価格競争から脱却したいと思っている
下請け町工場の方へ
会計担当がつくった
手作りの会社案内で
次々受注を増やしている事例を紹介。
1位づくり戦略コンサルタント
佐藤元相です。
本日のテーマは
ランチェスター商品戦略事例
下請け町工場が価格競争から脱却する方法
です。
ある研修担当者と話していて、
下請け町工場でも
価格競争から脱却することが
できるのですよ。
しかも会計担当がつくった
手づくりの会社案内で。。
というとびっくりしていた。
下請け町工場は、
親会社から与えられた図面通りにモノをつくる。
見積もりはするが価格決定権は自社にない。
そんな状況で価格競争から脱却できるとは
信じられない様子だった。
事例を話した。
創業昭和17年の末広機械製作所は
鍛造金型部品を加工する従業員数
10人の小さな下請け町工場である。
鍛造金型とは、
自動車エンジンなどの部品を
つくるために必要な設備機器の
部品である。
西尾一夫社長は振り返える。
円高不況 バブル崩壊 、大きな影響もなく、
なんとかやってこれた。
しかしリーマンショックは
特別だった。
経験したことのない不況だった。
しばらくじっとしていれば、
なんとかなると思っていた。
末広機械製作所は、
業績不振にあえいでいた。
さらにライバル会社とのコスト競争や
取引先からの受注減少もあり
売上げは5割にまで落ち込んだ。
打つ手が見つからない。
容赦なく業績は下降し続けた。
待ちの営業から攻めの営業へ
会計を担当していたはるみさんは
営業担当を買って出た。
「自分がなんとかしなければ」
夫婦二人三脚でやってきた事業が
苦境に陥っている。
営業のことが分からない。
製造業の営業研修があることを知った。
参加を決めた。
出会い
私との出会いはこのときだった。
研修が終わった会場に
彼女は最後まで残っていた。
「会計係の仕事をしていて、
営業のことは全く分かりません。
こんな私でも勉強して大丈夫でしょうか?」
加工技術のことはよく分からない。
ずいぶん昔の古い機械を使って
部品加工している。
それは、
どこにでもある技術で特別なことはない。
会社の強みもなんだかよく分からない。
それでも大丈夫なのか?
と私は質問を受けた。
どんな仕事であっても
会計係だとか営業係だとかは
問題ではない。
問題なのは経営の原理原則を
理解せずに商売をやっている
ことなのである。
会社をよくするために全力を尽くす!
愚痴を言わず、人のせいにせず、
できることはすべてやる!
そして結果は真摯に受け止める。
今は苦しいかもしれないが、
諦めずに継続して取り組む。
そう思う熱意と行動があれば、
誰でもやれる!
思いを込めて伝えた。
自社の強みを発見する顧客取材
彼女は顧客取材に取り組んだ。
顧客を取材する理由は、
私たちが考えている会社の強みと
お客さまが選んでくれている理由に
大きなギャップが存在するからだ。
当たり前のようにやってきていることが、
じつは特別なことだったりもする。
多くの会社でこうした取り組みが
行われるべきことなのだが、
実際に実行しているのは少数派だ。
彼女はパソコンで作った
A3を半分に折り曲げた
会社案内を持ってきた。

A3の会社案内
「これをもってお取引先を取材しようと思います」
会社案内を開いて見せてくれた。
彼女は最初に
長年お世話になっている
取引先を訪問した。
「こんなん作りました。
アドバイスを頂けませんか?」
手作りの会社案内を見せた。

こんなんまだ作っています
「あなたの会社の得意なことはこれでしょ」
担当者は自分の考えを教えてくれた。
技術的にわからないこともあったが、
社長と相談して会社案内を改善した。
取引先に
「会社案内を作りかえました」
再度、報告に訪問した。
素直な行動と取り組みが
お客の評判を呼んで
新たな取引が始まった会社も
でてきた。
また別の会社では
「工場を見えてもらえませんか?」と
購買担当者から声をかけられた。
訪問するたび受注が増えていく。
営業に手応えを感じた。
ある日、仕入れ先が
「あなたのとこは
DH31S(特殊鋼)を
加工するのが得意だろ、
他の会社は嫌がってやらないよ」
と教えてくれた。
ハッとした。
当たり前にやってきたことが、
当たり前でなかったことに気付いた。
DH31S特殊鋼加工に
特化することにした。
鍛造部品メーカーを
過去の名刺から集め
会社案内をもって訪問した。
先行きの見えなかった将来に
光が見えた。
それから2年後の現在、
末広機械製作所の業績は
順調に伸びている。
新たな人材を採用した。
そして設備も増強した。
さらに娘さんが
後継者と決まった。

女性経営者という生き方
社長は会長へ。
会計係だったはるみさんは
社長に就任した。

大阪市の中小企業支援拠点大阪産業創造館の発行する冊子に取り上げられた
下請け町工場が
価格競争から脱却するためには
お客に選ばれている理由を
探究することにある!
末広機械製作所
代表の西尾はるみさんを
取材した動画をこちらで
公開している。
編集後記
今日は岡山城の石垣を紹介しましょう。
宇喜多秀家が築いた石垣の隅角を
小早川秀秋が石垣を継ぎ足して
直線部に改修した跡が
観察できます。

岡山城の石垣
秀家は安定性の高い
大形の石材をきちんと
積んでいる(左)のに対して
秀秋は丸みの強い石材を
粗雑に積んでいます。
面白いですね。