小さなお店の差別化のやり方
地下鉄にある商品の広告を見ると
「○○セレクション受賞」と
大きく書いてありました。
路面店のあるケーキショップの店頭には
POPで「○○監修の○○チョコパイ」と
デカデカと大きく貼りだしていました。
また、ある焼き肉店の看板には
「こだわりの餌で一貫飼育した○○の牛肉」
など筆文字で書いてありました。
商品(モノ)の価値や品質を
全面に打ち出すことで購買の動機となり、
販売のチャンスが増えると
思われているでしょう。
モノやサービスが溢れ、
良いモノを提供したからといって
売れる時代ではありません。
インターネット通販などで、
欲しいモノを探し、
日本各地の名産品や他国の商品でも
簡単に手に入ります。
また、情報も溢れ
SNSのレビューを読めば、
実際に購入した人たちによる
質の高い情報が手に入り、
どの程度のモノなのかも
カンタンにわかるようになりました。
ではどのようにして小さなお店は
差別化すればいいのでしょうか?
「モノ」より「ヒト」を伝えるのです。
自分の考えや仕事に対する情熱、
使命感など誠実に伝えていくことで
お客様から選ばれる時代になったと
いっていいでしょう。
キーワードは共感
これからの商売は
「モノ」を売るのではなく「ヒト」です。
小さなお店は
商品の品質や機能をウリにするよりも、
店主や販売を担当する人の
仕事に対する思いや
もの作りへの情熱を伝えることの方が
繁盛店にとって大切な時代になりました。
あなたの考えや仕事に対する情熱、
使命感などをお客様にストーリーで伝え、
共感してもらうことで、多数のお店の中から
あなたが一番と選んでもらうことが
成功のカギとなっています。
ストーリーとは創作した物語ではなく
自分の体験をベースに語ることです。
焼肉店の事例
地域で評判の焼肉店「若富」の金田チーフの
取り組みが参考になるので紹介しましょう。
焼肉「若富」は島根県松江市西津田町にある
1975年創業のお店です。
老舗 若富秘伝のタレは、こだわりがあり
和牛の味わいをより引き立てる名脇役です。
焼肉へのこだわりは、
どこにも負けないお店です。
数年前のことです。
来店客数うが少しずつ減ってきました。
チラシの反響がいつもより下がってきて、
特に平日に来店いただくお客様の数が
ジリジリ減っていきました。
客数減少の原因がよくわかりませんでした。
なんとかしなければならないと、
チラシの数を増やしましたが、
状況は変わりませんでした。
つぎに折り込みチラシのエリアを変えて
配ってみましたが、これもほとんど
反響は変わりませんでした。
なぜ、お客様の来店数が減っていくのか?
価格が高いから客数が減っているのか?
地域が高齢化しているから
客数が減っているのか?
ライバル店の出店で平日の来店に
影響が出ているのか?
理由がよくわかりませんでした。
あるとき、来店いただいたお客様一人一人の
「なぜ若富に来店いただけたのですか?」
と尋ねてみました。
お客様は、
- 接客対応が気持ちいい。
- スタッフの笑顔がいい。
- 一生懸命で信頼できる。
- チーフの人柄が親しみをもてる。
- 焼肉を食べたくなったからです。
- 子供の誕生日を家族で祝いするために。
- 息子が大阪から帰ってきたので、家族で
ゆっくり食事をしようと思って来ました。 - 娘のピアノの発表会のお祝いで
「ご褒美に何が食べたい?」と聞くと
「焼肉!」というので連絡しました。 - 若い人が「イッキ!イッキ!」などと
騒ぐことなく静かな雰囲気を楽しみたい。
など、色々なお話をしてくれました。
お客様に選ばれている理由を
聞かせていただくことで、
他店との違いや自分のお店の立ち位置が
見えてきました。
私たちがこだわっている肉やタレなどは、
確かにお客様に喜んで頂けてはいたけれど、
多くのお客様が、大切な家族のお祝い事を
楽しみに来店してくれていることが、
よくわかりました。
「家族の大切な時間を過ごしたい」ときに
若富を選んでもらえばいい。
焼肉 若富でのお祝いの様子
→記念日をお祝いします。
そこでチーフの金田さんは、
家族との大切な時間を過ごす場所として
一番に選んでもらえるには
どうすればいいか考え、
あきない道場で学んだストーリーチラシを
活用できるのではないかと思いつきました。
私の体験をストーリーにして
伝えていけば、
共感していただけるお客様が
来店してくれるかもしれない
と早速取り組みを始めました。
共感マーケティングとは、人の感性に訴える
というかたちのマーケティング手法です。
金田さんは幼少の頃の家族の思い出を
話してくれました。
私は、金田さんの思いを聞いて共感しました。
私にも同じような体験があったからです。
お客様に思いを伝えることで、
お客様に選ばれる店になる!
そう確信を得ました。
お客様の感性に訴えるFUVSの法則
FUVSの法則とは、あなたのお店や商品、
サービスを必要としてくれている
お客様に共感していただき、
選んでもらいやすくなる
共感マーケティングの手法です。
以上の4つのキーワードに当てはまる
メッセージを伝えていくことで、
あなたのお店や商品、サービスを必要と
してくれているお客様に共感していただき、
選ばれやすくするのです。
人は相手と共通項があれば
安心感を持つのです。
そこで「焼肉 若富」チーフの金田さんは、
FUVSの法則を活用して、
ストーリー性のあるチラシを考え
制作しました。
毎月1度、定期的に地域のご家族に
チラシを届けました。
しばらくすると想定以上の反響があり、
反響は1ヵ月後の来店客数に表れました。
その後もチラシを見たというお客様が
次々と増えていきました。
一度きりで完結させず、
連続性のあるチラシが認知されて、
より共感を高めていきました。
このようにFUVSの法則で
連続性をもたせたチラシを私は
「ストーリーチラシ」と命名しました。
商品の機能や性能、
あるいはマーケティングや
プロモーションではなく、思いや情熱、
もしくは自分が日々どう生きているかが
重要になるということは、見方を変えれば
非常に良い時代ではないかと思っています。
なぜなら、まず企業規模の大小は
あまり関係ありません。
商品の機能や性能が業界横並びでも
いくらでもやりようがでてきます。
価格競争に走って
利益を削ることもありません。
さあ、あなたも実体験に基づいた
ストーリーチラシを、まずは自己紹介から
つくってみましょう。