理想のお客様を決めてアンケート取材をしよう
大阪・東岸和田に
創業10年目になる「彩鳥屋てっちゃん」
という焼き鳥屋さんがあります。
このお店は最寄駅から徒歩15分程の
不便な立地にあり
「ちょっと仕事の帰りに寄ってみようか?」
とサラリーマンがやってくるような
場所ではありません。
また、駅から店までの最短ルートは
寂しい線路沿いを歩く必要があり、
街灯が少なくて、薄暗い道になっています。
創業3年目の頃、数軒先に大手の
焼き鳥チェーン店が開業しました。
オーナーの早崎さんは
「客足に影響が出るかもしれない」と
危機感を持ちました。
そこでタウン誌にワンドリンクサービスの
クーポンを入れた広告を掲載しました。
翌日から来客数は増えました。
しかしタウン誌を見てやってきたお客様は
クーポンの利用が目的なので大半は
リピートしないことに気が付きました。
地域で1番になるための戦略を考える
早崎さんは、当社が主催している
あきない実践道場で競争条件の不利なお店が
競争条件の有利なお店に
勝つための方法を学び取り組みました。
・理想とするお客様を決める
・差別化できる商品・サービスを打ち出す
・営業地域を絞り、接触回数を増やす
早崎さんは今、来店をいただいてる
お客様の中から理想とするお客様を決めて、
アンケート取材を始めました。
そうすることで
ご自身のお店と他店との違いを
打ち出しやすくなる
と考えました。
理想とするお客様は
「こんな人たちがお店に何度でも
来てくれると嬉しいなぁ」と感じる
人を対象としました。
「ご家族で楽しく過ごしてくれるお客様」
「友達を誘って
何度も来店してくれるお客様」
「私と気が合うお客様」
以上のような条件にあうお客様が来店すると
アンケート取材をお願いしました。
・お店に来てくださったきっかけは
どういったことからですか?
・他に沢山のお店があるのにどうして
うちを選んでくれたのですか?
・1番、気に入ってるメニューはなんですか?
それはどんなところが良いですか?
・お住まいはどの辺りですか?
どのような人が来店してくれているのか。
これまで全く聞いたことがありませんでした。
自分では口コミで伝わっていたのだろうと
思っていたのですが、
理想のお客様に聞いてみると、
実はそうではなかったのです。
意外だったのは、
店の前の道路は交通量が多く、
踏切の信号待ちで渋滞となり車が止まります。
早崎さんはこの渋滞は「店の弱み」
だと考えていました。
ところが、お客様は
「渋滞する車の中から店舗を見かけて
気になってたので、来てみました」と
言う人が多く、立地条件が悪く
「弱み」だと思っていたことが、
どうやら「強み」となっている
かもしれないと知りました。
また、あるお客様から
「ここの鶏肉は歯ごたえが絶妙ですね」
と言われ「歯ごたえですか?」と聞くと
「てっちゃん(早崎さん)は
いつも話してくれるじゃないですか。
『当店のこだわりは鶏肉の肉質で、
地鶏ほど硬くもなく、
ひな鳥ほど柔らかくもなく
ちょうど良い硬さで、
鶏のえさにこだわり
500日かけてゆっくり育っててるから、
ストレスが少ないせいです』と」
早崎さんは気がつきました。
・うちの鶏肉はちょうどいい
弾力のある肉であること。
・特別な育て方をした鶏であること。
「私の料理に対するこだわり」を
お客様の声から改めて知ることができました。
「これは他店と差別化できる!」と
『500日熟成鳥専門店』という
キャッチフレーズを記した
のぼりを作成したところ、
早速お客様から、
「そんなに長い間熟成しているのですか。
だからこんなに歯ごたえがあるのですね!」
と思っていた以上に反応がありました。
他店にない特徴を分かりやすく
伝えることができるようになりました。
また、アンケートを通じて
明らかになったことがありました。
それまで市内全域からお客様が来ていると
漠然と捉えていたことが、聞いてみると、
実際は店の近隣3つの町内から大半の
お客様が来てくれてることが分かりました。
早崎さんは「8割近いお客様がこれほど狭い
3つの町内から来店してくれていたのか!」と
アンケート取材の結果に非常に驚きました。
こうして営業エリアが確定しました。
新規顧客が増える仕組みをつくる
次に集客の方法を考えました。
新しいお客様の来店数を増やす方法を
練り直しました。
前回のタウン誌のことで得た教訓から
クーポンやドリンクサービスを
ウリとするのではなく、
商品のこだわりや店や自分自身のことを
知ってもらうことで来店のきっかけに
なればよいと考えました。
3つの町内を調べてみると
1000世帯程度だったので、
新聞の折り込みチラシで
テストすることにしました。
この3つの町内に1000枚を
2回分けて配ることにしました。
最初のチラシでは店の宣伝は一切記載せずに
早崎さん自身の自己紹介を明記しました。
早崎さんは、その地域の出身だったので
自分の出身校や生い立ち話など記し、
自分のブログを紹介することに
とどめました。
そして2回目は鶏肉や野菜、ダシなど、
食材のこだわりを綴りました。
「チラシの内容で注意したのは、
売り込みや値引きをしないということ
こだわりを伝えることに徹しました」
と早崎さんは話してくれました。
その結果、「チラシ見たよ」と
何組もの方が来店してくれて、
大半の人がリピーターにもなっています。
チラシの反響はその後しばらく続きました。
以前、タウン誌に掲載した販促費用の
10分の1に減らしたのにもかかわらず、
来客数・単価・リピート率が向上し、
十分な手応えがありました。
値引きでお客様を集めるのでは、
他店と差別化にならないことが
よくわかりました。
早崎さんは
「ボクの生い立ちや商売に対する考えや、
商品のこだわりに共感してくれてる人が
お店に来てくれています。
自分たちにあったお客様から選ばれることで
お店はより良くなっていくのですね」と
笑顔で体験を伝えてくれました。
あなたの理想のお客様は誰ですか?
お客様を決めて、
アンケート取材をしてみてください。
そこに現状を打破する
ヒントが潜んでいますよ。