組みも一新しました。

展示ブースを変える。

会社案内を変える。

事前準備を行う。

ホームページやSNSを活用する。

そして、展示会の日から逆算して行動計画を立てました。

3月と4月に行動計画をつくる。

5月と6月に展示会の準備をする。

7月からお便りを送り始める。

11月の展示会に向けて、接点を重ねていく計画です。

途中で新製品開発の仕事が入り、計画どおりに進まないこともありました。

インタビューも、十分には実行できませんでした。

それでも、できなかったことだけを見て止まりませんでした。

できることから行動しました。

その一つが、「関クラタイムス」の復刊です。

7月は約100件。

8月は約200件。

9月は約300件へ届ける準備を進めました。

内容は、冷間鍛造を知らない人にも伝わるように、やさしい言葉で書かれています。

展示会の案内だけではありません。

技術の紹介や、働く人の紹介も載せています。

お便りを読んだパートさんから、

「冷間鍛造ってこんな加工技術だったのですね。読んで分かりました」

という声もあったそうです。

社外へ伝えるためにつくったお便りが、社内で自社を理解する道具にもなりました。

時間をかけた接点が営業力になる

ランチェスター戦略では、中小企業の営業に「接近戦」が欠かせません。

広告を一度出して終わるのではありません。

ハガキでお便りを届ける。

展示会へ案内する。

メールマガジンを届ける。

工場を見てもらう。

困りごとを聞く。

こうした接点を重ねながら、お客さまとの信頼を育てるのです。

一回目の接点で受注にならないことは、珍しくありません。

二回、三回、四回と接点を重ねる中で、会社のことを少しずつ理解してもらえます。

そして、困ったときに思い出してもらえるようになります。

この時間の積み重ねが、簡単にはまねできない営業力になります。

営業の生産性を高めるには、お客さまと面談する時間を増やし、移動や準備にかかる時間を減らすことが重要です。

お客さまと面談する。

話を聞く。

提案する。

信頼関係を築く。

こうした時間が、営業における生産時間です。

訪問先を集中させる。

オンライン面談を活用する。

事前に資料を送る。

面談の目的を明確にする。

このような工夫によって、移動や準備にかかる時間を減らせます。

「関クラタイムス」を毎月続けることも、展示会前から始める営業です。

展示会で名刺交換をした人へ、その後も情報を届けることも営業です。

製造現場の改善と同じように、営業も一度で完成するものではありません。

小さな実践を続け、反応を見て、改善していきます。

町工場にもマーケティングの役割が必要

関西クラウン工業社には、専任の営業部門や広報部門があるわけではありません。

一人がいくつもの仕事を兼任しています。

それでも、会社案内をつくり、通信を発行し、展示会の準備を進めています。

町工場にも、自社の価値を見つけ、言葉にして、伝える役割が必要です。

営業担当者を何人も採用できなくても、社内からできる営業はあります。

ハガキは、誰でも書けます。

メールマガジンも配信できます。

動画もできます。

オンライン相談も、大切な接点です。

工場見学も、最大の強みの一つです。

すべてを一度に始める必要はありません。

まず、自社が一番続けやすい接点を一つ決めればよいのです。

大切なのは、発信すること自体を目的にしないことです。

誰に、何を知ってもらいたいのか。

どのような相談をしてほしいのか。

発信した後、次に何をするのか。

ここまで考えて、営業の仕組みにしていきます。

お客さまと面談する時間を増やすことは、業績をよくする大きな要因です。

社内で資料をつくる時間を短くする。

問い合わせへの回答を定型化する。

訪問先を地域や業種ごとにまとめる。

オンラインで話せる内容は、オンラインで行う。

こうした工夫によって、移動時間や社内業務の時間を減らし、お客さまと話す時間を増やせます。

現場の3S活動が生産時間を増やすように、営業の仕組みづくりは面談時間を増やします。

最後に、名刺が人をつなぐ

工場見学の途中、二階の作業場の奥に、ドラムセットが置かれていることに気づきました。

社長の名刺を見ると、名前の横にも大きなドラムのイラストが入っています。

そこから、ドラムの話へ自然に会話が広がりました。

社長も、名刺をきっかけにコミュニケーションが生まれたことを、とても喜んでおられました。

名刺は、会社の情報を伝えるだけのものではありません。

その人らしさを伝え、人と人との距離を近づける大切な接点になります。

一枚の名刺にも、その会社らしい営業の工夫がありました。

まとめ

関西クラウン工業社の実践から、四つのことを学びました。

一つ目は、3S活動は、掃除だけではないということです。

見える化と手元化を進め、安全で、効率的で、働きやすい職場をつくる活動です。

工具を探す時間や、材料を取りに行く時間を減らし、製品をつくる時間を増やす活動でもあります。

二つ目は、改善は社長の実践から始まるということです。

社長が自ら動き、目的を伝え、長く続けることで、会社の文化へ育っていきます。

三つ目は、よい技術とよい現場だけでは、お客さまに伝わらないということです。

会社案内、名刺、通信、展示会、メールマガジンなどを使い、継続して接点をつくる必要があります。

四つ目は、営業も現場も、価値を生む時間を増やすことが、生産性の向上につながるということです。

営業では、お客さまと面談する時間を増やし、移動時間や社内業務の時間を減らします。

現場では、製品をつくる時間を増やし、工具を探す時間や材料を取りに行く時間を減らします。

工場をきれいにすること。

自社の価値を言葉にすること。

お客さまとの接点を続けること。

価値を生む時間を増やすこと。

この四つは、別々の活動ではありません。

すべてが「この会社なら任せられる」という信頼と、会社の生産性向上につながっています。

これからの町工場には、3SとSKYWの両輪が必要

3S活動は、主に会社の内側をよくする改善です。

整理、整頓、清掃を続ける。

工具を探す時間を減らす。

材料や製品を安全に動かせるようにする。

働く人が、迷わず仕事を進められる環境をつくる。

こうした内向きの改善は、品質、生産性、安全性を高めます。

社員が気持ちよく働ける職場づくりにもつながります。

しかし、会社の内側を整えるだけでは、仕事は増えません。

よい技術がある。

きれいな工場がある。

社員が真面目に働いている。

それでも、会社の存在や価値を知ってもらえなければ、お客さまから相談は届きません。

これからの町工場には、外向きの改善も必要です。

私は、お客さまとの関係づくりに「SKYWの法則」が大切だと考えています。

Sは、好かれる。

Kは、気に入られる。

Yは、喜ばれる。

Wは、忘れられない。

まず、お客さまに関心を持ち、相手を理解する。

面談や接点を重ね、信頼を得る。

お客さまの困りごとを解決し、喜んでもらう。

そして、必要なときに思い出してもらえるように、関係を育て続ける。

これが、SKYWによるお客さまづくりです。

関西クラウン工業社の実践にも、SKYWにつながる接点がありました。

趣味を載せた名刺から、ドラムの話が生まれる。

会社案内や工場見学を通じて、技術と現場を知ってもらう。

地域の加工会社と連携し、お客さまの困りごとに応える。

関クラタイムスを継続して届け、忘れられない関係をつくる。

これらは、商品を売り込むためだけの活動ではありません。

お客さまとの関係を育てる、外向きの改善です。

内向きの3Sだけでは、よい会社であっても知られないままです。

外向きのSKYWだけを進めても、現場が整っていなければ、お客さまの期待に応え続けることはできません。

3Sによる現場改善。

SKYWによるお客さまづくりの改善。

この二つは、これからの町工場の経営を支える両輪です。

現場を磨き、その価値を外へ伝える。

お客さまの声を聴き、その声を再び現場の改善へ生かす。

この循環をつくることが、これからの町工場に必要な経営だと、関西クラウン工業社の実践から学びました。

今日からできる小さな一歩

まずは、工場や事務所を10分間歩いてみてください。

そして、社員が毎日行っている、次の三つの行動を探してください。

「探しているもの」

「取りに歩いているもの」

「何度も人に聞いていること」

見つけたら、現場の人と一緒に、一つだけ改善します。

工具や材料を手元化する。

中身が見える容器に変える。

置き場所を表示する。

手順書を必要な場所に置く。

次に、営業活動についても同じように考えてみてください。

営業担当者が毎日使っている、移動時間、資料を探す時間、社内確認にかかる時間を書き出します。

その中から一つを減らし、お客さまと面談する時間を増やします。

そして、現場の改善を写真と短い文章にして、お客さまへ届けてみてください。

現場改善が、会社の価値を伝える最初の営業になります。

自社の価値を営業の仕組みに変える

関西クラウン工業社の実践は、自社分析、商品分析、名刺づくり、会社案内、展示会準備、情報発信まで、一つにつながっています。

自社の技術や現場の中には、まだ言葉になっていない価値があります。

あきない実践道場では、お客さまへのインタビューや自社分析を通じて、その価値を見つけ、営業の仕組みへ変える実践に取り組んでいます。

現場の時間の使い方を見直し、お客さまと接する時間を増やす。

自社の価値を必要としているお客さまへ、きちんと届ける。

その一歩を、一緒に実践していきます。

投稿者プロフィール

佐藤元相
佐藤元相
1962年 大阪生まれ。1位づくり戦略コンサルタント。
立志立命式代表世話人。
中小企業に従事した自らの体験を踏まえ、コンサルタントとしてこれまで1300社以上の指導実績を持つ。
また豊富な現場経験から生み出された1位づくり戦略をはじめ多彩なテーマで年間100回以上のセミナーを行い、実践的かつ即効性がある好評を博している。
自ら主催する経営塾「あきない道場」には、全国からたくさんの経営者が参加。その理論を実践し短期間に多くの成功事例を生み出している。

著書には、『小さな会社★採用のルール』をはじめ、『「あなたのところから買いたい」とお客に言われる小さな会社』、『小さな会社☆No.1のルール』、『小さな会社☆集客のルール』、『スゴい仕掛け』など、いずれもAmazonカテゴリーで1位を獲得している。
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