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佐藤元相のオフィシャルブログ

1位づくり戦略コンサルタント 佐藤 元相

お客さまは、あなたの会社から何を買っているのか? 町工場の全社員が考えた「選ばれる理由」

― 全社員営業とは?11年目を迎えた関西金属製作所の社員研修

「うちの会社の強みって、何やろう?」

社長にこう尋ねると、よく返ってくる答えがあります。

「短納期です」
「品質には自信があります」
「小ロットにも対応しています」

もちろん、どれも大切なことです。

しかし、それだけでお客さまは選んでくれるのでしょうか。

同じことを言っている会社は、ほかにもたくさんあります。

では、自社ならではの価値は、どこにあるのでしょうか。

私は、その答えの多くが、日々の仕事の中に隠れていると考えています。

しかも、社長自身が気づいていないところに、会社の強みが眠っていることがあります。

お客さまに選ばれるために、全社員が1か月かけて考えたこと

2026年10月31日。

大阪の関西金属製作所さまで、全社員営業研修を行いました。

※全社員営業とは、営業担当者だけにお客さまづくりを任せるのではなく、経理、製造、梱包、配送など、すべての社員が自分の仕事を通じてお客さまに喜ばれる価値を高める取り組みです。

研修では、社員の皆さんに、こんな宿題を出していました。

「お客さまは、アルミや加工品のほかに、何を買ってくださっているのか?」

「自分の仕事は、お客さまのどんな喜びにつながっているのか?」

「これから、新しくつくれる価値は何か?」


9月26日の前回研修から約1か月。

社員の皆さんが部署ごとに話し合い、「自分たちの仕事の価値」を考えてくださいました。

今回のテーマは、
「私たちは、お客さまにどんな価値を提供しているのか」
です。


その成果を発表していただきました。

営業担当が見つけた「他社で断られた仕事」に応える価値

最初は営業チームの発表です。

短納期への対応。
見積もり回答の早さ。
加工方法を工夫したコストダウン提案。
豊富なアルミ材料の知識。

こうした価値が紹介されました。

その中で、私が特に興味を持った話がありました。

SNSを通じて問い合わせがあったお客さまから、難しい加工の相談を受けたそうです。

「今までいろんな会社に聞いたけれど、どこもやってくれなかったんです」

そんな相談でした。

担当した社員は、その話を聞いて、

「面白いですね」

と前向きに相談にのったそうです。

難しいから断るのではなく、まずは挑戦してみる。

そして、実際に仕事を引き受け、売上につながりました。

他社で断られた仕事に挑戦する。

私は、ここに大きな可能性を感じました。

ランチェスター戦略では、小さな会社は大企業と同じ戦い方をせず、自社の得意分野で1位を目指すことが重要です。

他社が断るような仕事でも、自社の得意技術を生かして解決できれば、独自の市場をつくるきっかけになります。

ただし、難しい仕事を何でも引き受ければよいわけではありません。

自社の得意分野を見極め、利益が生まれる仕事を選ぶことも大切です。

その積み重ねが、価格競争から抜け出す道につながります。

経理部も営業できる!相談しやすい会社づくり

次に、経理部の発表です。

経理部の皆さんが発見した価値は、とても身近なものでした。

「少量でも気軽に買える」

「1本からでも届けてもらえる」

「ちょっとした加工も相談できる」

「近くなら直接引き取りに行ける」

これらは、社内では当たり前になっているかもしれません。

しかし、お客さまにとっては、とても便利なことです。

さらに、経理部から具体的な改善提案がありました。

ある日、来社されたお客さまが、誰に声をかければよいのか分からず、車のそばから2階の担当者に電話をかける出来事があったそうです。

そこで皆さんは考えました。

「もっと気軽に声をかけてもらえるようにしよう」

大きな案内ポスターをつくる。

加工事例を紹介する動画へ誘導するQRコード付きのミニチラシをつくる。

来社されたお客さまに、お土産と一緒に渡す。

チラシには、

「いろいろできます!」

「お悩み解決」

「お話、聞きます」

という、短くて分かりやすい言葉を使います。

私は、この発表を聞いて感心しました。

経理部の皆さんが、お客さまとの接点を自分たちで改善しようとしているのです。

これは、立派な営業活動です。

営業担当者でなくても、お客さまとの関係を深めることはできます。
まさに、全社員で営業する仕組みづくりです。

梱包担当者が守っていたのは、お客さまの倉庫だった

梱包担当者の発表です。

重量のあるアルミ製品を梱包すると、箱が潰れたり、テープが剥がれたりすることがあったそうです。

お客さまから改善の要望がありました。

そこで、担当者は工夫を重ねました。

ダンボールの隙間に補強材を入れる。

ダンボールを重ねて強度を高める。

箱の目の方向を考えて、潰れにくくする。

丈夫なテープに変更する。

こうした改善を積み重ね、同様の破損報告は聞かなくなったそうです。

私は、発表を聞きながら質問しました。

「お客さまは、届いた商品をすぐに使うんですか。それとも在庫として置いておくんですか?」

すぐに使うなら、開けやすい梱包が便利です。

しかし、長期間保管するなら、丈夫で崩れにくい梱包が必要です。

つまり、梱包の価値は、商品を箱に入れることだけではありません。

お客さまが安心して商品を保管できることです。

箱が潰れなければ、積み直す手間が減ります。

商品をきれいに保管できれば、倉庫の整理もしやすくなります。

「関西金属さんの商品は、いつもきれいに保管できるなぁ」

そう感じてもらえたら、それも会社の価値です。
自分たちが行っている作業を、お客さまの立場から考え直す。

ここに、価値づくりの大切な視点があります。

担当者は今後、改善した梱包方法をマニュアル化し、仲間にも教えていきたいと発表してくれました。

一人の工夫を、会社全体の力に変えようとしているのです。

切断担当者が守っているのは、お客さまの次の工程だった

切断担当者からは、寸法を正確に確認し、ミスを防ぐ取り組みが発表されました。

切断前に図面や寸法を確認する。

切断後にも、寸法が間違っていないかを確かめる。

こうした日々の作業を丁寧に行っています。

では、お客さまは何を買っているのでしょうか。

それは、正確に切断されたアルミ材料だけではありません。

次の加工工程を予定通りに進められる安心感です。

もし寸法が間違っていたら、加工が止まってしまいます。

材料を再手配したり、切断をやり直したりする必要が生まれます。

お客さまに余計な時間と費用をかけてしまいます。

切断担当者は、今後、ミスが起きた原因を分析し、同じ失敗を繰り返さない仕組みづくりにも取り組みたいと発表してくれました。

自分たちの作業の正確さが、お客さまの仕事を支えている。

私は、ここにも大きな価値があると感じました。

切断作業の価値は、お客さまの大切な時間を守る仕事でもあるのです。

どの部署にも、お客さまの仕事を支える大切な役割があります。

営業管理チームが守っているのは、お客さまの時間だった

営業管理チームの発表にも、会社の価値が表れていました。

既存在庫や簡単な定尺品については、原則1時間以内に見積もりを回答する。

担当営業マンが不在でも、納期の問い合わせに対応する。

必要な商品をすぐ提供できるよう、在庫を管理する。

私は、こうした仕事の価値を、もっと外に伝えるべきだと感じました。

例えば、お客さまが材料の見積もりを依頼したとします。

回答が早ければ、その日のうちに発注を判断できるかもしれません。

材料が予定通り届けば、加工の段取りも進みます。

逆に、納期が分からなければ、現場の計画が立てられません。

つまり、営業管理の仕事は、単に事務処理をすることではありません。

お客さまの仕事を止めないための支援なのです。

こうしたサービスを維持するには、人も時間も費用も必要です。

価格を考えるときには、材料の値段だけではなく、このサービスの価値も考える必要があります。

配送担当者が届けているのは、商品だけではない

配送担当者からも、印象的な発表がありました。

毎日、お客さまと顔を合わせる機会がある。

そのとき、ただ商品を届けて帰るのではなく、できるだけ会話をする。

お客さまに心を開いてもらえるようにしたい。

そんな話でした。

私は、この考え方がとても大切だと思います。

配送担当者は、お客さまの現場に直接足を運びます。

営業マンよりも、現場の担当者と会う回数が多い場合もあるでしょう。

「最近、忙しいですか?」

「この材料、使い勝手はいかがですか?」

そんな何気ない会話から、困りごとが見つかることがあります。

お客さまが相談しやすい関係をつくる。

それも、会社の大切な価値です。

お客さまは、一人の社員を通じて会社を見ています。
社員一人ひとりが、関西金属製作所の代表者なのです。

「何をしているか」と「どんな喜びを生み出しているか」は違う

今回の発表を聞きながら、私は改めて感じました。

仕事の内容と、お客さまが受け取る価値は違います。

例えば、次のようなことです。

社員が行っている仕事お客さまが買っている価値
早く見積もりを回答する発注判断を早く進められる
寸法を確認して正確に切断する次の加工工程が止まらない
積み込みを手伝う次の現場へ早く移動できる
丈夫に梱包する安心して在庫を保管できる
配送時に会話する困ったときに相談しやすい
難しい加工に挑戦する諦めていた課題を解決できる可能性が生まれる

同じ仕事でも、お客さまの立場から考えると、見えてくる価値が違ってきます。

自分たちが何をしているのかを説明するだけでは、お客さまの心に届きにくいモノです。
その仕事によって、お客さまがどのように助かるのか?
そこまで考えて、初めて価値が観えてきます。
それが分かれば、仕事に対する意識も変わっていくのではないでしょうか。

町工場の強みは、社員の仕事の中に眠っている

私は、今回の研修で最も嬉しかったことがあります。

それは、社員の皆さんが自分の仕事について真剣に話し合ってくれたことです。

営業チームでは、社員同士の知識を共有し、今まで対応できなかった相談にも応えられるようにしようと考えました。

経理部では、お客さまが相談しやすい案内方法を考えました。

梱包担当では、改善した作業をマニュアル化し、仲間にも教えていこうと考えました。

配送担当では、お客さまとの会話を大切にしようと考えました。

どれも、社員自身が考えた取り組みです。
誰かに言われたことを、ただ実行するのではありません。
自分たちで考え、話し合い、改善しようとしていました。
私は、ここに社員教育の大切な意味があると思います。

社員教育は、知識や技術を教えることだけではありません。

自分の仕事が、誰の役に立っているのか。

自分の仕事には、どんな価値があるのか。

それに気づく機会をつくることも、教育です。

自分の仕事の価値が分かれば、仕事に対する誇りが生まれます。

その誇りが、次の改善への意欲につながっていきます。

小さな会社は、全社員で「選ばれる理由」をつくる

ランチェスター戦略では、小さな会社は戦う領域を絞り、その領域で1位を目指すことが重要です。

しかし、選ばれる理由は、商品だけで決まるものではありません。

営業の対応。

見積もりの早さ。

納期の正確さ。

梱包の丁寧さ。

配送担当者の人柄。

お客さまへの気配り。

こうした一つひとつの仕事が、会社の信用をつくっています。

ただし、すべてのサービスを無制限に提供すれば、社員の負担が増え、利益を失うこともあります。

大切なのは、自社が得意とするお客さまに、どんな価値を重点的に提供するかを決めることです。

そして、今回社員が発見した価値を、次はお客さまに確かめていきたいと思います。

「なぜ、私たちの会社を選んでくださっているのですか?」

この質問を、お客さまに直接聞いてみるのです。

社員が考えた価値と、お客さまが実際に喜んでいる価値。

その両方が重なるところに、私たちの本当の強みが見えてくるのです。

全社員営業を成功させるために、社長ができること

社長、社員の皆さんに一度、聞いてみてください。

「あなたの仕事は、お客さまの何の役に立っていますか?」

最初は、うまく答えられないかもしれません。

それでも構いません。

みんなで話し合ってみてください。

普段は当たり前だと思っている仕事の中に、お客さまに喜ばれる価値が見つかるはずです。

そして、その価値を社員自身の言葉で伝えられるようになったとき、会社は少しずつ変わり始めます。

社員が自分の仕事に誇りを持つ。

お客さまが、その価値を知る。

会社が価格だけではなく、信頼で選ばれるようになる。

私は、そんな町工場を一社でも多く増やしていきたいと思っています。

11年間の社員教育で育ってきた自主性と、私自身の喜び

今回の研修で、もう一つ嬉しかったことがあります。

それは、NNAの藤原紀子がインストラクターとして研修をリードしてくれたことです。

私は今回、講師として参加しました。

そして藤原が、社員の皆さんへの問いかけや発表の進行を担当してくれました。

社員の皆さんが自分の言葉で発表し、仲間の意見に耳を傾け、気づきを共有していく。

そんな学びの場を、藤原がつくってくれました。

私は、その様子を見ながら、とても嬉しく感じていました。

これまで私自身が大切にしてきた、社員一人ひとりの可能性を信じ、対話を通じて気づきを引き出す研修。

関西金属製作所の社員の皆さんが成長していること。

そして、研修を支えるNNAの仲間も成長していること。

私にとって、これほど嬉しいことはありません。

人が育ち、その人がまた誰かの成長を支える。

そんな循環が生まれていることに、喜びを感じます。


関西金属製作所の皆さん。

今回も素晴らしい発表をありがとうございました。

11年目の全社員営業研修。

これからも一緒に、お客さまに喜ばれる価値を発見し、磨き、届けていきましょう。

そして、社員の皆さんが自分の仕事に誇りを持てる会社を、共につくっていきたいと思います。


あきない実践道場のご案内

「技術には自信がある。でも、その価値をうまく伝えられない」

「価格競争から抜け出したい」

そんな町工場の社長に学んでいただきたいのが、NNAの「あきない実践道場」です。

ランチェスター戦略を学び、自社の強みを発見し、お客さまから選ばれる営業の仕組みをつくります。

学ぶだけで終わらず、実践し、改善するところまで取り組みます。

自社の価値を見つけ、選ばれる会社づくりを一緒に進めていきましょう。

投稿者プロフィール

佐藤元相
佐藤元相
1962年 大阪生まれ。1位づくり戦略コンサルタント。
立志立命式代表世話人。
中小企業に従事した自らの体験を踏まえ、コンサルタントとしてこれまで1300社以上の指導実績を持つ。
また豊富な現場経験から生み出された1位づくり戦略をはじめ多彩なテーマで年間100回以上のセミナーを行い、実践的かつ即効性がある好評を博している。
自ら主催する経営塾「あきない道場」には、全国からたくさんの経営者が参加。その理論を実践し短期間に多くの成功事例を生み出している。

著書には、『小さな会社★採用のルール』をはじめ、『「あなたのところから買いたい」とお客に言われる小さな会社』、『小さな会社☆No.1のルール』、『小さな会社☆集客のルール』、『スゴい仕掛け』など、いずれもAmazonカテゴリーで1位を獲得している。
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