自社の専門性について仮説を立ててみる
これまでご紹介した顧客インタビューや
ライバル他社の調査などを通じて、
自社の特徴について検証するための材料を
数多く集めることができるように
なったことと思います。
どんな住宅が得意なのか、
どんな顧客層に受け入れられているのか、
地域はどのあたりまでが
勢力範囲といえるのか。
また、提供している住宅の
どのような部分が特に評価されているのか。
そういった材料をまずは
紙にでも書き出して、
じっくりと眺めてみましょう。
これまでぼんやりと思い込んでいた
自社についての認識を、
これらの材料と照らし合わせることで、
新たに気がつくことが出てくるはずです。
デザイン性を評価してもらっていたと
思い込んでいたが、
実はマンツーマンで
じっくり対応したことのほうを
喜んでもらっていたとか、
ちょっとした工夫を大工に
加えてもらった手作り感の印象
のほうが強かったりといったことも
ありえます。
たとえば、80年の歴史を持つ建築会社が
公共事業から住宅事業へ転換する、
という例がありました。
その会社の社長様は
「3代にわたって活動している会社だから、
地元でも認知度が高いだろう」
と思っていました。
しかし、近隣の方にお話をうかがってみると
びっくりするくらい存在を
知られていませんでした。
これまでその町内からは離れた土地で
大規模な建築工事をしていたので、
あまり馴染みが無かったのです。
そうなると、
まず存在をお知らせするところから
スタートしなければなりません。
販売促進のアプローチも
当然変わってきます。
自社はどんな特徴があり、
どのような専門性について
訴求したらよいのか。
まずは仮説を立ててみましょう。
自社のキャッチフレーズはキーワードの組み合わせ
この「仮説」とは、
「こういう売り出し方なら
効果的ではないか」
という戦略のことです。
難しく考えることはありません。
先述した調査結果で出てきた
キーワードを組み合わせて、
自社を表すキャッチフレーズを
考えてみればいいのです。
平屋が得意なのか、
小さなリフォームが得意なのか。
地名を盛り込むならどこか。
たとえば
「地元の大工さんだから頼んだ」
という声があったとします。
「地元」
とは具体的な地名や町名でいえば
どこになるのか。
あるビルダー様では、
「自然素材・無垢材」
をセールスポイントとしていましたが、
顧客にインタビューしてみると
「無垢の木って何?」
と聞き返されてしまったそうです。
「これはうまく伝わっていない」
と実感したその会社の社長様は、
それ以降、チラシやホームページで
「無垢材」を「国産の天然木」
と言い換えました。
小さいことのように見えますが、
そうした積み重ねが
あとで効いてくるものです。
このキャッチフレーズを考えるときに、
ひとつ注意していただきたいのが、
大手やライバル他社が使うような
言い回しは避ける、ということです。
専門用語で言うと
「同質化」
という作用が起きて、
本来、オリジナリティを訴えるはずの
キャッチフレーズが、かえって他社と
混同してしまう結果につながってしまいます。
他社にない「隙間」を見つけるように
心がけましょう。
総花的に盛り込みすぎると
ありきたりになりがちですので、
地域を限定したり、
顧客対象を絞り込んだりしていくのが
コツです。
地場のビルダー様の場合、
地名のほか、熟練度、技術性、
アフターサービスなどを具体的にすると、
特徴がつけやすい傾向があります。
前回は、競争しないで受注する方法を模索する差別化戦略についてお伝えしました。