願望はタイの重工業が世界のハブになること!
タイで頑張る町工場を視察
あきない道場タイ視察2017。
午前の視察先は茂呂製作所のタイ法人MORO。
茂呂社長からタイで成功するための考えや取り組みを学んだ。
本気社長のお話に、あきない道場生は大いに刺激を受けた。
その様子はこちらからどうぞ
タイでチャレンジしている町工場の闘魂経営
これからレポートするのは日本が放置した技術で
躍進しているMRP社だ。
MRP ENGINEERING CO.,LTD
http://www.mrp.co.th/
タイで英雄となった日本人
まずは、タイと日本の歴史的なつながりからお話をしよう。
1612年ごろ徳川時代にさかのぼる。
関ヶ原の戦いが終わり、戦の無くなったことに窮屈さを感じていた侍がいた。
山田長政という。
長政は、シャイ(現在のタイ)に渡り日本義勇軍の
軍事司令官となりアユタヤ王朝をいくつもの戦乱から
守った。
国王から絶大な信頼を得て王女と結婚し、
シャイで一国一城の主になっている。
日本とタイにはそんな古い時代からつながりがある。
さて、本題にもどり、あきないタイ道場で2社目の視察。
MRP社 エンジニアリング会社
1991年 創業26年 溶接機器2台からスタートした。
MRP社はここ数年で大きく成長している。
その機動力となっているのがパートナー企業
代表の山本元氏である。
特別に案内いただき話を聞いた。
日本が放置した技術
MRP社は10数年前に日本の技術者を受け入れ、
日本の中古工作機械のオーバーホール、メンテナンス、
修理の事業を始めた。
山本氏は「最先端技術や装置ではなく、
さとうきびの圧縮機やタービンのメンテナンスなど
日本が放置した技術や機械に着目して需要をつくり
ました」と話した。
ちなみにタイは世界第2位の砂糖生産輸出国である。
弱者の商品戦略の基本は、商品の市場規模は
小さくても何かで1位になるという「部分1位主義」を
目指すことにある。
日本のさとうきび精製・砂糖生産で使われていた
日本の技術をタイで活かしている。
日本では使われないが、世界ではまだまだチャンスがある。
そうしたニッチな分野を発掘していった。
事業は軌道にのりMRP社はバンコクから1時間程度の
港湾ちかくの高台に10万坪の敷地を購入し移転した。
現在、従業員400名となっている。
1位づくり戦略が目標達成を加速させる
弱者の商品開発で一番効果的なやり方は、お客の不満や
不便を見つけ出し、これを解消するための商品・技術を
開発することである。
MRP社は徹底した顧客主義を貫いた。
不便を解消するため、顧客を観察せよ!
精密工作部品の加工はできないか?と依頼があった。
工作機器の修理で構造などを理解し技術者の能力は高まっている。
可能だと判断した。
結果的に専門分野が深掘りされていった。
積極的に接点強化をした。
発注先企業が増えた。
受注を増やすためには、
顧客との信頼関係づくりが重要だ。
MRP社は「コピーしない。模造品を造らない」をモットーとした。
需要をつくる
需要があるから購入しているのではなく、
需要を作り出すために工作機器を購入する。
MRP社は、日本の良質な中古工作機械があれば
積極的に購入している。
経営者は自称機械マニアだという。
たしかに、工場の隅には修理前の工作機械が
何台もおいてあった。
「需要があるから購入しているのではなく、
需要を作り出すために工作機器を
購入しているのです」と山本氏はいう。
最近、顧客から「中古工作機械を販売できないか?」、
「レンタルは可能か?」という要望が出ている。
日本の工作機械に特化した技術やノウハウが
選ばれる理由となっている。
さらにネットからの「どんな設備があるのか?知りたい」
など開発案件や試作案件が増えているという。
意図をしていなかった新ビジネス
工作機械設備が整い、技術レベルも高くなった。
大型機械装置や大型メンテナンス装置など、
大型の案件が増えていった。
150トンクラスの天井クレーンの設備が必要になった。
対応できる企業がなかったことから自分たちで、
天井クレーンを設計・製造を行い生産設備として
活用している。
現在はクレーンの設計・製造・施工・メンテナンス事業も
行っており、多くの企業から依頼を受けている。
成功の鍵とは!
MRP社は、次第に産業用一般機械,精密機械,
産業用電気機械,民生用軽電機械,航空、自動車,
船舶,車両などを中心とした生産財を生産する
もの作りに重点を置いていった。
MRP社は重工業に特化し成功した。
成功の鍵とは!
1.日本の工作機械を徹底して取り扱えること
2.日本の生産技術者から直接指導を受けていること
3.世界基準の測定器を保有し精度を確保していること。
4.近隣国へ大きな設備を移動するには立地が重要なこと
バンコクの立地条件が港に近く輸出に最適である。
5.成長するASEAN諸国の中心であること
成功するマーケットに隣接していることから、
益々近代化が進んでいく。
2011年・2013年にバンコクの企業は大洪水の被害を受けた。
先ほど紹介したが、2009年にMRP社は現在の敷地10万坪を購入ていた。このエリアはバンコクより高台にあるため被害をMRP社は被害を免れた。
洪水の被害を受けた企業が近隣に移転している。
世界のものづくり企業が集積してきている。
工場の建設ラッシュが始まっている。
思いは広がっていく。
バンコクに重工業の集積地を造り世界のハブとなりたい!
MRP社は敷地内にレンタル工場をつくった。
すでに数社契約している。
まだまだ拡張していく計画がある。
「ここ5年でこの地域に技術を集積させてこのエリアを第二のバンコクにしたい!間違いなくマーケットの要望や展開のスピードが早くなっている。じっくりマーケットを観ていきたい」と経営陣は語った。
グランド・デザインを描く
山本氏はいう。
日本製品は品質も高く加工能力が高い。
私たちMRP社は日本の技術力を高く評価している。
日本の埋もれてしまった技術が世界で活かされる。
東南アジアのリーダーとなり日本の重工業の技術を
残していく思いでやっている。
私たちはタイ企業と日本企業との架け橋になる。
日本の技術を学びより良い未来をつくっていきたい。
奇跡を起こす
山本氏はもの作りニッポンとタイの司令塔的存在として
世界を視野にいれた戦略を描いている。
中小企業成功要因は3Sにあり
私は、これらの取り組みから
3つのSが成功要因になっていると感じた。
1.Strategy
2.Speed
3.Simple
Strategy 戦略
どこで1位になるのか戦略が明確であること。
Speed 早い対応
成長するマーケットを先読みした取り組み
Simple できることから
お客中心、できることからやる。
小さな会社が取り組むべきヒントがタイの町工場に潜んでいた。
時代を超えて
今回、MRP社を案内をしてくれたのは山本元氏。
山本元氏は天理高校・大学出身。
ラグビー全国大会で日本一になったチーム選手。
ポジションはフランカー。
フランカーはチームの司令塔的な存在である。
山本氏は現在、日本とタイで数十社の経営に関わり司令塔として活躍している。
時代を超えてサムライがいた。
最後に、視察にご協力をいただいた皆様に感謝しています。