関西の上空あたりだった。
羽田から沖縄行きのJALの飛行機。
本を読み終えた。
到着まで、まだ時間がある。
携帯を取り出し、メールを確認しようとしたら、客室乗務員から「恐れ入ります。よろしければ受け取ってもらえませんか?」と声を掛けられた。
機内で客室乗務員から声をかけられるのは非常口の横の席に座っている時くらいなので少し戸惑った。
間を置いて、「それはなんですか?」と尋ねると、
「日本航空の千社札(せんじゃふだ)のシールです」といった。

千社札
私は千社札を手にとり「頂けるのですか?」と訊ねると
「もちろんです。これは客室乗務員で作った千社札で、お客さまにより喜んでいただけたらと
思いプレゼントしています」と客室乗務員は言う。
こんな飛行機に乗ったことがないぞ。
「客室乗務員が自身にとって最も親しみがあるところや、
ゆかりの地と感じる都道府県の千社札をプレゼントしています。」と弾んだ声で教えてくれた。
これまでに何度も国内線に乗ったけれど客室乗務員からこうした形で声をかけてもらった経験をしたことがない。
従来の客室乗務員と全く違う対応だ。
これはすごいぞ。
興味を持ったので「どのようにしてこの方法を考えたのですか?」と
質問をすると彼女は「もっとお客さまとの距離を縮めたい!
どうすればいいのか?と客室乗務員全員で考えました」と教えてくれた。
顧客接点の強化だ。
千社札をもう一度観ると、小さくおきなわと書いてある。
「沖縄にゆかりがあるのですか?」とさらに訊ねると
彼女は「私は数年前に沖縄で結婚式を挙げました。
とても好きなところなんです」と笑顔で話してくれた。
しばらく会話が続いた。
彼女は「搭乗しているスタッフ、客室乗務員の全員が
千社札を持っているので気軽にお声かけください」と
言って頭を下げて業務にもどった。
客室乗務員の思いから生まれた取り組み
「縁 都道府県・千社札シール」
これまで機内で客室乗務員の方と話すことはあった。
「新聞をいただけますか?」とか「まくらはありますか?」といった
必要最小限度で、そんなものだと思っていた。
客室乗務員というと「キビキビ」といった印象があり、
個人的なことで会話を交わす理由もないし、余裕もなさそうに見えていた。
しかし。。。。
なんだろ。
この心地よさ。
千社札をきっかけに相手のことを知り、自分のことを話す。
互いの人間的な側面に触れることで親近感は増していく。
それは旅に出て、見知らぬ町で挨拶をきっかけに仲良くなったような感覚だった。
JAL国内線サービス
客室乗務員の思いから生まれた取り組み。
まさに顧客との距離を縮める。
声をかけられてから、その人のことが他の乗務員よりも気になった。
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