より地元に密着した店作りをしたい!
経営でたくさんのお金と人の労力と時間が
費やされるのが新しいお客さまづくりです。
また、最も難しい仕事も新しいお客さまを
作ることでもあるのです。
参考になるよい事例で紹介しましょう。
京田辺市になる洋菓子店
Patisserie MERCURE(メルキュール)
お店のある京田辺市は、
同志社大学京田辺キャンパスがあり、
人口も世帯数も増えている地域です。
人通りの多い道路に面した店舗には
多数の競合店が開業しており
洋菓子店の激戦区となっています。
メルキュールは、知人ゼロ、
地縁の全くないこの京田辺の地域で
15坪ほどのお店を2013年に開業しました。
お店は住宅街の中にあり、
多くの人の目に触れるような
場所ではありません。
シェフの大池さんは
お店のことを知ってもらうために、
手作りのチラシを
奥さんと一緒に近隣住宅へ
ポスティングすることにしました。
目標は1000件です。
お店に来てもらいたい一心で
一生懸命に取り組みました。
深夜3時から4時ごろ、
町は真っ暗で人もいません。
チラシをバッグに入れて1軒1軒、
ポストにチラシを入れて歩きました。
ちょっとしたセールの前やクリスマスの
予約注文をとるために、手作りのチラシを
つくっては投函していました。
「創業から3年半、新しいお客様を
増やすためになりふり構わず
これしかないと信じて続けました」と
シェフの大池さんは、当時のことを
振り返り話してくれました。
ある日、繁盛店の法則を読んで、
今、来店してくださっている
お客様に喜んでいただけ、
何度もお店に来てもらえるような
仕組みをつくろうと思いました。
さらにお友だちにも
紹介してもらえるようになれば、
これほど嬉しいことはありません。
大池さんの心にスイッチが入りました!
まず、誕生日ケーキご注文のお客様には
「おめでとうございます。
ちょっとした気持ちです」と
ひと言添えて5%OFFのカードを
手渡しするようにしました。
そして、過去の誕生日ケーキや
クリスマスケーキの
お客様予約リストをさかのぼり、
誕生日やクリスマスの数日前に
届くようにハガキを書きました。
これがとても反響がよくてお客様から
「お葉書、ありがとう」と
声を掛けていただくようになり、
声の数と比例して、お誕生日ケーキの
予約注文が増えていきました。
さらに、ポイントカードもつくりました。
500円でスタンプ1個です。
20個たまれば500円割引です。
ポイントを加算するアプリもありますが、
スタンプを一つひとつカードに押すことで、
目に見えてポイントが増えていくと
お客様の楽しみが増えていくと思いました。
お客様からスタンプが20個たまった
カードを受け取るときに、
住所とお名前・お誕生日を
記載していただきました。
そのときに、お名前と顔を
覚えるように心がけました。
住所とお名前を書いていただいた
お客様には、お誕生日やクリスマス、
その他のイベントをハガキでお知らせし、
5%の割引券をつけました。
ハガキをご持参いただいたときには
「ありがとうございます。佐藤さん」と
必ずお客さまのお名前を会話に入れて
話すようにしました。
すると、ある奥さんは子供のことや
仕事のことなど、プライベートなことを
話してくれるようになり、
話題がふくらみ会話の時間が
これまで以上に増えました。
会話が増えるとお客様の印象が
強く残るので、自然にお顔と名前を
覚えるようになりました。
あるとき、お客様が
「カワイイ!このクッキー!
食べるのもったいない!」と
SNSにリスのクッキーを
アップしてくれました。
お客様はお友達からの
「カワイイ!」といったコメントや
「いいね」の数が増えて喜んでおられました。
手間ひまかけてつくるクッキーは
効率性と採算性に逆行しますが、
お客さまが喜んでくれて、
そのお客様がお友達にも知らせてくれるので
とても良い宣伝になります。
「お客さまが喜んでくれて、
お店のことを口コミしてくれる」
SNSの活用は、小さなお店にとって
有効なやり方だと思いました。
それ以来、SNSを意識して
お菓子をつくるようにしました。
さらにお客様に喜んでいただくために
店頭に「手軽なおやつ用に」と
ラスクを置きました。
手軽なおやつ用なので、以前は
ラッピングをしていませんでしたが、
SNSを意識して一つひとつを
小袋に入れ、テイスティシールを貼り、
レースコットンリボンで巻くことにしました。
これは、フリーマーケットで
出店していたある女性の
クッキーの包装を参考にしました。
すると、お客さまから「かわいいですね」と
手にとってもらう機会が増え
「プレゼント用に」と買ってくれる人が
増えました。
より地元に密着した店作りをしたい!
京田辺は日本でも有数な玉露の産地です。
シェフの大池さんは、地元にゆかりの
あるモノで商品を開発したいと思い、
京田辺の玉露でケーキはできないかと
考えました。
正月や夏の帰省でお土産に
買っていただけるような、
地元で愛される洋菓子を作ろうと
取り組みが始まりました。
「大手にはできない地元の
ブランドづくりをしていこう!
京田辺という狭い地域で
商売をしているのだから、
地域にこだわる必要がある」
そこで、お茶を生産している現場へ行き、
生産工程を見せてもらいました。
生産者から直接話を聞くことで
感じる事がありました。
現場も足を運び、自分の目で見る。
現場を知っているからこそ
素材を手にしたとき、
これまでになかった感情が生まれました。
作り手の思いや夢、現場での取り組みなど、
肌で感じたことを伝えていきたくなりました。
どういう人たちが作っているのか?
農家の方がどんな気持ちで
茶葉を育てているのか?
より知りたくなって、
関わりを深めていくと、
農家の方も近所の方が多く、
必然的に地元の方々との
関係も深くなっていきました。
地産地消で安心・安全なモノ作りを目指した
大池さんのこうした取り組みの結果、
「京田辺玉露のロールケーキ」が
完成しました。
大池さんは、僕たちにも地元の
役に立てることがあると実感しました。