顧客との距離を縮めるJALの顧客対応
沖縄 那覇行きの飛行機の中、四国から九州へ抜けるあたりだった。
キャビンアテンダントが飲み物を乗せたワゴンを押し、ドリンクサービスを始めた。
私は通路側の席に座り読書をしていた。
「なかのお客さま」とキャビンアテンダントが言ってドリンクメニューを私の隣に座っている中野さんに見えるように差し出した。
中野さんはイヤホンを外して「アップルジュース」と言ってまたイヤホンを耳につけた。
中野さま? って言った?
確かに言った。
「中野さま アップルジュースでございます」
中野さんはiPadで英会話のページをめくりながら笑顔で左手で受け取った。
あー!
間違いない!
確かに名前を言った。
中のお客さま。ではなく。
中野さま。
なぜ名前がわかったのか?
次は私の順番だ。
期待した。
しかしその間に色々考えた。
席の番号で名前を記録していても、「窓の景色が見たいから」とか「譲り合い」と言ったことで、席と名前を覚えていても、お客同士が席を入れ替わっていたりする事もある。
名前を呼ぶのはいいけれど、席を変わったことで間違えたりするとそれは顧客満足どころか逆効果になりかない。
顔と名前が一致しなければならないより高度な接客対応が求められる。
「佐藤さま お待たせしました」と私の名前を言って挨拶をした。
私はメニューを指差して
「コンソメスープをお願いします。」と言ってキャビンアテンダントの名札を確認した。
名札には田中と書いてあった。
「佐藤さま お待たせしました。コンソメスープでございます。
熱いですので、ごゆっくりお召し上がりください」とテーブルにカップを置いてくれた。
私は「ありがとうございます。ところで田中さん」と少し声のトーンを抑えて声をかけた。
「素晴らしいサービスですね。
なんで私の名前がわかったのですか?」と尋ねると田中さんは
黙って微笑んだ。
何も教えてもらえなかったので、座席表に名前でも
書いてあるシートでもあるのか?とワゴンを確かめたけど
それらしきものはなかった。
私は飛行機で「佐藤様」と言って名指しでサービスを
受けたことがなかったのでとても驚き感動した。
前回、沖縄那覇空港へ行くときは、千社札をもらって関係づくりに感銘を受けたばかり。
「最近のJALはやるなぁ」
これはさっそく中野さんに伝えようと
「中野さん 凄いですよ!JALはお客を名前で呼んで
顧客対応してくれるんですよ。まさにランチェスター」と顔を右に向けて
話しかけたが、中野さんはもう寝ていた。
顧客情報を事前に共有する
私たちは、昨年よりJAL便で定期的に沖縄を訪れている。
私たちのことを事前に情報共有して対応している。
事前に情報があるからといっても、顧客対応の重要性を
理解していなければこのような対応はできるものではない。
まさに弱者の戦略 接近戦だ
お客の立場となれば、「佐藤さま」と名前で呼んでもらえる特別感・満足度は高い。
私はそうして対応してくれる田中さんとの距離を近くに感じた。
お客さまを名前で呼んで対応する。
田中さんの存在は他のキャビンアテンダントとは全く違った印象となった。