
「展示会で名刺は集まった。でも、その後は何もできていない」
「ホームページはある。でも、問い合わせが安定しない」
「ブログを書いているけれど、以前ほど読まれなくなった」
このような悩みを持つ中小企業の社長に、今回お伝えしたいのがメルマガを活用したセールスのやり方です。
メルマガは古い媒体ではありません。
検索や広告に左右されず、お客さまへ直接価値を届ける「デジタル接近戦」です。
ただし、誰にでも同じ情報を送れば、一斉広告と変わりません。
大切なのは、RSTPによって、
「誰に、何を、何の専門家として届けるのか」
を決めることです。
今回は、営業マンがお客さまに会う前から選ばれる会社をつくるための、メルマガ戦略についてお伝えします。
それでは詳しくご紹介します。
目次
「ブログのアクセスが半分ほどになりました」
先日、雑貨などをインターネットで販売している経営者とお話ししました。
その会社では、長年ブログを書き続けてきました。
専門家へ依頼して記事を書き直し、検索される言葉も細かく調べてきました。
ところが、社長がこう話したのです。
「ブログへのアクセスが、半分ほどになったんです」
社長は、AI検索の広がりによって、記事の読まれ方が変わってきたと感じていました。
これまで検索結果に表示されていた記事も、AIが先に答えを出すことで、読者がブログまで来なくなったのではないかという話でした。
別の会社でも、ブログだけでは情報を届けにくくなったと考え、動画発信に力を入れ始めていました。
私は、この話を聞いて考えました。
Googleの検索順位やSNSの仕組みに、お客さまづくりを任せきってもよいのだろうか。
検索の仕組みが変わるたびに、問い合わせや売上が上下する。
これは、町工場が一社の親会社に売上の大半を依存している状態と、どこか似ています。

外部の仕組みに依存しすぎることには、危うさがあります。
お客さまは、営業マンに会う前から調べている
以前は、営業担当者が情報の入り口でした。
営業マンがお客さまを訪問する。
商品や技術の特徴を説明する。
お客さまは、その説明を聞いてから比較を始める。
このような流れが一般的でした。
今は違います。
お客さまは営業マンへ相談する前に、ホームページ、ブログ、動画、事例などを見ています。
AIに質問する人も増えています。
「この会社は信用できそうか」
「同じような事例はあるか」
「自社の問題を理解してくれそうか」
こうしたことを調べ、候補をある程度絞ってから相談します。
商談が始まる前に、比較検討は始まっているのです。
営業の役割も変わります。
一方的に商品を説明するだけではありません。
お客さまが調べた内容を確認する。
誤解があれば正しく伝える。
個別の課題を聞き、助言する。
導入後の不安を取り除く。

営業は「説明する人」から「お客さまの判断を支える人」へ変わりつつあります。
メルマガは、デジタルで行う接近戦
ランチェスター戦略では、小さな会社は大企業と同じ土俵で戦わないことを重視します。
広く、多くの人へ広告するだけではありません。
対象を絞る。
困りごとを絞る。
自社が強い分野を絞る。
そして、お客さまと直接つながる接近戦を行います。
メルマガも同じです。
検索してもらうのを待つのではありません。
すでに出会ったお客さまへ、こちらから直接、役立つ情報を届けます。
展示会やセミナーで出会った人が、すぐに商談になるとは限りません。
設備の更新時期が先かもしれません。
予算が決まっていないかもしれません。
社内で相談する時間が必要かもしれません。
今すぐ商談にならないお客さまを切り捨てず、細く長く関係を続ける。
必要になった時に、自社を思い出してもらう。

これが、メルマガによるデジタル接近戦です。
メルマガを始める前にRSTPを決める
メルマガを配信するだけでは、戦術です。
RSTPによって戦う場所を決めることで、メルマガが戦略になります。
RSTPとは、次の四つです。
Rはリサーチ。
Sはセグメンテーション。
Tはターゲティング。
Pはポジショニングです。
難しく見えますが、考えることは単純です。
お客さまの声を集める。
お客さまを分ける。
最も届けたい人を決める。
何の専門家として覚えてもらうかを決める。
この順番です。
R:お客さまの「現場語」を集める
最初はリサーチです。

机の上でテーマを考えるのではありません。
営業担当者がお客さまから聞かれた質問。
展示会で何度も聞かれたこと。
見積もりを提出した時の不安。
失注した理由。
導入後に喜ばれたこと。
お客さまが自社を選んだ理由。
こうした現場の声を集めます。
例えば、
「展示会で名刺は集めたけど、誰から連絡したらええのか分からへん」
「営業担当者によって、説明の内容が違う」
「技術には自信があるけど、ホームページで伝わっていない」
このようなお客さまの言葉が「現場語」です。
検索される言葉だけを追いかけるのではありません。
現場で実際に使われている言葉を、メルマガやブログに変えていきます。
S:お客さまを分ける
次はセグメンテーションです。

お客さまを分けます。
業種で分ける方法があります。
製造業。
工務店。
医療関係。
地域密着企業。
役割で分けることもできます。
社長。
営業責任者。
現場責任者。
内勤スタッフ。
課題でも分けられます。
価格競争。
新規開拓。
展示会営業。
採用。
事業承継。
すべての人へ同じ内容を送らないために、最初に分けます。
会社のお知らせや商品案内を全員へ送るだけでは、一斉広告になってしまいます。
分けることで、お客さまの関心に合った情報を届けやすくなります。
T:最も届けたい一人を決める
次はターゲティングです。

分けたお客さまの中から、今回最も届けたい人を決めます。
例えば、
「展示会で名刺を集めても、その後の営業が続かない社員30人の製造業の社長」
ここまで絞ると、相手の顔と現場が浮かびます。
件名も変わります。
「当社の新商品をご紹介します」
ではなく、
「展示会で集めた名刺、机の中で眠っていませんか」
という現場語になります。
全員に読んでもらおうとすると、誰の心にも残らない文章になりやすいものです。
一人の顔を思い浮かべて書くことで、
「これは、うちの会社のことだ」
と感じてもらえる文章になります。
P:何の専門家として覚えてもらうか
最後はポジショニングです。

お客さまから、何の専門家として覚えてもらいたいのかを決めます。
例えば、
「展示会で出会った見込み客を、現場事例とメルマガで商談へ育てる専門家」
という立ち位置です。
「何でもできます」では、違いが伝わりません。
誰の、どんな問題を解決する専門家なのか。
ここを明確にします。
ポジショニングが決まると、メルマガの内容に一貫性が生まれます。
何を書くか迷った時も、
「この内容は、自分たちが覚えてもらいたい専門分野とつながっているか」
と判断できるようになります。

STPとランチェスター戦略はつながっている
STPは、ランチェスター戦略と深くつながっています。
Sで市場を分ける。
Tで重点客層へ力を集中する。
Pで狭い分野の1位を目指す。
そして、メルマガを使って接近戦を行う。
つまり、
「RSTPで戦う場所を決め、メルマガでデジタル接近戦を行う」
ということです。
どのメール配信システムを使うか。
何曜日に送るか。
文字数を何文字にするか。
これらも必要です。
しかし、先に決めることではありません。
誰に、どんな価値を届け、何の専門家として覚えてもらうのか。
戦略を先に決め、その後に道具や配信方法を選びます。

戦術は戦略に従わせます。
メルマガが担う四つの営業機能
メルマガには、四つの役割があります。
一つ目は、思い出してもらうことです。
設備が故障した時。
採用に困った時。
営業を見直したい時。
必要になった瞬間に、会社名や担当者を思い出してもらいます。
二つ目は、教えることです。
お客さまが比較検討するための、正しい判断基準を届けます。
三つ目は、理解することです。
どの記事が読まれたのか。
どの内容に返信があったのか。
どんな相談が増えたのか。
その反応から、お客さまの関心を理解します。
四つ目は、つなぐことです。
ブログ、動画、事例、セミナー、相談など、次の行動へ自然につなぎます。
メルマガは、一通で商品を売るためのものではありません。

お客さまとの距離を、少しずつ縮めるためのものです。
配信開始から約1か月。平均開封率は約45%
支援先で支援しているメルマガ事例です。
営業担当者が、毎週一回の配信を始めて約1か月。
平均開封率は約45%。
最も高い時は約68%でした。
すべての会社で同じ結果になるわけではありません。
ただ、関心のあるテーマを、関心のある人に届ければ、メルマガは読んでもらえることが分かりました。
その営業担当者は、お客さまを訪問する時に、メルマガを印刷して持参しています。
会話の中で紹介し、興味を持ってくださった方に登録してもらいます。
デジタルだけに任せているのではありません。
訪問というアナログの接点と、メルマガというデジタルの接点を組み合わせています。
ここに、小さな会社らしい営業があります。
一通一テーマ、一通一行動
一通のメルマガに、あれもこれも詰め込む必要はありません。
一通一テーマに絞ります。
基本の流れは、次の通りです。
1.お客さまが抱えている現状
2.実際に現場で起きた出来事や会話
3.そこから分かった原理・原則
4.自社での応用方法
5.今日からできる小さな一歩
6.ブログや動画、相談など次の行動
読んだ後に何をしてほしいのかも、一つに決めます。
ブログを読んでもらう。
動画を見てもらう。
資料を受け取ってもらう。
セミナーへ参加してもらう。

メールへ返信してもらう。
お客さまの関心度に合わせ、小さな行動を用意します。
数字だけでお客さまを判断しない
開封率やクリック数は、改善に役立ちます。
しかし、数字だけでお客さまを評価してはいけません。
「メールを開きましたね」と追いかけるものでもありません。
一度開封しただけで、見込み度が高いと決めることも危険です。
数字は、お客さまを監視するためではありません。
関心のあるテーマを知り、より役立つ情報を届けるために使います。
配信への同意や個人情報にも、配慮が必要です。

最後は、営業担当者がお客さまと対話し、確かめることが大切です。
まずは、届けたい一人を決める
「メルマガを始めなければ」
そう考えると、準備することが多く見えてしまいます。
最初から立派な文章を書く必要はありません。
まずは一人、届けたいお客さまを決めてください。
その人が、今何に困っているのか。
現場で、どんな言葉を使っているのか。
自社は、どんな経験を伝えられるのか。
何の専門家として覚えてもらいたいのか。
そこから一通を作ります。
一通を送り、反応を見ます。
お客さまの声を聞き、次の一通を改善します。
デジタル営業であっても、中心にあるのは人と人との関係です。
まとめ
メルマガは古い媒体ではありません。
検索や広告に左右されず、お客さまへ直接価値を届けるデジタル接近戦です。
ただし、誰にでも同じ内容を送れば、一斉広告と変わりません。
Rでお客さまの現場語を集める。
Sでお客さまを分ける。
Tで最も届けたい人を決める。
Pで何の専門家として覚えてもらうかを決める。
RSTPで戦う場所を決め、メルマガで接近戦を行う。
この一貫性が、商談前から選ばれる理由をつくります。
今日からできる小さな一歩
最近、お客さまから聞かれた質問を一つ書き出してください。
次に、その質問をしたお客さまがどんな人だったのかを書きます。
最後に、自社はその人から何の専門家として覚えてもらいたいのかを考えてみてください。

この三つが、最初のメルマガの土台になります。
メルマガ、通信、ブログを「お客さまづくり」へつなげたい方へ
メルマガ、通信、ブログを別々に続けても、営業成果につながりにくいことがあります。

大切なのは、誰に、何を届け、次にどんな行動へつなぐかを一貫させることです。
NNAの「あきない接点道場」では、自社の強みとお客さまの声を整理し、接点づくりを実践できる仕組みへ変えていきます。
「発信しているけれど、営業につながらない」
「展示会で出会った見込み客との関係が続かない」
「何の専門家として発信すればよいか分からない」
そのような課題があれば、ぜひ一度ご相談ください。
投稿者プロフィール

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1962年 大阪生まれ。1位づくり戦略コンサルタント。
立志立命式代表世話人。
中小企業に従事した自らの体験を踏まえ、コンサルタントとしてこれまで1300社以上の指導実績を持つ。
また豊富な現場経験から生み出された1位づくり戦略をはじめ多彩なテーマで年間100回以上のセミナーを行い、実践的かつ即効性がある好評を博している。
自ら主催する経営塾「あきない道場」には、全国からたくさんの経営者が参加。その理論を実践し短期間に多くの成功事例を生み出している。
著書には、『小さな会社★採用のルール』をはじめ、『「あなたのところから買いたい」とお客に言われる小さな会社』、『小さな会社☆No.1のルール』、『小さな会社☆集客のルール』、『スゴい仕掛け』など、いずれもAmazonカテゴリーで1位を獲得している。



