1,400トンもの巨大な重機が、自動でトンネルを掘り進める。予定ルートとの誤差は、2ミリ未満。
2026年11月4日の日本経済新聞に、大成建設の取り組みが紹介されていました。
私がこの記事で関心を持ったのは、精度の高さと、それを支えた過去の現場データの蓄積です。
この記事を読み、竹田陽一先生から学んだ「事例を集めて研究すること」の大切さを、改めて感じました。
今回は、基礎知識と事例研究を、会社の次の一手にどう生かすか。小さな会社の経営という視点から考えてみたいと思います。

こんにちは。
1位づくり戦略コンサルタントの佐藤です。
それでは詳しくご紹介します。
目次
20のモデルでは、現場の違いに対応できなかった
記事によると、大成建設は、トンネルを掘る「シールドマシン」の自動運転に取り組んでいます。
地中は、場所によって条件が違います。地盤の硬さや地下水の量が異なるため、まっすぐ進めるにも細かな調整が必要です。
これまでは、その判断を熟練の運転士が担っていました。
開発にあたって参考にしたのは、過去20現場、延べ約33キロメートルの工事データです。
しかし、最初につくった20のモデルでは、十分な精度を出せませんでした。現場ごとの違いに対して、選べるモデルが少なかったのです。
そこで、蓄積したデータを細かく分析し、モデルを800に増やしました。さらに、掘削中のデータを取り込み、その場の状況に近いモデルを提案する仕組みへと改善しました。

鹿児島の工事では、4.5メートルの区間を自動運転し、誤差2ミリ未満という結果が出たそうです。
自動運転できた区間は、工事全体の1%未満。長距離の自動化に向けた一歩ですが、その成果を支えた研究の過程に、私は学ぶものを感じました。
自社と同じ規模の会社から、次の一手を学ぶ
私は、ランチェスター経営の竹田陽一先生から、事例を集めて研究する大切さを学びました。
そのなかで、心に残っているのが「最低100事例」という教えです。
一つの成功事例を聞くと、「なるほど。うちも同じことをやればよいのか」と思うことがあります。
しかし、その会社と自社では条件が違います。
特に目を向けたいのが、会社の規模です。社員数や売上規模が変われば、社長の役割も、営業の進め方も、組織のつくり方も変わります。
社員10人の町工場が、営業部門や教育担当者を置ける大企業の仕組みを、そのまま取り入れるのは難しいことがあります。
まず参考にしたいのは、自社と同じくらいの規模の会社です。業種が違っていても、限られた人数でお客さまとの接点をつくり、社員を育てる工夫には、学べることがあります。
私が大切にしたいのは、「近くの異業種、遠くの同業種から学ぶ」という見方です。
近くの異業種からは、同じ地域でのお客さまとの関係づくりや、採用の工夫を学べます。遠くの同業種からは、似た設備や技術を持つ会社が、どのお客さまに、どんな価値を届けているのかを学べます。
そうした事例を比較すると、業種を超えて共通する考え方と、その会社ならではの工夫が見えてきます。
私は、「最低100事例」という教えを、数をそろえることだけが目的だとは受け止めていません。

規模や背景を確かめ、自社との共通点と違いを考える。そして、自社で実践できる一手を見つける。そのために研究する姿勢が大切なのだと思います。
「すごい会社だった」で終わらせないために、基礎を学ぶ
自社と同じ規模の会社や、近くの異業種、遠くの同業種から学ぶ。そのとき、基礎知識があると、事例から得られる学びが深まります。
せっかく会社を訪ねても、何に目を向ければよいかが分からなければ、「すごい会社でしたね」という感想で終わってしまうことがあります。
これは、私の好きな石垣を見るときにも感じることです。
お城の石垣には、さまざまな積み方があります。その一つが、角の部分に使われる「算木積み」です。
名前や仕組みを知らずに見れば、「立派な石垣だな」と感じます。そこに知識が加わると、石の組み方や角のつくり方に目が向くようになります。
「ここにも算木積みが使われている」
「なぜ、このように積んでいるのだろう」
気づきが生まれ、ほかの石垣との違いも知りたくなります。背景を調べることで、見学の楽しさや理解も深まっていきます。
経営の事例を学ぶときも、同じだと思います。

例えば、少人数で営業成果を上げている会社を見るとき。「誰をお客さまにするか」という視点を持っていれば、営業担当者の頑張りに加えて、訪問先や相談を受ける相手の絞り方にも目が向きます。
基礎知識があると、取り組みの奥にある考え方に気づきやすくなります。
その気づきが、「うちの会社では、どう生かせるだろう」と考える入口になるのです。
ランチェスター戦略が、事例を見る着眼点になる
例えば、展示会で成果を上げた町工場を学ぶとします。
看板のデザインや、展示物の見せ方は参考になります。そこに戦略の基礎知識が加わると、さらに確かめたいことが出てきます。
どのお客さまに来てほしかったのか。数ある加工技術のなかで、何を強みとして伝えたのか。展示会の後、どのように関係を育てたのか。
ランチェスター戦略では、小さな会社が限られた人、時間、お金を、どこに集中するかを考えます。
客層、商品、地域を絞り、自社の強みが活きる場所を定める。その視点があれば、展示会も、出展した事実だけで評価しなくなります。
「誰に選ばれるための取り組みだったのか」

ここを見るようになります。
基礎知識を学ぶことで、事例の表面に見える工夫と、その奥にある戦略を結びつけて考えられるのです。
状況が変われば、手の打ち方も変わる
経営では、同じ方法を続ければ、いつも同じ結果が出るとは限りません。
仕事が増えているときと、受注が減っているときでは、優先する取り組みが変わります。
新しいお客さまとの出会いを増やす必要がある会社もあれば、今のお客さまへの対応を整える必要がある会社もあります。
例えば、問い合わせは増えているのに、見積もりの返事が遅れている。現場が忙しく、納期の調整に追われている。
そんな状況なら、営業を強めるとともに、受けた相談へ確実に対応する仕組みも必要になります。
事例を学ぶときは、何をしたかに加えて、そのとき会社がどのような状況だったのかを知りたいのです。
大成建設の取り組みでも、地盤や機械の違いへの対応が課題になっていました。

経営でも、目の前の条件を捉えることが、方法を選ぶうえで欠かせないと感じます。
受注が減っても慌てない会社は、何を備えていたのか
バブル崩壊、リーマンショック、コロナ禍。経営を取り巻く環境は、大きく変わってきました。
こうした危機を経験した会社から学べることは、たくさんあります。
私が知りたいのは、厳しい状況でどう対応したか。そして、その前から何を続けていたかです。
例えば、一つの取引先からの受注が減ったとき、ほかのお客さまから相談をいただける関係を築いていたのか。
忙しいときにも、自社の得意な仕事を伝え続けていたのか。社員教育に取り組み、複数の仕事を担当できる人を育てていたのか。
危機のときに力を発揮した取り組みは、平時からの積み重ねだったかもしれません。
強い会社をつくること。そして、その強さを保つこと。

そのためにも、困ってから学ぶだけでなく、日頃から事例を研究し、自社の備えを考えておきたいのです。
集めた事例を、自社の行動に変える
事例を読むときには、私は次の三つを意識するとよいと思います。
一つ目は、その会社が置かれていた状況です。
二つ目は、その状況で、なぜその取り組みを選んだのかという理由です。
三つ目は、自社と共通する条件と、違う条件です。
この三つを整理すると、そのまま取り入れられることと、変更が必要なことを考えやすくなります。
成功した結果だけでなく、途中の失敗や修正にも目を向けたいですね。

また、社長一人で学ぶだけでなく、社員と一緒に一つの事例を考えてみることもできます。
「うちのお客さまなら、何を喜んでくださるだろう」
「今の人数で始めるなら、何ができるだろう」
そう話し合い、一つ試してみる。結果を確かめ、記録する。
その経験が、自社の次の判断を支える事例になります。
まとめ|学びの蓄積が、次の一手を支える
大成建設の記事から、私は、過去の経験を細かく研究し、現場の違いに合わせて生かす大切さを感じました。
竹田先生から学んだ事例研究も、算木積みを知って石垣を見ることも、私のなかではつながっています。
基礎知識を得ると、見るところが変わります。多くの事例を比較すると、共通点と違いが分かります。それを自社に置き換えることで、次の一手が具体的になります。
まずは、今の経営課題を一つ決めてみませんか。

その課題に関係する事例を選び、「なぜ、この会社はこの手を打ったのか」を調べてみてください。
一つの事例を深く学ぶことが、学びを積み重ねる出発点になります。
小さな会社の事例から、自社の戦略を考える
あきない実践道場では、ランチェスター戦略の基礎と、中小企業の具体的な取り組みを結びつけて学びます。
NNAでは、小さな会社の実践事例を20年間蓄積してきました。
どのお客さまに力を注ぐのか。何を強みとして伝えるのか。どのように接点を続け、選ばれる会社をつくるのか。
事例を参考にしながら、自社の条件に合う取り組みを考えます。少人数での学びと個別相談を通じて、実践と改善を重ねていきます。
「学んだことを、自社の次の一手につなげたい」

そうお考えの方は、あきない実践道場について、お気軽にご相談ください。一緒に、自社の可能性を考えていきましょう。
参考資料
日本経済新聞「大成建設、1400トンの重機を自動運転 誤差2ミリ未満でトンネル掘削」
2026年11月4日掲載
投稿者プロフィール

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1962年 大阪生まれ。1位づくり戦略コンサルタント。
立志立命式代表世話人。
中小企業に従事した自らの体験を踏まえ、コンサルタントとしてこれまで1300社以上の指導実績を持つ。
また豊富な現場経験から生み出された1位づくり戦略をはじめ多彩なテーマで年間100回以上のセミナーを行い、実践的かつ即効性がある好評を博している。
自ら主催する経営塾「あきない道場」には、全国からたくさんの経営者が参加。その理論を実践し短期間に多くの成功事例を生み出している。
著書には、『小さな会社★採用のルール』をはじめ、『「あなたのところから買いたい」とお客に言われる小さな会社』、『小さな会社☆No.1のルール』、『小さな会社☆集客のルール』、『スゴい仕掛け』など、いずれもAmazonカテゴリーで1位を獲得している。



