売上を上げることはもちろん大事だ。
しかし、売上だけでは会社は守れない。
必要なのは、「粗利益を確保できる仕組み」をつくること。

今回のあきない実践道場第2講では、
そんな本質的なテーマ「利益性の原則」について伝えました。
特に今回は、
お客様との面談時間・移動時間・社内業務時間
この3つの時間の使い方によって、会社の業績が決まる、
というシンプルかつ深い原理を共有しました。
経営とは時間の使い方である。
それを実感できた学びを、ここで整理してお届けしたいと思います。
目次
利益性の原則とは「粗利中心経営」だけではない
あきない実践道場の中ではまず、
利益性を確保するには売上中心ではなく、粗利中心で考えることが基本だ、と伝えています。
- 売上が増えても粗利が減れば意味がない
- 原価を正確に把握し、利益が残る価格設定を行う
- 小さな会社こそ、粗利額を基準に行動を設計する
ここまでは、多くの経営者も「なるほど」と納得する内容ですよね。
しかし、本当に重要なことは、
その先にある「経費の有効活用」です。
会社の経費には、
- 車両管理費用
- 店舗運営費用
- 通信費用
- 人件費
など、さまざまな項目があります。
この中で特に注目すべきは、
経費全体の約8割が「お客様づくり」に関する活動費用であるという事実です。
人件費、店舗費、SNSをはじめとした販促費、
すべてが「お客さまを生み出すため」に使われています。
そして、この「お客さまづくり」にかかる活動時間の使い方によって、
最終的な業績は大きく左右されるのです。
つまり、
「時間の使い方」こそが、利益性の本質である。
ここに、経営を支える根本的な視点があるのです。
業績を決める「3つの時間」とは
経営における時間は、大きく次の3つに分けられます。
時間の種類 | 内容 | 業績への影響 |
---|---|---|
お客様との面談・サポート時間 | 商談、提案、打合せ、サポートなど直接お客様と接する時間 | 業績を良くする時間(粗利を生む) |
移動時間 | お客様や現場へ移動するための時間 | コストのばらまき(生産性を下げる) |
社内業務時間 | 会議、資料作成、見積もり、設計、社内対応 | 必要だが、できる限り効率化するべき時間 |
この中で、唯一、業績を良くするのは「お客様との面談・サポート時間」だけです。
- 移動時間は、成果を生まないコストでしかない。
- 社内業務時間も、生産には直結しない。
だからこそ、
「お客様と直接接する時間」をいかに増やすか
これこそが、経営の基本中の基本になるのです。
なぜ移動時間はコストのばらまきになるのか?
展示会出展や全国対応を視野に入れるとき、
特に注意すべきは移動時間です。
たとえば大阪の製造業が東京の展示会に出展した場合――
出展そのものは素晴らしい機会です。
新しい出会い、商談のチャンスも増えるでしょう。
しかし、そこから取引が始まった後、
- 試作品の確認
- クレーム対応
- 仕様打合せ
- 検品立ち合い
こうした対応のたびに、
大阪から東京へ何度も移動することになれば、
時間もコストも無駄に消耗されていくことになります。
移動中、私たちは粗利を生んでいない。
移動中、私たちはただただ会社のお金と人件費を使っている。
この現実を、経営者は冷静に見つめなければなりません。
社内業務時間も、できる限り効率化すべき
次に、社内業務時間について。
もちろん、
見積もり作成や資料準備、設計業務など、社内業務は必要不可欠です。
しかし、そこに時間をかけすぎると、
結果的に「外に出てお客様と接する時間」が減ってしまいます。
社内業務はできるだけ効率化し、
- テンプレート化する
- 事前準備をルール化する
- 権限移譲する
など、できる限り短縮していく努力が求められます。
お客様との面談時間を最大化する経営へ
結局、経営の基本はここに帰着します。
「お客様との面談・サポート時間をいかに最大化するか」
それができる会社だけが、
粗利をしっかり確保し、利益を上げ続けることができる。
飲食店であれば、
「客待ち時間をいかに減らすか」
これが直結する課題になります。
- 席についてもなかなかオーダーを取りに来ない
- 提供まで時間がかかる
- お客さまの来店がない時間
- レジで待たされる
こうした「待ち時間」は、すべて売上機会の損失です。
製造業や不動産でも同じ。
お客様の“待ち時間”を減らし、面談・サポートに集中できる体制を作ることが、
業績を伸ばす最大のポイントなのです。
福一不動産の事例に学ぶ「面談時間最大化」
今回のあきない実践道場では、
福岡の福一不動産の取り組みも紹介しました。
福一不動産は、客層を絞り込み、
半径500メートル以内に営業エリアに定め、
- 移動時間を極小化
- 5分以内のトラブル対応体制
- 面談・サポート回数の最大化
を徹底しています。
結果、無駄な移動や時間浪費をなくし、
お客様との関係性を深めることに成功しています。
商品では差別化できない不動産業界において、
「時間の使い方」で圧倒的な差別化を実現している好事例です。
展示会出展にも同じ視点を持つべき
また、
地方から東京に展示会出展をする場合にも、同じことが言えます。
- 移動コストを最小化できる体制はあるか?
- 出展後の対応をオンライン化できる仕組みはあるか?
- 重要顧客だけを効率的に絞り込む設計ができているか?
こうした「出展後の設計」がないと、
いくら出展で出会いを作っても、
その後の対応に疲弊し、利益を削り続けることになってしまいます。
まとめ|経営は「時間の密度」で決まる
あきない実践道場第2講で学んだこと。
それは非常にシンプルでありながら、深いものだと確信しています。
「経営は時間の密度で決まる」
- お客さまと接する時間を最大化する
- 移動時間を減らす
- 社内業務を効率化する
この原則を、経営に根付かせること。
それが、利益を確保し、未来を切り拓くための最も確実な道なのです。
利益性の原則。
単なる数字の話ではなく、
経営者自身が「どこに時間を使うか」を選び抜く覚悟です。

投稿者プロフィール

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1962年 大阪生まれ。1位づくり戦略コンサルタント。
立志立命式代表世話人。
中小企業に従事した自らの体験を踏まえ、コンサルタントとしてこれまで1300社以上の指導実績を持つ。
また豊富な現場経験から生み出された1位づくり戦略をはじめ多彩なテーマで年間100回以上のセミナーを行い、実践的かつ即効性がある好評を博している。
自ら主催する経営塾「あきない道場」には、全国からたくさんの経営者が参加。その理論を実践し短期間に多くの成功事例を生み出している。
著書には、『小さな会社★採用のルール』をはじめ、『「あなたのところから買いたい」とお客に言われる小さな会社』、『小さな会社☆No.1のルール』、『小さな会社☆集客のルール』、『スゴい仕掛け』など、いずれもAmazonカテゴリーで1位を獲得している。